平成12年度大阪府立産業技術総合研究所報告(No.14)を発行いたしました。

研究所では業務の一つとして、企業の皆様方から依頼を受けて分析や試験を行い、生産現場の種々の問題解決の手助けを行っています。本号では、これらの技術に焦点を当て、研究員が日ごろ行っている技術問題解決のための「測定と分析」を特集として取り上げています。実例も交えながら技術報告として13編掲載しています。

続いて、所員による研究成果をまとめた技術論文として6編を掲載しています。技術論文は、基礎的研究成果というものより、応用性が高く、また研究所として特色ある技術課題、企業の方にとって役立つであろうと考えられる研究成果を基本にして選定しました。

以上技術報告、技術論文はこのホームページに一覧、概要を掲載しています。

さらに研究所報告には、所員がそれぞれの研究成果を所外において発表した他誌掲載論文等概要36件および口頭発表概要196件を掲載しています。
 
 

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技術報告】(特集 測定と分析

1. 高エネルギーイオンビームによる薄膜材料の分析          岡本昭夫・筧 芳治・吉竹正明

2. プラスチックの破損とフラクトグラフィー             水谷 潔・吉川忠作・奥村俊彦

3. 絶縁材料の電気特性に及ぼす電極の影響              村上義夫

4. 研究所の電磁波測定設備とその利用例               田中健一郎・松本元一

5. ステンレス鋼製熱交換器における孔食の原因解析          塚原秀和・佐藤幸弘

6. アルミニウムドロス中の金属アルミニウムの簡易分析        石島 悌

7. 皮革表面に発生した白い物質の分析                佐藤恭司

8. 繊維・高分子材料の静電気測定法とその実際            木村裕和

9. 消費動向に対応したタオル製品の品質測定技術           宮崎克彦

  −脱綿現象を中心として−                     

10. 工業製品における付着混入異物の分析法と事例           三嶋洋介

11. 土中埋設羊毛繊維の高圧示差走査熱量計分析            菅井実夫

12. 各種繊維製品の特殊環境下における機能及び品質性能評価      石倉信作・山本貴則

13. 定電位電解質方式のNO,NO2センサを利用した光触媒のNOx      森 正博

  除去性能の評価

 

【技術論文】

1. 水中用IC一体化超音波センサの作製と3次元画像化         田中恒久・井上幸二・鈴木義彦

                                  溝脇 功・駒井正嗣・土居元紀

                                  千原國宏

2. ゾル−ゲル用有機顔料の熱分析                  櫻井芳昭・木本正樹・夏川一輝

                                  中澄博行

3. ネットワークシステムとデータベースの設計            竹田裕紀・君田隆男・中辻秀和

  第5報:ニット加工業にけるパソコンネットワークシステムの開発

4. 混合促進型低NOxオイルバーナの開発                磯田 徹・入江年優・東 忠宏

                                   表原靖男

5. 炭酸ガスレーザによるチタンの溶接                萩野秀樹・野口修一・増井清徳

6. 細径線材のX線応力測定における測定精度向上法          小栗泰造・村田一夫

 

 

概  要

【技術報告】(特集 測定と分析)

 

高エネルギーイオンビームによる薄膜材料の分析

岡本昭夫 筧 芳治 吉竹正明
 高エネルギーマイクロビーム複合分析装置(叶_戸製鋼所製)は,高エネルギーのヘリウムまたは水素のイオンビームを試料に照射して種々の分析を行う装置で,RBS(ラザフォード後方散乱分光:元素・組成分析,深さ方向分析),PIXE(粒子線励起X線放出:高感度元素分析)等の分析機能を持っている.試料としては,導体・絶縁体を問わず,固体表面から1mm程度の深さまでの非破壊(スパッタリングを行わない)分析が可能であり,具体的には,元素分析や組成分析,微量元素の検出等ができ,特に,薄膜材料においては,その膜厚もしくは密度の決定,界面における相互拡散等の分析が行えることが特長である.本報告では,まず,RBS法とPIXE法の特長を述べた後,積層薄膜,化合物薄膜のRBS分析,基板材料や膜中及び表面不純物のPIXE分析の例を挙げ,これらの手法が基板上の薄膜や固体表面の分析に対して,充分応用できることを示す.
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プラスチックの破損とフラクトグラフィー

