平成18年度
大阪府立産業技術総合研究所報告(No.20)
  

 平成18年度大阪府立産業技術総合研究所報告(No.20)を発行いたしました。本号では、技術報告8編、技術論文7編、他誌掲載論文等概要67件、口頭発表概要169件および出願特許5件を掲載しています。

 このページでは、技術報告、技術論文の一覧とその概要を掲載しております。
 また本年から技術報告、技術論文の全文をpdfファイルでご覧いただけます。




≪テーマ一覧≫
【技術報告】
新しい粉末加圧成形法の開発 垣辻 篤 呉 長桓 津守不二夫

音響計測解析技術の振動試験への適用

君田隆男 中嶋隆勝 津田靖子
大阪府産技研でのIPv6利活用について 石島 悌 平松初珠
透湿性,防水革 −その機能とメカニズム− 佐藤恭司
MEMS技術を応用した新規センサと高機能センシングシステムの開発 井上幸二 田中恒久 村上修一 宇野真由美
複数陽極を用いる無廃浴合金めっきプロセス
−Ni-WおよびNi-W-P合金めっきへの適用−
中出卓男 左藤眞市 森河 務 横井昌幸
新しいゴム系粘着剤の開発 山元和彦
羊毛の防縮加工へのパルスパワーの応用 田原 充
【技術論文】

金属粉末添加によるその場生成金属間化合物粒子分散アルミニウム基複合材料の作製

松室光昭 橘堂 忠
ナノポリイミド微粒子の調製とサイズコントロール 浅尾勝哉
金属ギャップ導波路における2次元光波の伝送とモード変換 楠 文経 四谷 任 高原淳一 小林哲郎
反射防止構造の作製 福田宏輝
5軸摩擦攪拌接合装置の開発 大川裕蔵
皮膚表面温度解析によるタオルの吸水性と快適性の評価 山本貴則 片桐真子 木村裕和 宮崎克彦 松本陽一
中性条件下における気液流染色加工機によるラミー生地の修飾酵素加工 菅井實夫 上甲恭平 林 壽郎 荒井基夫



技術報告及び技術論文概要

【技術報告】

新しい粉末加圧成形法の開発
垣辻 篤 呉 長桓 津守不二夫
  
 セラミックス,粉末冶金の製造プロセスにおいて,原料粉末から製品への形状を付与する技術が非常に重要な位置を占めていることから,各種成形技術が開発されてきている.当所でも,古くからセラミックスの成形技術の開発を行ってきており,最近では,新しい等方加圧成形法の研究開発に取り組んできている.この過程で複雑形状品の成形に際して,除荷の際に発生する成形品の割れを回避することが可能な新たな成形方法を考案した.本報告では,まず開発の端緒となったRIP(Rubber Isostatic Pressing)法の原理ならびに応用例を紹介し,次いで当所で新たに開発したBIP(Bingham solid/liquid Isostatic Pressing)法に関して,開発に至った経緯ならびに得られた結果について述べる.
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音響計測解析技術の振動試験への適用
君田隆男 中嶋隆勝 津田靖子
  
 人間の耳は常にさまざまな音を聞いている.そして人間は,その音から何かしらの情報を得ることができる.このような音からの情報取得を,計測機器やパソコンなどを利用して行うのは,非常に難しく,ここに,音響計測解析技術の必要性が生じる.音響計測解析技術を効果的に利用することで,人間が耳を用いて行う情報取得よりも,さらに多くの情報を得ることが可能になる.本報では,音圧レベル計測や周波数解析など,基本的な音響計測解析技術について解説し,それらの技術を用いて,対象物の振動現象についての情報を取得する方法を,具体例や実際の計測結果とともに紹介する.さらに,音響計測解析技術を包装貨物の振動試験に適用した事例として,筆者らが新たに考案した「音響解析による共振現象検出手法」について報告する.本手法は,振動試験供試品の共振現象を音の計測解析により検出する手法であり,従来法に対する有効性を実験的に検証した結果について紹介する.
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大阪府産技研でのIPv6利活用について

