■ 第44回ニューセラミックスセミナー 

新しいセラミックス材料を用いた次世代蓄電池
  • 日時:2017年(平成29年)2月28日(火)10:00~16:45
  • 場所:大阪産業創造館 6階 会議室A・B
    (大阪市中央区本町1-4-5)
  • 主催:ニューセラミックス懇話会、(一社)大阪府技術協会
  • 後援:地方独立行政法人大阪産業技術研究所
 昨年の本セミナーでは、エネルギーハーベストに焦点を当てた創エネルギーをテーマとしました。今回は、創エネルギー技術により生み出された電気エネルギーを貯蔵する蓄エネルギー技術、特に、次世代の二次電池に注目し、「新しいセラミックス材料を用いた次世代蓄電池」と題して開催します。次世代蓄電池を構成するために必要不可欠なセラミックスに注目した内容のセミナーになっています。
 蓄電池は、電気自動車、家庭での小規模なあるいは太陽光、風力等の自然エネルギーによる大規模な電力貯蔵に必要不可欠な装置です。電池産業は、伝統的に日本企業の得意な産業分野で、これからも成長が期待されています。とりわけ1990年代初頭に商品化されたリチウムイオン電池は、革新的な電池であり、様々な分野に大きな影響を与えてきました。今日まで絶え間なく新しい材料やプロセス技術が開発され、高性能化が進められています。このようなリチウムイオン電池に代わる次世代蓄電池として、安全性の高い全固体電池や資源が豊富なナトリウムやマグネシウムを用いた蓄電池の開発が活発に行われ、セラミックスがキーマテリアルになっています。
 セミナーでは、リチウムイオン電池の継続的な材料革新、漏液がなく安全性に優れる全固体電池およびその製造プロセス、さらに、リチウムイオンに代わるナトリウムイオンやマグネシウムイオン等を用いた次世代蓄電池の開発動向や課題について講演して頂きます。
 セミナーに参加して頂いた皆様にとって、リチウムイオン電池および次世代蓄電池のセラミックス材料に関する最新動向や課題あるいはビジネスチャンスについての有意義な内容になっています。



プログラム

(1)ソニーのリチウムイオン電池における材料革新と次世代蓄電池の展望
ソニー株式会社 先端マテリアル研究所 バッテリー開発部
チーフマテリアルリサーチャー 永峰 政幸 氏

 1991年にリチウムイオン電池を商品化して以来、継続的な高エネルギー密度化や用途拡大に伴う性能向上の要望に対して、材料、構造、設計などで電池を高性能化させてきた。本講演では材料に焦点をあて、ソニーの電池の進化を支えてきた技術を紹介する。また、将来電池の候補材料についても触れる。

(2)全固体電池の開発状況とその課題
トヨタ自動車株式会社 電池材料技術・研究部
主査 小谷 幸成 氏

 電気自動車など環境対応車のEV航続距離延長を目指し、トヨタではリチウムイオン電池を凌駕する革新型電池の基礎研究に踏み込んだ活動を展開しています。今回、セラミックス技術の応用が期待される硫化物系や酸化物系の無機固体電解質を用いた全固体電池を中心に、固固界面の制御や新材料開発など、最近の進展を紹介するとともに、実用化に向けて残る課題を整理する。

(3)ナトリウムイオン電池用材料の新展開
東京電機大学 工学部
准教授 藪内 直明 氏

 近年、電力貯蔵用途など大型蓄電池への期待が高まっている。資源が豊富な元素から構成されたナトリウムイオン蓄電池はこのような用途への応用が期待されている。クロム系正極材料やチタン系負極材料などナトリウムイオン電池用電極材料の研究における新展開について紹介する。

(4)多価カチオン系およびアニオン系革新型蓄電池への期待
京都大学大学院 人間・環境学研究科
教授 内本 喜晴 氏

 電気自動車用電池として、現状のリチウムイオン二次電池よりも高い体積エネルギー密度を有する電池の開発が望まれている。マグネシウム(Mg)に代表される多電子移動負極は、体積理論容量に関してリチウム金属を凌ぐ値であり、活発に研究が行われている。本講演では、Mg金属負極を用い、2価のカチオンであるMgイオンをキャリアとするMg二次電池および、多価カチオンをイオンキャリアとして用いない電池系について紹介する。

(5)酸化物系固体電解質を用いた積層型セラミックス全固体電池
株式会社村田製作所 技術・事業開発本部
新規技術センター 先端技術研究開発部
リサーチャー 吉岡 充 氏

 主要材料をセラミックスで構成した全固体電池は漏液や発火の心配がなく、信頼性と安全性に優れ、高温でも使用可能な次世代電池として注目を集めている。一方、酸化物系の固体電解質を用いた場合は、固体電解質の高い接触抵抗が障害となり、実用化には至っていない。
我々は、グリーンシートの積層体を一体焼結することで接触抵抗を減らし、室温で充放電が可能な全固体電池を実現した。講演にて作製した電池の評価結果を報告する。


(6)全固体ナトリウム電池にむけた材料革新と展望
大阪府立大学大学院 工学研究科 物質・化学系専攻
准教授 林 晃敏 氏

 安全性とエネルギー密度を両立する元素戦略型次世代蓄電池として、全固体ナトリウム電池が注目されている。この電池を実現するためには、高い導電率を示す固体電解質の開発や電極活物質との固体界面構築が重要となる。これまでに硫化物系電解質が高い導電率と優れた成形性を兼ね備えており、それを用いた全固体電池が室温で作動することを見出している。本発表では、固体電解質の開発経緯や全固体電池の課題や展望について述べる。