水谷 潔 吉川忠作 奥村俊彦
 フラクトグラフィーは金属製品の破損解析時には,最も有力で不可欠の手法となっているが,プラスチックに対してはいまだ十分に活用される状況とはなっていない.これは,プラスチックには高分子材料特有の破壊挙動が存在するからであり,このことが金属材料の検査手法や破損解析手法をそのままでは適用できなくしている.そこで本報告では,プラスチック材料の破壊メカニズムに関する最新の研究成果を整理し,当研究所における研究成果などを交えながら,プラスチック材料特有の破損現象を考慮した破断面解析法,すなわち「プラスチックのフラクトグラフィー」について解説する.特に,プラスチック製品のぜい性破壊などのトラブル発生現場周辺ですぐに役立つ「フラクトグラフィー」とするため,クラック伝播の特性,クレイズやせん断降伏の発生・成長の特徴,プラスチックに適したフラクトグラフィーの具体的な手法,疲労や環境応力割れの破断面の特徴などについてまとめる.
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絶縁材料の電気特性に及ぼす電極の影響

  村上義夫
 絶縁材料の電気特性については体積抵抗率,絶縁破壊強さと比誘電率及び損失率などが広く測定されている.特に,体積抵抗率と比誘電率及び損失率の測定には同心円電極を用いることが多く,その電極の大きさも測定試料の大きさによって選ばれるために統一がとれていないのが現状である.主電極(同心円電極の内側電極)と保護電極(外側電極)の組み合わせの違いによる比誘電率の差を測定し,同心円電極を用いた主電極の直径が38mmと50mmの場合には,電極の大きさに係わらず,数値の一致を見ることができ,主電極から保護電極側への電界の拡がり(縁効果)の補正式の有効性を確認した.この結果を基に体積抵抗率測定時に補正の有無によって主電極直径50mmを用い,試料厚みが3mm以上の範囲で抵抗率の測定結果に対する影響を調べると10%以上の差となることが確認できた.
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研究所の電磁波測定設備とその利用例

田中健一郎 松本元一
 当研究所では府下企業のEMC技術支援を目的とした各種EMC試験設備を設置している.本報告では,その中で電磁波測定に使用されている幾つかの設備について,設備の概要,電磁波測定の原理,測定方法,測定例を解説した.まず,電波半無響室に関して,標準の測定サイトであるオープンサイトによる放射EMI測定の原理,電波半無響室のサイトアッテネーション特性,自動測定の概要と測定例のほか,測定に使用される広帯域アンテナの評価について解説した.また,電波全無響室に関しては,放射イミュニティ試験で重要な電界均一性について,測定への応用例としてアンテナの指向性の簡易測定およびシールド効果測定について解説する.
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ステンレス鋼製熱交換器における孔食の原因解析

塚原秀和 佐藤幸弘
 近年におけるエネルギーの有効利用,省エネルギー化という観点から,排ガスを利用した熱交換器も多く使用されている.熱交換器は,内部に水の流れるステンレス鋼製熱交換エレメントの外部に高温の排気ガスを流すことにより温水を得るものである.この熱交換エレメントに錆が発生し,孔食が生じた.同様の腐食を防ぐためには,原因解析が不可欠である.そこで,各種分析機器を用いた評価により,孔食の発生要因を明らかにした.
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アルミニウムドロス中の金属アルミニウムの簡易分析

石島 悌
 アルミニウム溶解時に発生するアルミニウムドロス(アルミ残灰)に含まれる金属アルミニウム量を測定する方法を研究した.従来から行われている臭素・メタノール分解法は,熟練したオペレータによる長時間の作業を必要とするので,より短い時間で誰でも簡単に測定が行える方法の開発が望まれている.本研究では,電気的な方法を用いることにより,精度はそれほど高くないものの,誰でも短時間で簡単に測定できる方法を検討した.
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皮革表面に発生した白い物質の分析

佐藤恭司
 靴,衣料革や鞄などに白い粉末状やカビの菌糸状のものが出現することがある.これらは皮革製品のクレームの原因となっており,原因の追究を依頼される.この白色物質は塩や脂肪が成分であり,脱脂綿を利用して微量な白色物質を採取し,有機物であればガスクロマトグラフィやGC-MSによって分析する.製造工程で使用した薬品や動物の体脂などを同様の方法で分析した結果と比較し,原因を明らかにした事例を報告する.
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繊維・高分子材料の静電気測定法とその問題点

木村裕和
 静電気が様々なトラブルを引き起こすことはよく知られている.特に,繊維や高分子材料は一般に比抵抗が高く,静電気的性質が問題になるケースが多い.そこで,これまでに繊維・高分子材料を対象に多数の静電気測定法や帯電性評価方法が考案・開発されてきた.本稿では,繊維製品や高分子材料の帯電性とその評価方法ならびに人体帯電圧測定法について概説するとともに具体的な測定事例を示しながら測定に際しての留意点,問題点について言及する.
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消費動向に対応したタオル製品の品質測定技術
−脱綿現象を中心として−

