■ 第38回ニューセラミックスセミナー 

資源・エネルギー問題とセラミックス -不足するレアメタルへの対応-
  • 日時:2011年(平成23年)2月25日(金)9:45~16:50(交流会 17:00~18:30)
  • 場所:ホテルアウィーナ大阪 4階 金剛(東)
    〒543-0031 大阪市天王寺区石ヶ辻町19番12号
  • 主催:ニューセラミックス懇話会、大阪府技術協会
  • 後援:大阪立産業技術総合研究所
 38回目を迎える今回のセミナーでは、中国からのレアアース(希土類)の輸出が実質的に制限され、俄かに国際的な問題になっているレアメタルの不足を始めとする資源・エネルギー問題とセラミックスとの係わりをテーマに、「資源・エネルギー問題とセラミックス -不足するレアメタルへの対応-」と題して開催します。
 レアメタル(レアアースを含む希少金属)は、「産業のビタミン」と呼ばれ、主原料に少量添加することで材料の光物性、電気・磁気特性、あるいは耐熱性などを大きく向上させることができるため、現在の日本を支える自動車や電機などのハイテク基幹産業に必要不可欠な物質であります。レアメタルの一部は、1983年より経済安全保障の観点から国家備蓄が進められています。このように、国家戦略的にも極めて重要な資源であるレアメタルについて、そのリサイクルや代替材料に関する研究開発が国からの助成事業も含めて活発に行われています。
 セミナーでは、「地球環境問題と元素戦略」について概要の講演後、セラミックスを用いたデバイスとレアメタルに関する4題の講演、( )内に関連するレアメタルを記載;「モーター用永久磁石(ジスプロシウム)」、「リチウムイオン二次電池(リチウムやコバルト)」、「透明酸化物(インジウム)」および「化合物薄膜太陽電池(ガリウムやテルル)」を予定しています。最後に、鉱山ではないレアメタルの源として海水や温泉水中からのウランやスカンジウムの捕集技術について講演して頂きます。セミナーに参加して頂いた皆様には、セラミックス材料に用いられているレアメタルの使用量削減や代替材料の開発動向、課題などについて大変参考になるセミナーであると考えています。


プログラム

(1)地球環境問題を考えた元素戦略と都市鉱山
独立行政法人 物質・材料研究機構
元素戦略センター長 原田 幸明 氏
 物質は我々の生活を豊かにしてきたが、天(気候変動)、地(資源枯渇)、人(生体・環境影響)のリスクを持つ。資源リスクは国民経済だけでなく人類活動さらには地球環境のサステイナビリティも危うくする。このような資源リスクに対して、「減量」「長寿命」「循環」「代替」のアプローチがある。2007年に開始された元素戦略は「減量」「代替」を狙ったものである。都市鉱山開発は「循環」の促進であり、新しい静脈産業チェーンの形成が求められる。

(2)モータ用永久磁石の現状と課題
日立金属株式会社 NEOMAXカンパニー磁性材料研究所
主任研究員 西内 武司 氏
 高性能永久磁石は、モータの小型化、高効率化、高出力化など、いわゆる“エコ社会”に貢献するキーデバイスの一つである。本講演では、モータに使用される永久磁石の種類とその特徴について概説するとともに、ハイブリッドカー(HEV)の駆動モータなどに適用されているNd-Fe-B 系磁石において、特に資源リスクが大きな希土類元素である、ジスプロシウム(Dy)を低減した高耐熱磁石の研究開発動向について紹介する。

(3)レアメタルフリーLiイオン二次電池正極材『リン酸鉄リチウム』の開発
住友大阪セメント株式会社 新規技術研究所
主幹研究員 斉藤 光正 氏
 リチウムイオン電池の大型化によりエネルギー貯蔵などの新たな用途が拡がってきている。その中で最も注目されているのが電気自動車である。大型電池では従来の正極材LiCoO2に代わるレアメタルフリーの正極材が望まれる。住友大阪セメントが実用化したレアメタルフリー正極材LiFePO4の材料設計、合成方法、高性能化、電極特性などについて紹介する。

(4)希少元素を用いない透明酸化物半導体
東京工業大学 フロンティア研究機構&応用セラミックス研究所
教授 細野 秀雄 氏
 透明酸化物半導体(TOS)は過去15年間で大きく進展し、ディスプレイの駆動用バックプレーンとしても実用化されつつある。本公演では、希少元素を用いないTOSについて我々の研究を、その発想とともに紹介する。

(5)希少金属や有害元素を用いない未来型化合物薄膜太陽電池 Cu2ZnSn(S,Se)4 太陽電池の開発の現状
龍谷大学 理工学部 物質化学科
教授 和田 隆博 氏
 変換効率、信頼性、経済性からCdTe及びCu(InGa)Se2(CIGS)薄膜太陽電池が注目を集めている。これらは中国製の太陽電池に対して対抗できる最有力候補と考えられる。しかし、CdTe太陽電池はTeの資源的な制約から数GW/年、CIGS太陽電池はInの制約から数十GW/年で生産量が頭打ちとなると言われている。本セミナ-では、資源的な制約を受けない未来型Cu2ZnSn(S,Se)4 (CZTSSe)化合物薄膜太陽電池の最近の技術動向について紹介する。

(6)海水や温泉水中の金属資源捕集技術
独立行政法人 日本原子力研究開発機構 量子ビーム応用研究部門
環境・産業応用研究開発ユニット長 玉田 正男 氏
 見逃されている金属資源の源として、海水や温泉水中がある。海水や温泉水中に溶けている数〜数中ppb程度の低濃度のウランやスカンジウムなどの金属資源は、放射線グラフト重合法で合成した金属捕集材により、回収が可能となる。放射線グラフト重合法により、不織布基材に捕集する金属イオンに親和性の高い化学構造を導入することにより作製した高選択性の金属捕集材を用いた金属資源を捕集する技術を紹介する。

(7) 交流会