平成17年度
大阪府立産業技術総合研究所報告(No.19)
  

 平成17年度大阪府立産業技術総合研究所報告(No.19)を発行いたしました。本号では、技術報告7編、技術論文7編、他誌掲載論文等概要90件、口頭発表概要214件および出願特許3件を掲載しています。

 このページでは、技術報告、技術論文の一覧とその概要を掲載しております。




≪テーマ一覧≫
【技術報告】
javaを利用したイントラネット業務システムの開発 中西 隆

Webアプリケーションによる業務システムの構築

石島 悌
クロメート処理に代わる化成処理−電解還元法によるクエン酸浴からのモリブデート皮膜の形成− 森河 務・中出卓男・北村浩司
褥瘡予防寝具類の特性 木村裕和・井上裕美子・片桐真子・山本貴則
振動試験における非線形応答現象 中嶋隆勝・津田和城
キャピラリー電気泳動分析法の環境分析への応用 中島陽一
高温廃熱回収器の開発 井本泰造・東 忠宏・宮内修平・入江年優
【技術論文】

放電加工によるチタン材の表面改質

塚原秀和・南  久・増井清徳・曽根 匠
球状黒鉛鋳鉄の耐食性改善に及ぼすSn, Sb, In, Ag添加とSnおよびCuの複合添加の影響 橘堂 忠・武村 守・佐藤幸弘
溶融積層式ラピッドプロトタイピング法で作製したポリカーボネート樹脂製造形物の機械的性質 吉川忠作・菊池武士・奥村俊彦
20L小型チャンバー法による革から放散される揮発性有機化合物の分析 喜多幸司
中小企業情報化支援ポータルサイトの開発 新田 仁・竹田裕紀・松下 隆・越村惣次郎
RFマグネトロンスパッタ法を用いたZn2SnO4透明導電性酸化物薄膜の作製 佐藤和郎・筧 芳治・村上修一・岡本昭夫・森脇耕介
オーステナイト系ステンレス鋼SUS304の低温プラズマ窒化と浸炭による複合処理 山内尚彦・上田順弘・岡本 明・辻川正人



技術報告及び技術論文概要

【技術報告】

javaを利用したイントラネット業務システム開発
中西 隆
  
java言語はインターネットサーバやイントラネットサーバのプログラミング言語として主流になっている.当研究所でも、平成13年度から平成16年度にかけて開発した業務処理システムのポータル機能から研究管理,技術指導管理,掲示板等の部分についてサーバ側プログラム言語としてjava言語を使用した.ここでは,java言語の持つオブジェクト指向の考え方を活かし,さらにXML関連ライブラリやフレームワークなどオープンソースソフトウェアとして提供されるjavaクラスライブラリを活用することで,少人数でシステムを完成させることができ,プログラムも柔軟な拡張容易なものとして構築することができた.本稿では,この体験から業務システムを自主開発する利点と実行した開発プロセス、さらにWebアプリケーションとして業務システムを作成するために使用したjava関連技術とその利用方法と効果について紹介する.
  
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Webアプリケーションによる業務システムの構築
石島 悌
  
オープンソースを用いた業務システムの多くは,クライアントにパソコンとブラウザソフトを使った,ウェブアプリケーションとして構築されている.サーバ側で用いるOS・データベース・ウェブサーバ・アプリケーション記述言語などには,オープンソースやフリーウェアが使われる.本報では,サーバ側ソフトウェアとしてFreeBSD・PostgreSQL・Apache・PHPを活用している,産技研の機器利用・依頼試験管理システムおよび歳入歳出管理システムを題材として,業務システムの構築方法や各種ソフトウェア活用のノウハウを紹介する.
  