宮崎克彦
 生活様式の多様化にともない,タオル製品に求められる評価技術も変化してきている.従来は,強度を中心とした耐久性評価が主であったが,素材の多様化にともない,高吸水性,速乾性などの付加価値部分,あるいは脱綿(毛羽落ち)などの品質安定化に対する評価が重要視されてきている.本報では,近年,消費者クレ−ム事例となることが多い,タオル製品の脱綿現象について,その要因について解説を行うとともに,家庭用電気洗濯機を使用した脱綿試験方法についての考察を述べる.
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工業製品における付着混入異物の分析法と事例

三嶋洋介
 製造工程中の付着混入異物はその後の加工工程の物理的,化学的作用により製品を全く駄目にするケースが多い.そのため,付着混入異物の分析を行程中の何が原因で付着混入したかを行程中の操作の調査とあわせて正確,迅速な分析が求められる.特に,繊維製品は原料から製品になるまでに他の工業品に比べて非常に多くの工程を経るために事故の発生が多く複雑である.この経験を生かし付着混入異物が原因で発生するクレーム解析のための分析方法と事例を紹介する.
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土中埋設羊毛繊維の高圧示差走査熱量計分析

菅井実夫
 仕上加工などにおける,繊維の劣化あるいは損傷程度を評価するため,高圧示差熱量計による熱分析を行なった.すなわち代表的な天然繊維である羊毛繊維について,羊毛繊維の結晶性変化を羊毛繊維のαヘリックス構造に由来する融解熱エネルギーから検討した.その結果,強い損傷を受けていると見なされる部位ほど,結晶融解熱が小さい値となることがわかった.そこで熱挙動やその他の分析結果から,繊維の劣化・損傷程度により,繊維の内部構造にどのような変化が生じているか解説する.
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各種繊維製品の特殊環境下における機能及び品質性能評価

石倉信作 山本貴則
 環境条件に応じて機能性を付与した繊維製品が数多く開発されている.例えば,保温性に優れた防寒衣料,速乾性に優れた毛布,導電性機能を応用した融雪マット,その他暑熱環境下での防熱性を有する繊維製品などがある.温度,湿度,日射,雪,雨,風,気圧等の地球上のあらゆる気象条件を作り出せる特殊環境施設が幾つか導入されており,これらの施設を有効に活用し,特殊環境下で実験した色々な繊維製品の試験・評価事例を,施設概要を交え紹介する.
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定電位電解方式のNO,NO2センサーを利用した光触媒のNOx除去性能の評価
森 正博
 幹線道路沿いにおけるような開放空間におけるNOxの浄化に,光触媒の利用が注目されていて,最近,光触媒材料の大気浄化性能試験方法が資源環境総合研究所から提出されるなど,評価技術へのニーズが大きい.そこでは,NOxの測定に化学発光方式の計測器が採用されている.一方,価格が化学発光方式の数分の一の定電位電解方式のNO,NO2センサーは,測定範囲がそれぞれ,0〜10ppmおよび0〜20ppm,感度が0.1ppm程度で,試験室における光触媒試料のNOx除去性能の評価の目的に適合している.測定の実際,測定のいくつかの事例,今後の具備するべき条件について報告する.
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【技術論文】

 

水中用IC一体化超音波センサの作製と3次元画像化

田中恒久
 バルク型PZT超音波振動子と音響整合層により構成された小型超音波センサと,アナログ信号増幅回路を一体化したIC一体化超音波センサを作製した.このセンサの受信特性は,ICを内蔵しない内製センサと比較してSN比が約40dB程度,市販センサと比較してIC比が20dB以上良く,高感度,高出力特性が得られることがわかり,微小な超音波の受信が可能であることがわかった.また,応用例としてこのIC一体化超音波センサを用いて,リングアレイ超音波センサを作製し,従来センサでは感度が低く観測が難しかった水中を動く球の開口合成法による3次元画像を表示した.
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ゾル−ゲル用有機顔料の熱分析

