TRI OSAKA 機械金属部

めっき皮膜の高温酸化

大阪府立産業技術総合研究所 表面化学グループ 森河 務、横井昌幸
竃村鍍金 石田幸平(ORT研修生)


1. はじめに

 めっき皮膜を高温で使用する場合には、皮膜の結晶粗大化や構造変化が起こり、微械的な性質が変化します。また、めっき表面は大気によって酸化を受け、酸化膜が形成することによって表面の摩擦摩耗特性なども変化していきます。
 ここでは、連続鋳造用金型に適用されている各種のめっき皮膜を取り上げ、加熱処理にり形成された酸化皮膜の形成について紹介します。

2. 実験

 試料としては、Cr,Ni,Ni-Fe合金(6wt%)、Co−Ni合金(5wt%)めっき皮膜を用いました。めっき皮膜の厚さはCrめっきで約150μm、他のものは約1mmであり、試料を研摩し鏡面仕上げとしています。大気中で加熱処理は、マッフル炉を用いて各加熱処理温度(200〜700℃)で標準処理時聞1時間としました。表面観察ならびに断面観察には、EDX付属の走査型電子顕微鏡を、酸化膜の構造ならびに厚さ測定にはグロー放電スペクトロメータ(GDS)を用いました。めっき皮膜の硬さ測定には、マイクロビッカース硬度計ならびに高温マイクロビッカース硬度計を、耐摩耗性試験には往復摺動型の摩耗試験機(相手材SUJ)を用いました。

3. 結果と考察

 700℃で加熱処理された後のめっき皮膜の表面写真を図1に示します。各めっき皮膜の外観は有色化しており、その表面は酸化物形成によって凹凸化しています。Crめっきは、平坦面に微細な突起を有した形態であり、Ni-Fe合金めっきは粗な粒子状のものが形成されていました。
 めっき皮膜の断面写真を図2に示します。表面に形成された酸化物層の厚さは、Co-Ni>>Ni-Fe,Ni>Crの順であり、合金めっきの酸化物は層状における元素の分布状況が観察されました。GDSによる酸化物のあるめっき皮膜の分析結果を図3に示します。Crめっきは、Niめっき皮膜に比べて酸素強度の減少のプラトー領域がないため、形成された酸化物は均一層ではなく、凹凸的な酸化物層になっていることが考えられます。Ni-Fe合金めっきでは、表面側に鉄がリッチな酸化物層があり、内面に向かってニッケル量が順次増加していく、3層構造と推定されます。また、酸素強度変化のプラトーは明確でないので、形成された酸化物層は不均一であると考えられます。一方、Co-Ni合金めっきにおいては、表面の酸化物層はコバルト酸化物であり、バルク側にCo-Ni混合酸化物の層が形成されており、酸素強度のプラトー領域が明確なことから形成された酸化物層は層状構造を保っていると推定されます。
 各めっき皮膜の酸化物の厚さと温度の関係は、図4のようになり、加熱処理温度が600℃以上では各酸化物層の厚さは急激に増加しました。400℃の酸化物形成の経時変化は、図5に示すように、対数則的な生長を示しています。
 めっき皮膜の断面硬さは、Co-Ni合金を除き400℃以上の加熱処理によって低下しました。加熱処理後における表面硬さの加重依存性を調べると、Co-Ni合金めっきのみ100gf以下の軽荷重において硬さが増加しており、表面に形成されている酸化物が表面硬さに影響しているとが認められました。摩耗試験による摩耗量は、Ni−Fe>Ni>Co−Ni>Crの順にしましたが、加熱処理温度が600℃と高い試料では、摩耗痕が認められず相手材の凝着粒子が認められるようになりました。
 以上のことより、高温でめっき皮膜を使用する場合には、皮膜の酸化層の性質とその形成状況を踏まえて耐熱性めっき皮膜開発を進める必要があります。


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last updated 7 May. 1998

Tsutomu Morikawa

Technology Research Institute of Osaka Prefecture