吸音、吸音率、吸音材料

 音は物にあたると吸収されます。このことを吸音といいます。そして、この吸音の大きさを数値で表したものが吸音率です。部屋などの空間の音を調節するために用いられる吸音率の大きい材料のことを、一般に吸音材料といいます。

 音は空気の振動によって生じます。吸音とは、材料内部で空気が振動することにより、音のエネルギーが熱エネルギーに変換されて消滅することを意味します。

 

 上の図のように、材料に音が入射すると、その一部は反射され、一部は透過し、一部は吸音されます。材料の吸音性能をあらわす吸音率は、入射した音のエネルギーに対する反射されてこない音のエネルギーの比率のことをいいます。吸音率は一般にαで示され、0〜1までの値をとります。

α:

吸音率
Ii: 入射音のエネルギー
Ir: 反射音のエネルギー
Ia: 吸収音のエネルギー
It: 透過音のエネルギー

※ただし、Ii = Ir + Ia + It

 たとえば、コンクリートの固い壁に音が入射した場合を考えます。この場合、音はまったく吸収も透過もなく(Ia=0、It=0)、すべて反射して戻ってくる(Ii=Ir)と考えられます。この時、吸音率α=0となり、吸音性能はもっとも悪くなります。
 また、開放された窓に音が入射した場合を考えます。この場合、音はまったく反射せず(Ir=0)、すべて透過することになる(It=Ii)と考えられます。この時、吸音率α=1となり、吸音性能はもっとも高くなります。

 この吸音率は、入射音の入射角、ならびに入射音の周波数によって値が変化します。入射角の違いによる吸音率とその測定方法は以下のようになります。

 材料への音波の入射角度の違いによる測定方法の種類
 
吸音率の名前 説明(入射角度) 測定方法 規格(JIS)
垂直入射吸音率 材料に対して、音が垂直に入射するときの吸音率 音響管を用いて測定 JIS A 1405
ランダム入射吸音率 材料に対して、音がすべての方向(ランダムな方向)から入射するときの吸音率 残響室を用いて測定
 (残響室法吸音率
JIS A 1409
斜入射吸音率 材料に対して、音がある角度θで入射するときの吸音率 様々な測定方法が存在 規格化されていない

 「残響室」 ⇒ 用語集を参照


 垂直入射吸音率と残響室法吸音率
 一般的に吸音率という場合、残響室法で測定した残響室法吸音率のことを指します。材料への音の入射条件を限定していないので、実環境での使用条件に適合させやすいためです。このことから、実用的な音響設計等の測定資料としては、残響室法吸音率を用いるのが一般的です。

 これに対して垂直入射吸音率は、音の入射条件を、実環境では特殊な条件である垂直入射に限定しています。このため、音響設計の資料としてそのまま用いるには無理があります。しかし、残響室法吸音率と違い、測定試料が小さくてすみ、測定も容易であるため、吸音材料の比較測定や、基礎的な材料特性の把握など、研究・開発段階でよく利用されています。

  入射条件 測定 試料 用途
垂直入射吸音率 限定 (垂直) 容易 小さいサイズで可能 材料開発の資料
残響室法吸音率 ランダム 難しい 大きいサイズが必要 建築設計の資料

 吸音材料には様々な種類があります。もっとも一般的に用いられているのは、内部に空気を多く含む多孔質材料(グラスウール、ロックウールなど)です。その他にも、音楽室やカラオケボックスの壁に用いられている穴あき石膏ボードなどがあります。最近では、廃材やゴミ資源などのリサイクル資源を利用した吸音材料が多く見られるようになってきています。

 吸音材料はその施工の方法によって、吸音性能が大きく変化します。吸音材料の厚みを増したり、複数の吸音材料を重ね合わせたり、背後に空気層を設けたりすることにより、吸音率の値は変わります。また、材料表面の材質によっても吸音率が異なるので、表面加工を施す場合には注意が必要です。

 建築物などにおいて吸音を目的として使用する材料を規定するために、JIS A 6301があります。

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