石島 悌 平松初珠

  
 IPv6は,現在広く使われているIPv4が抱える諸問題を解決するといわれている.また,豊富なIPv6アドレスを用いたビル管理や家電ネットワークの構築など,IPv6は次世代ネットワーク技術として期待されている.情報通信白書によると,企業の約6割が3年以内にIPv6が普及すると考えており,この数年で急速に実用化が進むことが予想される.当研究所では,2001年に実験接続サービスを用いてIPv6対応のウェブサイトを運用するなど,他の公設試や大阪府に先駆けて数年前からIPv6への取り組みを進めてきた.さらに,2005年度には,所内情報システムをIPv4,IPv6混在環境で利用する実証実験を行った.一方,大阪府は,2003年に「大阪府IT推進プラン」を策定し,IPv6の利用促進を掲げ,IPv6フォーラムや実証実験を行うなど活発な活動を始めている.本稿では,2005年度に行った実証実験の結果をはじめとする当研究所での取り組みを軸として,IPv4とIPv6の違いや,IPv6をとりまく現状と将来展望などをわかりやすく報告する.
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透湿性,防水革 −その機能とメカニズム−
佐藤恭司
  
 天然皮革製品に高い機能性を付加する方法として皮革に本来そなわっている吸湿性や透湿性を保持しながら優れた防水性を付与する方法、処理革の特性とその発現のメカニズムについて紹介する.モノアルキルリン酸エステル(MAP)を加脂剤として使用するとMAPは鞣し剤と配位結合によって繊維表面で強く結合し,皮革繊維表面は疎水化された.この革は,防水性に加えて柔軟性や吸湿速度,放湿速度など着用感覚に影響を及ぼす特性も従来の皮革製品より優れていた.防水性や柔軟性はMAPのアルキル鎖炭素数によって変化した。それらの特性発現のメカニズムについて,皮革繊維の表面分析の手法によりMAPのアルキル鎖の配向を解析した結果や電子顕微鏡写真による皮革繊維構造との関連などを交えながら考察した結果を報告する.
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MEMS技術を応用した新規センサと高機能センシングシステムの開発

井上幸二 田中恒久 村上修一 宇野真由美 

  

MEMS(微小電子・機械システム)技術を用いることにより,小型・高機能・低消費電力・安価といった優れた特徴を持つデバイスを開発できる.ここではまず,MEMS技術応用の利点と形成される微小な3次元構造の持つ特徴を示す.さらにその具体例として,当研究所で開発を行っている赤外線アレイセンサと超音波アレイセンサについてその構造・原理と性能を報告する.いずれのセンサもシリコン基板上に,大きさが数100 μmから1 mm角で厚みが1 μm程度の薄い膜を空中に保持した構造を形成したもので,赤外線の照射による温度上昇や超音波による振動が起こりやすい構造となっている.また,いずれのセンサもこの膜上に,温度変化や振動を捉えて電気信号に変換する機能性の薄膜を形成している.最後に,超音波アレイセンサを障害物認識に用い,自律移動ロボットへ応用した例について報告する.

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複数陽極を用いる無廃浴合金めっきプロセス
−Ni-W およびNi-W-P合金めっきへの適用−
中出卓男 左藤眞市 森河 務 横井昌幸
  

 表面処理工業分野では環境に優しいめっき技術への転換が求められており,特にクロムめっきは,原料として6価クロムを使用していることから環境面あるいは現場作業者の健康面からその影響が懸念されている.クロム代替めっきの1つとして高温硬さ特性および耐薬品性に優れているNi-W合金めっきが期待されており,すでにガラス成型用金型やコンダクターロールなどの表面材料として適用されている.しかし,弱酸性の湿潤雰囲気下における耐変色性が低いため,装飾用途での適用に対しては課題を残している.また,合金めっきの場合,浴成分の有機錯化剤が陽極において酸化分解し廃液が発生するため,環境面からめっきプロセスのクローズド化が求められている.ここでは,イオン交換膜をめっき槽に導入することにより可能になっためっきのクローズドプロセスをNi-W合金めっきに適用した結果について紹介するとともに,耐変色性に優れたNi-W-P合金めっきの特徴について報告する.

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新しいゴム系粘着剤の開発

山元和彦 

  

 粘着剤は大きく分けてゴム系粘着剤とアクリル系粘着剤とがある.粘着剤はタック・粘着力・保持力のバランスが重要であり,ゴム系粘着剤では保持力を有するゴム成分にタック・粘着力を有する粘着付与剤(タッキファイヤー)を添加している.そのため,粘着剤製造時において,ゴム成分と粘着付与剤の混合の煩わしさを伴っている.そこでそれを改良するために,高分子グラフト重合法を利用して,ゴム成分として熱可塑性エラストマーであるスチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)に、タック・粘着力を有するポリメタクリル酸ラウリルのグラフト重合を行い,粘着付与剤を添加しない一成分系の粘着剤の開発を試みた.粘着剤の概略を入れながら,新しいゴム系粘着剤の合成方法と粘着特性(タック,粘着力,保持力)及び粘弾性挙動について報告する.

