要約
水溶液から単独では電析しないタングステン,モリブデン,リン,イオウ,ホウ素などは,鉄族金属の電析に誘起されて皮膜中に共析する。このような皮膜作製法は誘起共析型合金めっきと呼ばれ,得られる皮膜は耐摩耗性,耐食性,電極触媒活性などに優れた機能めっきとして利用されている。この合金めっきについては,主に結晶学的見地から詳細な検討が行われ,誘起共析される成分含有量が増加すると非晶質構造となり,加熱によって硬化すること,熱力学的に安定な化合物に相当する組成のめっきが得られやすいことなどが明らかにされている。しかし,得られる合金系の種類,作製条件,皮膜構造,皮膜物性などについてはあまり明らかにされておらず,また連続操業が容易でないなどの実用上の課題も多く残されている。
著者らは1984年に初めて高硬度のCr-C合金めっきが得られることを報告した。最近では、Fe-C合金めっきが提案され,浸炭処理に代替し得るめっきとして注目されるようになっている。しかし、炭素や窒素を共析しためっきについては,その作製条件,皮膜構造,析出機構などは明らかになっていない。また,熱力学的に安定な化合物を形成し得る合金系で,誘起共析が一般に可能であるかどうかも明らかではない。本論文は,このような背景のもとで,炭素や窒素を誘起共析した合金めっきの開発と誘起共析型合金めっきの廃浴処理を必要としないクローズドめっきプロセスの開発を目的として,Cr-C,Cr-NおよびNi-P合金めっきについて行った研究の成果をまとめたものである。
第2章 炭素を誘起共析した合金めっき
第4章 リンを誘起共析した合金めっき
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last updated 13 Mar. 2000
Tsutomu Morikawa
Technology Research Institute of Osaka Prefecture