■ 第42回ニューセラミックスセミナー 

次世代型蓄電池にむけた材料革新
  • 日時:2015年(平成27年)2月27日(金)10:00~16:45
  • 場所:大阪産業創造館 6階 会議室E
    (大阪市中央区本町1-4-5)
  • 主催:ニューセラミックス懇話会、(一社)大阪府技術協会
  • 後援:地方独立行政法人大阪立産業技術総合研究所
 42回目を迎える今回のセミナーでは、日本の基幹産業であり、製造業を牽引している自動車産業に注目し、「次世代自動車を支えるセラミックス」と題して開催します。近年、ハイブリッド自動車や電気自動車などの次世代自動車の市場が、急速に拡大しています。このような次世代自動車には、セラミックスを用いた新しい蓄電池、ピエゾ素子あるいはパワーモジュール用基板などが必要で、現在よりも高い性能をもつセラミックスが求められています。
 総務省の統計(2013年)によると、我が国の全就業人口のうち547万人が自動車関連産業に従事し、全体の8.7%を占めています。また、2012年の自動車製造業の製造品出荷額等は、50兆円を超え、全製造業の製造品出荷額等に占める割合は17.4%となり、まさしく製造業を牽引しています。
 このような自動車産業において、資源やエネルギーの枯渇および二酸化炭素の排出量削減などを背景に、従来のガソリン車からハイブリッド自動車や電気自動車への移行が始まり、産業構造が変わり始めています。例えば、ガソリン車のエンジンを構成する部品点数は1~3万点もありますが、電気自動車のモーターに搭載する部品点数は30~40点と激減します。従って、これまでと異なった装置や部品が求められ、自動車の生産様式も従来の垂直統合型から水平連携型へ移行すると言われています。
 セミナーでは、上記の背景のもと、開発が急務になっているリチウムイオン電池を始めとする蓄電池、燃費の向上に寄与する車体の軽量化、コモンレールシステムに必要なピエゾ素子、パワーモジュール用セラミックス基板および燃料電池自動車の燃料となる水素製造に必要なセラミックスについて講演して頂きます。
 セミナーに参加して頂いた皆様にとって、環境に優しく、安全で快適な次世代自動車に関する動向や課題およびセラミックスの自動車分野への新たなビジネスチャンスについて有意義な内容になっています。


プログラム

(1)電動車両用リチウムイオンバッテリーの開発
株式会社本田技術研究所 四輪R&Dセンター
上席研究員 新村 光一 氏

 世界的な温暖化ガスの削減に向けて、ハイブリッド自動車をはじめとする電動車両の普及拡大が必要不可欠である中、ホンダは、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、それぞれに最適な特性を持つリチウムイオンバッテリーを採用し、電動車両の市場拡大をめざしている。今回はここで採用されたバッテリー技術を紹介するとともに、今後の進化方向性について解説する。

(2)自動車の軽量化とCFRP、炭素繊維への期待
トヨタ自動車株式会社 材料技術統括室
主査 野田 克敏 氏

 持続可能な社会実現のためには、石油消費量、CO2排出量の低減を可能とする次世代環境車が不可欠である。1997年のプリウス発売以降、燃費とドライビング性能を両立するハイブリッド技術の開発に注力し、その拡販、また、電気自動車を始め、燃料電池車へ展開してきた。その中での今後の課題、電動化、軽量化、知能化について概説する。特に軽量化については、CFRP(炭素繊維強化プラスチックス)・CF(炭素繊維)の現状と、LFAにて取り組んできたトヨタの取り組みと、及び今後の期待について述べる。

(3)デンソー第2世代ピエゾスタック
株式会社デンソー セラミック技術部 技術企画室
室長 藤井 章 氏

 ピエゾ式コモンレールシステムは高速応答・高発生力のピエゾスタックを駆動源としており、燃料噴射率の増加、噴霧粒子微粒化、噴射インターバル短縮で、ガソリン車並みの高出力化,エミッション低減が実現できる。しかしピエゾスタックへの高出力化,高信頼性の要求は高く、高温環境,作動回数1億回以上に耐える必要がある。本講演では第1,第2世代のピエゾスタックを紹介し、高出力,高信頼性を両立させた技術について述べる。

(4)自動車用セラミックスの開発
  ~パワー半導体モジュール用セラミックス基板~ ~自動車ヒーター用非鉛PTCセラミックス~
日立金属株式会社 開発センター
主任研究員 島田 武司 氏、今村 寿之 氏

 近年、環境配慮型自動車の市場への投入が盛んになってきた。そのような背景の下、次世代自動車に対して新しい技術が要求され始めている。例えばHEV/EV等のエコカーにおいては、パワーモジュールに対する厳しい使用環境への適用、すなわち冷熱繰り返しで発生する高い応力に対する耐久性と半導体素子から発熱を速やかに系外に発散させる高放熱性の両立、また、内燃機関のCO2排出削減問題では、コモンレール式燃料噴射を行う高効率ディーゼル車の排熱低下に対し、キャビン内の暖房能力低下に対する対応・対策などがある。それらの要求に応えるため当社では、前者に対しては高い機械特性を有する窒化ケイ素基板に、従来のセラミックス基板では困難であった厚銅板をろう付け接合し、高信頼性・高熱伝導性を有する配線基板を開発・実用化した。また、後者に対しては世界に先駆けて非鉛系のPTCヒーター素子を開発し、既存の鉛系PTC素子を装荷したキャビンヒーターの代替を可能にした。本発表では、これら窒化珪素基板の開発内容と非鉛PTC素子の基本特性について紹介する。

(5)水素製造・燃料電池自動車・燃料電池商用発電とセラミックスのコラボレーション
大阪産業大学 工学部 交通機械工学科
教授 山田 修 氏

 水素製造に必要な高温過熱水蒸気発生方法とバイオマス等からの水素製造,その水素を燃料とする燃料電池自動車の開発や公道走行のための保安試験など,水素の製造から消費まで一貫した成果を紹介する。また燃料電池を用いた未来の100万kW級商用発電について,経済性を考慮した実現プランを示す。いずれにしても自然エネルギーを利用した安価な水素製造技術が鍵であり,これを可能にする材料としてセラミックが必要不可欠である。

(6)自動車用次世代蓄電池
トヨタ自動車株式会社 電池研究部
部長 射場 英紀 氏

 ハイブリッド車は、低燃費と走行性能の両立という観点から、車種と台数を増やしている。電気のみで走行できる距離が長いほどCO2の排出低減やエネルギー多様性の効果は大きく、蓄電池のエネルギー容量拡大への期待は大きい。革新型の電池の候補として、全固体電池や金属空気電池などがあげられるが、その実現のためには、高イオン伝導度固体電解質、電極材料の構造制御などのブレイクスルーが必要不可欠である。