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羊毛の防縮加工へのパルスパワーの応用

田原 充 

  

低温プラズマ処理は繊維・高分子のバルクの性質を変えることなく表面を改質する技術として,接着性,濡れ性の改善などに応用されている.我々は低温プラズマ処理による羊毛織物の防縮加工を検討してきた結果,非常に優れた防縮が可能となる加工法を見いだした.しかし,装置の処理室を減圧する必要があるため,装置に多額の費用を要することと減圧に時間がかかることが問題である.これを解決するため,空気中での処理が可能なパルスコロナ処理について検討し,防縮加工への応用を試みた.パルスコロナはコロナの一種であり,従来のコロナと異なり,パルス状に印加することによって処理物の温度が上昇することがなく,高電圧処理が可能となったため,繊維製品の他,立体的なプラスチックの成型品が処理できる.

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【技術論文】

金属粉末添加によるその場生成金属間化合物粒子分散
アルミニウム基複合材料の作製

松室光昭 橘堂 忠

  
 自動車などの輸送機は軽量化が求められており,鉄系材料からアルミニウム系材料への転換が進められている.また,アルミニウム系材料にはさらなる適用拡大に向けて,その高機能化に対応する材料開発が望まれている.アルミニウム系材料の高強度化・耐摩耗性の向上には強化材の複合化が有効な手段である.従来は強化材としてセラミックスが用いられてきたが,セラミックスはアルミニウム溶湯との濡れ性が悪く複合化が困難である.そこで著者らは,アルミニウム溶湯にセラミックスに比べて濡れ性の良い金属粉末を添加・撹拌することにより,材料中に通常の溶解・鋳造法では得られない粒状の硬質金属間化合物を生成・分散させる手法を開発した.本手法は従来のセラミックス分散複合材料に比べ,製造コストおよび母相と強化相の密着性の点で優れていると考えられる.本報告では,凝固組織に及ぼす添加金属粉末サイズ,撹拌条件,溶湯温度などの影響を調査し,機械的性質に優れた材料を得るための作製条件について検討した結果を述べる.
  詳細はこちらから<PDF:1554KB>
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ナノポリイミド微粒子の調製とサイズコントロール
浅尾勝哉
  
 ポリイミドはスーパーエンプラの1つで耐熱性,絶縁性,機械的特性や耐薬品性等に優れている.その優れた特徴を活かして,主に航空・宇宙,電気・電子,医療,IT関連などの多くの分野で利用されている.ポリイミドの利用されている形態はフィルムや成形体,複合材料のマトリックスが殆どであり,ファインな微粒子としては全く提供されていない.ポリイミドは微粒子化されても優れた耐熱性,絶縁性,耐薬品性等を有し,特に微細化することによって表面効果が発現する.そして,ナノメートルオーダーで制御されたポリイミド微粒子は次世代の電気・電子,光・情報,バイオ・医療,精密化学・医薬合成などの最先端分野での利用が期待できる.しかし,ナノポリイミド微粒子の製造方法はまだ確立されていない.そこで,本研究では,ナノメートルサイズの単分散ポリイミド微粒子の調製方法,さらに得られる粒子のサイズコントロールについて検討したので報告する.
  詳細はこちらから<PDF:1152KB>
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金属ギャップ導波路における2次元光波の伝送とモード変換
楠 文経 四谷 任 高原淳一 小林哲郎
  
 光には回折限界が存在するために,波長より小さな領域に光を閉じ込めることができない.筆者らは,この回折限界の制限を受けない光波として低次元光波の概念を提案し,研究を行っている.本稿で述べる金属ギャップ導波路は誘電体薄膜を金属で挟んだ構造をしており,2次元光波伝送路の1つである.この導波路を伝搬する2次元光波の波長は誘電体層の膜厚を薄くすることでどこまでも小さくすることができ,回折限界以下のビーム径をもつ光ビームが得られる.本稿では,この空間的に圧縮された2次元光波を導波するための手法として,高屈折率コア及び低屈折率コアを用いた全く異なる2つの導波機構について述べ,その効果を数値解析により実証する.また,テーパー型金属ギャップ導波路を用いたモード変換についても述べ,エネルギーを効率良く集中させる方法を示す.
  詳細はこちらから<PDF:340KB>
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反射防止構造の作製