櫻井芳昭・木本正樹・夏川一輝・中澄博行


 着色ガラスビンのリサイクルを目的にガラスビンを有効に利用するシステムを構築を目指した研究が進んでいる.そのシステムのの中で利用するガラスビンの着色に用いるゾル-ゲル着色用有機顔料の熱分解生成物を分析するために,代表的な顔料として,ジケトピロロール(C.I.PigmentRed254),銅フタロシアニン(C.I.PigmentBlue15:3),それらを含む分散液の熱分解挙動について調べた.これら顔料の熱重量分析,X線回折分析の結果から,銅フタロシアニンに含まれる銅は1000℃加熱でも酸化銅(T)などの金属酸化物として残留し,ゾル-ゲル分散液の熱分解でも二酸化ケイ素の中に金属酸化物として微量残留することが明らかとなった。また,550℃のこれら有機顔料の熱分解では,大部分,二酸化炭素,水に燃焼分解することが,分解ガスの赤外分光分析から明らかとなった.しかしながら,塩素原子を含む赤色顔料の熱分解から多置換塩素芳香族化合物が微量ながら認められた.これらのことを考慮に入れると,着色ガラスビンの燃焼は,リサイクルを考えた場合,ガラス溶融温度(1300℃)以上の高温炉あるいは瞬時加熱が可能な炉で行い,環境に影響を及ぼす顔料の発生を抑えることが非常に重要である。

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ネットワークシステムとデータベースの設計
第5報:ニット加工業にけるパソコンネットワークシステムの開発

竹田裕紀 君田隆男 中辻秀和
 本報では,パソコンサーバを中心とし,端末10台も一緒に事務所に設置したニット加工業のパソコンネットワーク型生産管理システムの開発事例について報告する.モデルとしたニット加工業では,原料の糸と製品の生地がそれぞれ異なった単位(Kg,反,m,玉,梱)を持っていること,製造だけでなく得意先への企画提案を行っていること,原料と製品の在庫管理など複雑な管理を行っている.また,営業面では得意先と営業担当者との関係が強いのも特徴である. 本研究ではこのような特徴を持ったニット加工業において,生産管理のためのデータベースの設計方法および機器構成やシステム構造について報告する.また,システムのトラブル発生時に事務員によって容易にメンテナンスできる方法についても報告する.本システムは,サーバにはデータベースソフトSQLSERVER,端末機ではACCESS(マイクロソフト社製)を用いて開発した.
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混合促進型低NOxオイルバーナの開発

磯田 徹・入江年優・東 忠宏・表原靖男


 地球環境保全に対する問題意識が高まる中で,より高性能な液体燃料用低NOxバーナの開発が望まれている.本研究では,分割噴霧式の二流体噴射ノズルを採用し,高速噴霧流を燃焼筒の前端部に衝突させて微粒化を促進すると同時に渦流を形成させ,燃料噴霧と燃焼用空気との混合を促進し,ガス燃焼と同様の青色火炎を形成する構造のバーナを試作した.本バーナを換算蒸発量350kg/hの市販の貫流ボイラに取り付け,燃焼試験を行った結果,NOx排出値は,灯油焚きで35〜40ppm,A重油焚きで45〜50ppm(いずれも酸素 0%換算値)となり,従来型バーナに比べて40〜50%程度NOx排出を低減できることが明らかとなった.

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炭酸ガスレーザによるチタンの溶接

萩野秀樹 野口修一 増井清徳
 本研究では,炭酸ガスレーザを用い,比較的簡易なシールド方法でチタンの溶接を行い,最適な溶接条件を調べた.また,溶接の品質に影響を及ぼす溶接中の温度変化や温度分布を解析し,TIG溶接の場合と比較検討を行った結果,レーザ溶接では溶接部と熱影響部が急熱急冷状態となっていることがわかった.そのために溶接部および熱影響部への大気の混入が少なくなり,簡易なシールドでも良好な溶接を行うことができたと思われる.
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細径線材のX線応力測定における測定精度向上法

小栗泰造 村田一夫
 X線応力測定法は,非破壊的に残留応力を測定する手法として一般的に用いられているが,この方法では,原理上,測定面は平坦であることが望まれている.近年,X線束をφ0.1mm程度まで小さくすることにより微小領域の応力測定を可能とした装置が市販されており,細い線材や微小部品の角部など,曲率半径の小さい湾曲部の応力測定に適用されている.しかし,結晶粒の大きさや回折強度などの問題から,測定面が平坦とみなせる程度にX線照射領域を小さくできないことがあり,この場合には,試料の湾曲に基づく測定誤差が生じる.そこで,本研究では,円柱形状である線材を取り上げ,円周方向および軸方向の残留応力測定値に対するX線照射領域の大きさの影響を,実験的,解析的に検討し,湾曲形状起因の測定誤差を推定する実用式を提案した.
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