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クロメート処理に代わる化成処理 −電解還元法によるクエン酸浴からのモリブデート皮膜の形成−

森河 務 中出卓男 北村浩司
嘉門雅史

  
 21世紀のめっき業界を取り巻く環境規制は厳しさを増している.欧州では,酸性雨により廃棄された自動車や家電製品から有害物が溶出して,土壌,地下水を汚染し,これが生態系,ひいては人体に影響を与える懸念が打ち出され,6価クロム,鉛,カドミウム,水銀などの使用禁止が検討されている.亜鉛めっきのクロメート皮膜中には6価クロムが含有されるため,6価クロムを含まないクロメート代替処理が求められ,自動車・家電関係を中心に,その代替技術の導入が急ピッチに進められている.本報告では,クロメート代替処理として,当所で開発を行った電解還元モリブデート皮膜を取り上げ,化成皮膜の生成条件,溶液の状態,析出機構,ならびに皮膜の化学状態などを紹介する.
  
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褥瘡予防寝具類の特性
木村裕和 井上裕美子 片桐真子 山本貴則
  
 わが国は世界一の長寿国であり,近年の少子化傾向とも相まって総人口に占める高齢者層の割合は今後とも増加し続けることが予想される.したがって,寝たきりやそれに近い状態の高齢者などに頻発する褥瘡も深刻な問題として顕在化するものと推察される.もちろん,これまでにも褥瘡予防効果を謳った寝具類が多数開発され,販売されているが,褥瘡予防寝具類の使用や選択基準に関する具体的な指針は示されていない.そこで,当研究分野では褥瘡予防に対し真に必要な機能を明確にし,優れた性能を有する寝具類の提案を目的に検討を進めている.そして,これまでに代表的な褥瘡予防寝具類を対象に静的荷重を用いた実験や人体(被験者)による計測評価を行ってきた.本稿では,褥瘡ならびに褥瘡予防寝具類の現状を概説するとともに人体に加わる応力や寝床内気候について実際に被験者を用いて実験的検討を行った結果を紹介する.
  
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振動試験における非線形応答現象

中嶋隆勝 津田和城 

  

 振動試験は,振動が原因となる製品や部品の破損事故,あるいは動作不良事故などを未然に防ぐことを目的としており,安全で安心できる社会を実現するために,あらゆる製造業で実施される必要がある重要な試験である.しかし,規格どおりの振動試験を行っても実地で破損事故が発生する事例は多く,その原因を明らかにし,正しく振動耐久性を評価する手法を開発する必要がある.本報では,まず,JISで規定された振動試験の方法およびその問題点について説明する.次に,振動試験において誤った評価の原因となる供試品の非線形応答現象の具体例を紹介する.さらに,輸送包装貨物において代表的な非線形応答現象の一つであるガタ振動を例に挙げ,耐久性評価結果が実地で再現されないメカニズムについて数値解析結果を交えて詳細に説明する.

  
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キャピラリー電気泳動分析法の環境分析への応用
中島陽一
  

 キャピラリー電気泳動分析法は,迅速かつ簡便で,汎用性が高く,有用な手法である.このため、特に溶液中の各種イオンの分析に広く用いられている.しかし,他の手法に比べ,検出感度がやや劣るという欠点を有する.一般的な環境分析において,求められる感度は年々高くなっている.このため,本手法を環境分析に適用するには検出感度の向上が不可欠である.加えて,本分析法は共存物質の影響をうけやすい.この点も様々な履歴を持つ環境試料分析において問題となる.このような点を克服するため,ポリオキソメタレート生成反応を応用した高感度なキャピラリー電気泳動分析法(主に重金属の分析)を研究した.本報文では,本手法の詳細および得られた結果について述べる.

