音響パワーレベル

 音響パワーレベルは、機械などの(騒)音源が放射する音の全パワーを、レベル表示したものです。音源の評価や騒音対策の効果を示す値として重要になりつつあります。

 日本では従来から、機械などの音や騒音対策の効果を評価する際には、騒音レベル(音圧レベル)を用いてきました。騒音レベルは、音源から放射された音の、空間内のある一点における音圧を表す量なので、音源だけでなく測定環境や観測位置などによって値が変化します。

 これに対して音響パワーレベルは、その音源に固有の量で、原理的には音源だけで規定されています。測定環境には無関係なものですので、音源の運転条件などが変わらないかぎり、どこにおいてもこの値は変わりません。そのため、騒音低減対策の評価、機械の騒音仕様・騒音表示(騒音ラベリング)、騒音予測などの資料としての利用が有効です。

 欧米諸国では、以前から音響パワーレベルの概念が定着していて、測定方法も整備され規格化されています。日本国内でもJISによる規格ができ、音響パワーレベルは少しずつ普及し始めていますが、残念ながらまだまだ実用的に用いることは多くありません。機械や設備を欧米諸国に輸出するときなどには、音響パワーレベルの測定・表示が義務付けられるようになってきています。

 音響パワーレベルの測定方法は、測定に用いる音響実験室の種類(音場の区別)と、音響パワーレベルを算出するために測定するデータの種類によって分類されます。

 音場による分類は大別すると、(A)無響室で測定する方法、(B)半無響室で測定する方法、(C)残響室で測定する方法、(D)現場で測定する方法、の4つに分かれます。

 測定するデータによる分類は、@音圧レベルから算出する方法、A音響インテンシティから算出する方法、の2つに分かれます。
 今のところ、@の方法(音源の周囲数点で測定した音圧レベルの値から算出する方法)が主流ですが、最近ではAの方法が注目を集めています。というのも、@の方法で正確な値を測定するためには、上述の(A)〜(C)の音響実験室が必ず必要となるのに対し、Aの方法では、部屋の制限がなく簡単に求めることができるからです。

 日本においては、以下のJISによって測定方法が規格化されています。

JIS Z 8732:2000 音圧法による騒音源の音響パワーレベルの測定方法
無響室及び半無響室における精密方法
JIS Z 8733:2000 音圧法による騒音源の音響パワーレベルの測定方法
反射面上の準自由音場における実用測定方法
JIS Z 8734:2000 音圧法による騒音源の音響パワーレベルの測定方法
残響室における精密測定方法
JIS Z 8736-1:1999 音響インテンシティによる騒音源の音響パワーレベルの測定方法
第1部:離散点による測定
JIS Z 8736-2:1999 音響インテンシティによる騒音源の音響パワーレベルの測定方法
第2部:スキャニングによる測定

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