■ 第43回ニューセラミックスセミナー 

創エネルギーに貢献するセラミックス
  • 日時:2016年(平成28年)2月23日(火)10:00~16:45
  • 場所:大阪産業創造館 6階 会議室E
    (大阪市中央区本町1-4-5)
  • 主催:ニューセラミックス懇話会、(一社)大阪府技術協会
  • 後援:地方独立行政法人大阪立産業技術総合研究所
 今回のセミナーでは、2011年に発生した東日本大震災による原子力発電所での事故以来、「エネルギーミックス」を始めとし、考え直さなければならない日本のエネルギー政策に関連した「創エネルギーに貢献するセラミックス」と題して開催します。特に、創エネルギーの中でも、身近に存在しているが希薄であるため利用効率の悪い熱、振動、太陽光、電磁波等のエネルギーを集めて電力に変換し利用するエネルギーハーベストとエネルギーハーベストに必要なセラミックスやデバイスに関連した内容のセミナーになっています。
 駅や道路での人の動き、橋等の建造物、またはモーターやエンジン等の機械から発生する振動、あるいはビルや工場の配管等から発する廃熱を利用するエネルギーハーベストにはセラミックスを用いたデバイスが必要不可欠になります。デバイスの効率を向上させるためには、ピエゾ素子やゼーベック素子(ペルチェ素子)用セラミックスの高性能化が強く求められています。さらに、エネルギーハーベストを実用的な価格とサイズの低消費電力で行うための小型モジュールを用いたワイヤレスセンサーの研究開発も活発に行われています。
 セミナーでは、再生可能エネルギーを利用するシステムの経済面からの評価、振動エネルギーを利用するエネルギーハーベストに用いる圧電セラミックスの材料とデバイス、および熱エネルギーをエネルギー源とするエネルギーハーベストの材料と応用について講演して頂きます。
 セミナーに参加して頂いた皆様にとって、再生可能エネルギー、エネルギーハーベストに関する最新動向や課題あるいはビジネスチャンスについての有意義な内容になっています。


プログラム

(1)エネルギー需給システムの経済評価 ―化石燃料費ゼロの社会―
京都大学大学院エネルギー科学研究科 エネルギー社会・環境科学専攻
教授 手塚 哲央 氏

 エネルギー技術の導入の際には一般にその費用金額が重要視されるが、費用の内訳が論じられることは少ない。しかし、太陽電池や風力発電などの再生可能エネルギーには化石燃料消費を不要となる特徴があり、それはエネルギー利用の形態を変える可能性がある。本講演では、化石燃料に依存したシステムと再生可能エネルギーを利用するシステムを比較し、化石燃料費ゼロの社会で生じるかもしれない変化を眺めてみたい。

(2)エネルギーハーベスティングの動向
株式会社NTTデータ経営研究所 社会・環境戦略コンサルティングユニット
シニアマネージャー 竹内 敬治 氏

 持続可能な社会実現のためには、石油消費量、CO2排出量の低減を可能とする次世代環境車が不可欠である。1997年のプリウス発売以降、燃費とドライビング性能を両立するハイブリッド技術の開発に注力し、その拡販、また、電気自動車を始め、燃料電池車へ展開してきた。その中での今後の課題、電動化、軽量化、知能化について概説する。特に軽量化については、CFRP(炭素繊維強化プラスチックス)・CF(炭素繊維)の現状と、LFAにて取り組んできたトヨタの取り組みと、及び今後の期待について述べる。

(3)圧電セラミクスを用いた振動発電技術の開発
株式会社村田製作所
マネージャー 堀口 睦弘 氏

 近年、希薄な熱や光、電波、振動などの環境エネルギから電気エネルギに変換する環境発電技術が注目を浴びている。これらのデバイスは、電池フリー、メンテナンスフリーを可能とし、ワイヤレスセンサネットワークへの適用が期待される。本講演では、振動エネルギーを電気エネルギに変換可能な圧電素子を用いた環境振動発電技術およびアプリケーション例について解説する。ピエゾ式コモンレールシステムは高速応答・高発生力のピエゾスタックを駆動源としており、燃料噴射率の増加、噴霧粒子微粒化、噴射インターバル短縮で、ガソリン車並みの高出力化,エミッション低減が実現できる。しかしピエゾスタックへの高出力化,高信頼性の要求は高く、高温環境,作動回数1億回以上に耐える必要がある。本講演では第1,第2世代のピエゾスタックを紹介し、高出力,高信頼性を両立させた技術について述べる。

(4)圧電厚膜を用いた振動発電素子の特徴と応用
パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社
 メカトロニクス事業部 主幹 加賀田 博司 氏

 ステンレス基板上にスクリーン印刷法にてPb(Zr、Ti)O3系圧電セラミックスの厚膜を形成する材料と工法を開発した。長さ17㎜の片持ち梁の両面に左記厚膜を形成した発電素子では、31Hz、0.1Gの正弦波で1mW以上の電力が得られることを確認した。その電力にて、温度、3軸加速度を測定し、そのデータを1秒に1回の頻度で無線通信できることも確認した。センサネットワーク電源としての応用が期待できる。

(5)熱から電気を取り出す夢の材料 ―熱電変換材料―
公益財団法人 豊田理化学研究所 フェロー事業部
フェロー 河本 邦仁 氏

 地球を破壊に導く枯渇性エネルギー源(化石燃料、核燃料)への依存を極力抑えて、太陽起源エネルギー利用を本気で考える時期にきており、熱電変換材料・デバイスの太陽エネルギー利用への積極的応用を想定した研究開発が強く求められている。本講演では、膨大な量の太陽熱から電気を取り出すのに応用できる大気中300-400Kで使用可能な熱電変換材料を取り上げ、ナノ構造化による性能向上及びモジュール化について紹介する。

(6)熱電変換技術と発電への応用
株式会社KELK 熱電発電事業推進室
主査 藤本 慎一 氏

 熱電変換は熱と電気とを直接的に変換する技術である。民生の消費財から研究装置、産業設備にまで既に多くの実用例があり、その数は今でも増えている。ただ、多くの例は冷却・温調用途(電気→熱への変換)であり、発電用途(熱→電気への変換)の例は少なく、今後が注目される。本講演では既存の実用化事例を紹介し、それらが熱電変換の特長をどう生かしたかを示し、今後の発電への応用に向けた考え方、設計のポイントを説明する。