  
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高温廃熱回収器の開発

井本泰造 東 忠宏 宮内修平 入江年優 

  

 地球温暖化要因である二酸化炭素の排出抑制には,燃焼をともなう熱設備の熱効率の向上が重要な技術課題であり,燃焼排ガス損失の低減が重要なポイントとなる.高温排ガスからの熱回収を実施し,燃焼用空気の加熱用熱源として利用すれば,燃料節減(省エネルギー化)によって排ガス量の低減が図られ,二酸化炭素の削減に大きく寄与することになる.そこで,高温排ガスから1000℃以上の高温燃焼用空気を得ることを目的として,伝熱管にアルミナセラミックス管を採用すると同時に,輻射エネルギーを最大限に利用するため,伝熱管内外に伝熱促進管を挿入した高温廃熱回収器(シェルアンドチューブ方式)の開発を行った.本報告では,試作機による試験結果,および,高温廃熱回収を行った場合の省エネルギー効果についての検討も行ったので併せて報告する.

  
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【技術論文】

放電加工によるチタン材の表面改質

塚原秀和 南  久 増井清徳 曽根 匠

  
 チタンは比強度が高く,耐食性に優れるなどの特性を有するため,航空機部品や化学プラント,海洋開発などの材料として,また,昨今ではレジャー用品などでも,その需要が急速に増大している.しかし,耐摩耗性や耐焼付性に乏しいため,機構部品の分野ではその需要は多いとはいえない状況にある.しかし,エネルギーや環境問題の観点などから動力機械の軽量化などが進められており,チタンの摩擦・摩耗特性が改善されれば,さらに需要の伸びが期待される.放電加工法は,絶縁液中において,電極と工作物との間で火花放電を発生させ,材料を溶融除去加工する方法である.油中で放電加工を行うと,加工液の熱分解で生成される炭素が,加工表面に侵入することが知られている.その現象を利用することにより,チタンの放電加工においてTiC層の生成を期待できる.そのため,チタン材の耐摩耗性向上を目的として,放電加工を利用した表面改質法を検討した.その結果,処理条件の最適化により,ほとんどクラックのない硬質のTiC層が得られ,摩擦係数の低減および,耐摩耗性の向上を確認できた.
  
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球状黒鉛鋳鉄の耐食性改善に及ぼすSn,Sb,In,Ag添加とSnおよびCuの複合添加の影響
橘堂 忠 武村 守 佐藤幸弘
  
 土中埋設下での球状黒鉛鋳鉄の耐食性改善を目的として,微量の塩を含む酢酸水溶液腐食環境下における腐食実験を行い,球状黒鉛鋳鉄の耐食性改善に錫の合金化が優れた効果が認められることを報告している.しかし,錫は球状黒鉛の球状化不良を促進する元素と知られていることから,その添加量は0.20mass%までとした.この添加量の範囲では,形状のくずれた黒鉛が全く認められなかったため,今回錫添加量を更に拡大して試料を溶製し,耐食性について検討を加えた.また耐食性改善が認められた元素(錫と銅)について,周期律表でこれらに近い新たな元素を添加して耐食性を調査した.錫(Wb族)についてはその近辺のアンチモン(Xb族)とインジウム(Vb族)を,銅については同じ族(Tb)の元素である銀を添加した試料を溶製した.さらに錫と銅を複合添加した試料を作製し,それらの耐食性を評価した.
  
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溶融積層式ラピッドプロトタイピング法で作製したポリカーボネート
吉川忠作 菊池武士 奥村俊彦
  
 ラピッドプロトタイピングは,工具や金型を用いることなく,3次元CADのデータから試作物を自動造形することが可能である.溶融積層式(FDM)ラピッドプロトタイピング法は熱可塑性樹脂製の試作物を造形できるため,プラスチック製品の機械的性質予測への適用が試行されている.しかし,FDM造形物は,造形原理に起因する諸特性の方向性と不均質性を有するため,同一形状の射出成形品とは機械的性質に差異が生じる.ポリカーボネート樹脂製のFDM造形物の機械的性質に関して, 試験片形状(3種類の造形方向および3種類の厚さ)および箱形状について射出成形品と比較した結果について報告する.
  
