■ 第45回ニューセラミックスセミナー 

マテリアルズ・インフォマティクスとセラミックス
     -熱を制御する技術-
  • 日時:2018年(平成30年)2月26日(月)10:00~16:45
  • 場所:大阪産業創造館 6階 会議室E
    (大阪市中央区本町1-4-5)
  • 主催:ニューセラミックス懇話会、(一社)大阪府技術協会
  • 後援:地方独立行政法人大阪産業技術研究所
 
 今回のセミナーでは、マテリアルズ・インフォマティクスに焦点を当てたこれからの材料開発をテーマとし、「マテリアルズ・インフォマティクスとセラミックス -熱を制御する技術-」と題して開催します。熱マネージメント技術と熱を制御する材料としての新規なセラミックスに注目した内容のセミナーになっています。
 マテリアルズ・インフォマティクス(材料・インフォマティクス)は、コンピュータや人工知能(AI)を利用して、膨大な情報から必要な情報を抽出し(データマイニング)、新材料の開発に応用する材料科学と情報科学の融合した学問分野であると言われています。これまで、新材料、代替材料の発見や開発は、研究者の「直観」と「経験」に依存するところが大きいと言われてきました。ところが、近年のAIの劇的な発展により、効率的な材料開発を行い、時間とコストの大幅な低減が期待されています。アメリカや欧州では既にマテリアルズ・インフォマティクスに関する大規模なコンソーシアムが立ち上がり、この分野への取組は世界的な潮流になっています。日本においても、2015年から物質・材料研究機構(NIMS)を核としてマテリアルズ・インフォマティクスによる新材料開発が進められています。
 セミナーでは、自動車における熱管理技術やパワーモジュールの放熱技術および我が国におけるマテリアルズ・インフォマティクスの進捗状況や新規熱電変換材料について講演して頂きます。
 セミナーに参加して頂いた皆様にとり、熱マネージメントおよびマテリアルズ・インフォマティクスによる新材料開発に関する最新動向や課題あるいはビジネスチャンスについての有意義な内容になっています。


プログラム

(1)自動車の熱管理技術と課題
トヨタ自動車株式会社 車両技術開発部 熱・流体技術開発室
プロフェッショナル・パートナー 松野 孝充 氏

 HV化で改善されたが燃料エネルギのかなりの部分が熱として廃棄され、一方でEVでは暖房熱源が課題となっている。環境対応車への熱マネージメント技術によるエネル効果と熱的快適性の両立はクルマづくりの重要課題に位置付けられる。熱収支と熱分配の改善のための需要削減、需給改善、効率的熱生成および廃熱の有効エネルギへの変換などを量産車への採用技術を交えながらその現状について解説すると共に今後の課題について述べる。

(2)パワーモジュール放熱技術におけるセラミックスの役割
三菱電機株式会社 先端技術総合研究所 パワーモジュール技術部
主席技師長 西村 隆 氏

 近年、パワーエレ機器の小型化・高出力密度化を背景に、パワーモジュールの高放熱化技術の開発が盛んである。有機絶縁型と無機絶縁型モジュールで高放熱化技術が進化を遂げており、放熱性と絶縁性の両者機能を担う絶縁層がキーマテリアルとなっている。本報では、セラミックスフィラーを分散した有機絶縁型とセラミックス板を用いた無機絶縁型のモジュール開発動向を紹介する。また新規材料適用モジュール構造とその特長を述べる。

(3)高放熱基板の技術動向
デンカ株式会社 大牟田工場 セラミックス研究部
部長 谷口 佳孝 氏

 SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といった次世代パワー半導体の市場拡大が期待される中、使用される部材には、更なる高熱伝導化、高信頼性化が求められている。
 当社は従来より放熱フィラー、絶縁放熱基板(金属基板、セラミックス基板)、放熱材料などの開発及び製造を行っており、今回は次世代パワー半導体に向けた高放熱基板の技術動向について紹介いたします。

(4)『AIの技術』でなにができるか?- マテリアルズ・インフォマティクスの応用に向けて
株式会社日立製作所 研究開発グループ システムイノベーションセンタ 知能情報研究部
主任研究員 淺原 彰規 氏

 近年、AIや機械学習の技術は目ざましい発展を遂げ、適用困難であった分野での成功報告が相次いでおり、材料科学への適用も期待されている。しかし、期待の過熱のあまり「AIは何でもできる」という誤解に満ちた言説も散見されるようになってしまった。そこで本講演では、AIや機械学習の技術が何をめざしてきたかを整理し、その成果をデータ駆動型マテリアルズ・インフォマティクスへ展開していくことについて紹介する。

(5)将来のセラミック材料の研究開発に向けて
株式会社村田製作所 技術・事業開発本部 新規技術センター 先端技術研究開発部
プリンシパルリサーチャー 檜貝 信一 氏

 計算科学、そしてデータ科学の両技術は、従来の材料研究開発に革新をもたらし得る強力な技術として、かつてないレベルで関心と期待を集めており、日本でも、これらを最前面に押し出した複数の大型国家プロジェクトが、材料産業分野における応用・実用展開を目指してスタートしている。本講演では、我々の両技術への取り組みを紹介すると共に、将来の材料研究開発の在り方について、是非とも多くの参加者の方々と議論したい。


(6)データ駆動型手法による新規熱電変換材料の発見とその第一原理材料設計
パナソニック株式会社 先端研究本部 材料・デバイス研究室
主任研究員 玉置 洋正 氏

 ”Materials informatics”と呼ばれるデータ駆動の材料開発手法が近年注目を浴びている。我々は最近、DFT計算データを利用した化合物スクリーニングをきっかけとして、高性能なMg3Sb2系熱電変換材料の開発に成功した。本講演では熱電変換材料のスクリーニング手法について紹介するとともに、Mg3Sb2の高性能化の鍵となる材料設計因子を第一原理計算に基づいた解析により明らかにする。