音響インテンシティ

 音響インテンシティとは、音の進行する方向性を考慮に入れた、音の大きさのことを指します。

 一般的な騒音測定では、ある場所での騒音レベルを測定します。騒音レベルは、人間が耳で聞いた音の大きさに対する感覚と、非常に近い値が得られることが知られています。しかし、この騒音レベルは、方向の概念のないスカラ量です。つまり、音の大きさに関する情報は含まれていても、音がどこから到来しているかという情報は含まれていません。

 これに対して、音響インテンシティはベクトル量です。騒音レベルが持っている音の大きさ、周波数、波形という情報だけでなく、音の方向性に関する情報も含んでいます。つまり、音がどの方向からマイクロホンに到達したのかということを測定することが可能です。この量を測定することにより、音のエネルギーとその流れの方向を、空間中で可視的にとらえることができます。

 通常の騒音レベルの測定には、無指向性タイプのマイクロホンを用いますが、音響インテンシティの測定には、二つのマイクロホンを非常に近い間隔で組み合わせた、インテンシティマイクロホンと呼ばれる特殊なマイクロホンを使用します。このインテンシティマイクロホンと、2チャンネルタイプのFFTアナライザ、または1/Nオクターブ分析器を用いることで、音響インテンシティを求めることができます。

 音響インテンシティは、残念ながらまだまだ一般に普及しているとは言えません。これは、音響インテンシティの概念や理論が難解なことや、騒音レベルの測定などに比べると、測定が複雑であることが原因です。しかし、音響インテンシティの測定結果を利用することにより、以下のようなことを行うことが可能であり、さらに多方面への応用が研究されています。

音源探査 機械などの騒音源のどの部分から騒音が発生しているか、またどの部分から音がもれているか、などを突きとめることができます。
音の放射特性の解明 音源から発生した音が、空間中をどのように広がっていくか(放射されていくか)を知ることができます。
音場解析 音場の視覚化です。空間中の音のエネルギーや流れを、視覚的に把握することができます。
音響パワーレベルの測定 従来の音圧レベルから音響パワーレベルを求める方法では、無響室や残響室などの特別な施設が必要であったのに対して、音響インテンシティを利用することにより、部屋の制限なしに求めることができます。
材料の音響特性の測定 材料の遮音特性や吸音特性の測定に応用が可能です。特に、まだ規格化が行われていない斜入射吸音率の測定に対する応用が試みられています。

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