福田宏輝

  
 ガラスやプラスチック等の光学材料の表面からの反射を抑える方法の一つとして,反射防止構造を用いた方法がある.これは,基板表面に波長以下のサイズの円錐状構造を多数形成することで,空気−材料界面での屈折率変化を緩やかにし反射を抑えるものであり,広い波長範囲と入射角度に対して光の反射を抑制できることから,様々な光学素子への利用が期待されている.当所ではこれまで,地域結集型共同研究事業「テラ光情報基盤技術開発」,都市エリア産学官連携促進事業「ナノ構造フォトニクス」において,電子ビーム描画およびドライエッチングを用いた反射防止構造の作製について開発,検討を行ってきた.本報ではこれら事業で得られた成果のなかから特に,様々な周期,アスペクト比の反射防止構造の作製法,および光学素子への利用の一例として,回折格子上への反射防止構造の作製について報告する.
  詳細はこちらから<PDF:1616KB>
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5軸摩擦攪拌接合装置の開発
大川裕蔵
  
 摩擦攪拌接合(以下 FSW [Friction Stir Welding] と略す.)は1991年に英国TWI社で開発された接合技術で,先端に突起物をつけたツールを回転させながら接合する金属に押し付け,発生する摩擦熱で金属を軟化させ,攪拌して接合する技術である.金属を溶融させることなく塑性流動によって固相で接合するため材質劣化が少なく継手効率も高い接合方法として注目を浴びており,一部の航空機やロケット,列車や自動車の製造に利用されている.平成16年度より開始したプロジェクト「都市エリア産官学連携促進事業(大阪東部エリア)『次世代の高品位接合技術』」において,研究テーマの一つとしてFSW による3次元形状の部材接合の自動化について取り組んでいる.この研究を進めるにあたり5軸の自由度を持たせた摩擦攪拌接合装置を開発・試作した.またこの装置による接合を支援するために加工パスを計算・表示するソフトを制作し,それを用いてアルミニウム板の平面加工および3次元加工を行ったので報告する.
  詳細はこちらから<PDF:363KB>
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皮膚表面温度解析によるタオル製品の吸水性と快適性の評価

                                  山本貴則 片桐真子 木村裕和 宮崎克彦 松本陽一

  
 人体の体温調節機能において,発汗,不感蒸泄などの水分の移動現象が主要な役割を果たす.したがって,衣服素材による吸水性や湿潤感の違いが,人体生理や温熱快適感に著しい影響を及ぼすものと考えられる.しかしながら,繊維製品の吸水性と使用時における快適感との関係,あるいは生体反応や皮膚感覚の変化などについては明らかにされていない.本報告では,快適な使用感をもつタオルの設計と開発を行うために,身体に付着した水を拭取ることに注目し非接触で人体の皮膚表面温度が計測できるサーモグラフィシステムを用いて,吸水性能と体幹部皮膚表面温度の変化について検討した.さらに拭取り後の温冷感,ぬれ感,および快適感に関する官能評価と体幹部皮膚表面温度との関連についても考察を加えたので報告する.
  詳細はこちらから<PDF:490KB>
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中性条件下における気液流染色加工機によるラミー生地の修飾酵素加工
菅井實夫
 上甲恭平 林 壽郎 荒井基夫
  
 われわれは,市販の酸性セルラーゼを水溶性高分子の一つ,無水マレイン酸メチルビニルエーテル共重合体により化学的に修飾した修飾酵素を調製し,この酵素の特性変化ならびに綿糸に作用させた場合の糸強度変化等について結果について報告を行ってきた.この酵素特性について詳しく調べる中で,調製した修飾酵素は特にホウ酸塩を用いて調整した溶液系においては,本来は酸性セルラーゼの活性が失われる領域であるpH7.0の中性条件においても,高い相対アビセラーゼ活性を保持する興味深い結果について報告した.このことは,環境への負荷をより低減できる中性セルラーゼとして用いることができる可能性を示唆した.この中性条件下で,従来は酵素による減量加工が難しいとされてきたラミー(麻糸)に対して修飾酵素を用いると,酵素作用による麻糸の減量率の増加に比べ,それに伴う強度低下を抑制できることがわかった.この結果を基に,実機レベルの気液流染色加工機を用いラミー生地を酵素処理した.その結果,加工したラミー生地は酵素処理に伴う生地の減量による強度低下は低いレベルに押さえながら,生地の“風合い”を改質することが可能となったことを報告する.
  詳細はこちらから<PDF:644KB>
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