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20L小型チャンバー法による革から放散される揮発性有機化合物の分析

喜多幸司

  
 革および革製品について,皮から革を製造する工程で,鞣し剤中のホルムアルデヒドや,仕上げ剤(表面塗装)の溶剤としてトルエン,キシレンが含まれることがあり,革表面から残存するVOCが徐々に放散するという事例が報告されている.そこで,JIS A 1901(建築材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散測定方法−小型チャンバー法)に基づき,市場流通革36種の銀面から放散されるVOCの分析を行った.トルエン,キシレン,エチルベンセン,スチレン,n-テトラデカン,総揮発性有機化合物(TVOC)の定量分析結果,試験開始後2週間換気を続けたときのTVOC放散速度の経時変化,チャンバー法で測定した放散速度から室内空間モデルを用いて室内濃度増分値を計算した結果について述べる.
  
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中小企業情報化支援ポータルサイトの開発
新田 仁 竹田裕紀 松下 隆 越村惣次郎
  
 大阪府の中小企業における情報化は,パソコン導入やインターネット接続などのインフラ面では着実に進展している反面,それらの情報化投資が経営に貢献していないという問題を抱えている.これに対し著者らは,経営改善につながる情報化を支援する「中小企業情報化支援ポータルサイト」を開発した.ポータルサイトのメインコンテンツ「情報化診断システム」では,診断企業の情報化の現状を入力することによって,経営者が実現を希望する経営目的とそれを実現するために必要な情報化方策を明示し,情報化成功のために何が欠けているか,何をすべきかを提供する.また,情報化の成功例をまとめた「情報化事例」,情報化に関わる技術的な解説である「情報化Q&A」,情報化のための公的な支援をまとめた「支援施策一覧」などのサブコンテンツも整備し,中小企業の情報化を総合的に支援する.
  
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RFマグネトロンスパッタ法を用いたZn2SnO4透明導電性酸化物薄膜の作製

                                  佐藤和郎 筧 芳治 村上修一 岡本昭夫 森脇耕介

  
 最近,液晶ディスプレーや太陽電池など透明導電膜を必要とする機器の需要が急速に伸びている.現在,透明導電膜材料としては,主にインジウムとスズの酸化物であるITOが使用されている.ITOは透明導電膜材料として,大変優れた性質を有する.しかしながら,希少で高価なインジウムを含むという重大な問題を抱えている.このため,新しい透明導電膜材料の開発が望まれている.Zn2SnO4は,可視光域で高い透過率を示し,かつ導電性を有する.また,安価で毒性の無い元素で構成されている.これらのことから,Zn2SnO4は,新しい透明導電膜材料として期待されている.しかしながら,報告されている電気伝導率は低く,その物性はよくわかっていないのが現状である.本研究では,Zn2SnO4薄膜をRFマグネトロンスパッタ法により作製し,酸素流量比が物性に与える影響を調べた.その結果,更なる低抵抗化が必要であるが,透明導電膜としての応用の可能性が見出された.
  
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オーステナイト系ステンレス鋼SUS304の低温プラズマ窒化と浸炭による複合処理
山内尚彦 上田順弘 岡本 明 辻川正人
  
 オーステナイト系ステンレス鋼は,その優れた耐食性を活かして,多くの機械部品に使用されているが,かじりや焼き付きが接触面に生じやすい.また,従来の窒化処理は,表面の硬度を著しく増加させ,耐摩耗性を大きく改善できるが,その耐食性を低下させる欠点を持つ.本報告では,クロム析出物を生成しないため,オーステナイト系ステンレス鋼の耐食性を損なうことなく表面硬化できる723K以下の比較的低温でのプラズマ窒化と浸炭ならびにそれらの複合処理により,オーステナイト系ステンレス鋼SUS304の表面に硬さと耐食性に優れた層を形成する方法について紹介する.また,種々の条件での浸炭と窒化の組み合わせによる複合処理を行い,処理材の硬さや耐食・耐摩耗性などの特性を評価し,より良い複合化の条件について検討した.
  
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