■ 過去の研究会の演題、講師、および講演概要 

バイオ関連セラミックス分科会設立プレ研究会
 30周年を迎えたNCFの新たな活動の一つとして、新年度からNCFの中にバイオ関連セラミックス分科会を発足させることを検討しています。急速な進展・応用を見せつつあるバイオ関連技術ですのでNCF本体で扱うよりは、分科会活動の形態を取ることにより身軽で素早い対応ができることを期待するところです。また、ここで言うバイオ関連とは、生体内で機能するセラミックスだけでなく、広くバイオ手法を模倣して製造されるバイオミメティック・セラミックスも含むものと考えています。
 バイオ関連セラミックス分科会の正式な発足は平成15年度の総会時点(6月)になる予定ですが、これに先立ち1月に下記の通り分科会活動の一端を紹介するためのプレ研究会を開催致します。この研究会を通して、現在NCFの会員でいらっしゃる方々、およびこれからご入会を検討される方々に対して、新しい分科会への参加を広く呼びかけさせて頂きます。
日時:2003年(平成15年)1月15日(水) 14:00〜17:00
場所:たかつガーデン 3F カトレアの間(天王寺区東高津町7-11)
(1) 生体吸収性セラミックスの製造と応用
オリンパス光学工業株式会社 医療システムカンパニー 医療新事業推進部
生体材料グループリーダー 課長 袴塚康治氏

(2)樹脂/セラミックス複合微小球の製造と応用
トライアル株式 代表取締役 菅野 弦氏



バイオ関連セラミックス分科会発足式およびバイオ関連セラミックス分科会第1回研究会
日時:2003年(平成15年)6月20日(金) 13:30〜17:00
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール(阪急ターミナルビル14F:大阪市北区芝田1-1-4 )
(1) 抗菌性ゼオライトを有効成分とした腋臭防止剤の開発
株式会社資生堂 基盤研究本部
マテリアルサイエンス研究センター 素材開発研究所
副主幹研究員 中根 俊彦 氏
 従来の有機系殺菌剤では実現できなかった銀担持ゼオライトの持つ特性(抗菌性能、安全性、安定性)に注目し、ヒトの体臭の改善を目的とした腋臭防止剤の有効成分として10年をかけて開発した「資生堂エージープラスパウダースプレー」の開発内容を苦労話も交えて概説する。

(2) HAp/TCPバイフェーズ人工骨の開発
日本特殊陶業株式会社 総合研究所
研究開発部 主査補 大蔵 常利 氏
 現在骨補填材として販売している生体骨の主成分である水酸アパタイトとリン酸三カルシウムの複合セラミックスからなる人工骨「セラタイト」の開発経緯、製品特徴及び今後の展開について、動物実験や臨床応用を含めて述べる。



バイオ関連セラミックス分科会第2回研究会
 新しい製品の開発には,従来技術から新技術への発想の架け橋が大切です。第2回研究会では、「絹織物の製造から生まれた新事業への発想」、ならびに「チタン素材を利用する新規な医療素材の事業化」に関する話題を紹介頂き、シーズとニーズのマッチングと事業化および産官学連携の重要性を考えてみたいと思います。
日時:2003年(平成15年)9月22日(月) 14:00〜17:00
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール(大阪市北区芝田1-1-4)
(1)絹織物の製造から生まれた新事業:絹セリシンを利用した新商品の事例
京都府織物・機械金属振興センター
山崎 正夫 氏
 最近、新しい事業として「セリシン」を利用したスキンケア商品や、自動車内装材(シート表皮材)の製品が開発されています。セリシンは絹の生産工程 で生糸から除去されるタンパク質で、従来は廃棄処理されていました。京都府織物・機械金属振興センターでは地場産業である絹織物から新しい事業の展開を サポートしています。廃棄物であったセリシンを新しい事業に結びつけるアイデアとその実際について講演を頂きます。

(2)セリシンの更なる機能追及:セリシン表面への水酸アパタイト微粒子の析出
奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科
大槻 主税 氏
 セリシンの更なる活用を意識しながら、セリシンの表面にはアパタイトが析出するという新しい機能発現の事例を紹介していただき、シーズ研究としての新たな可能性を議論していただきます。

(3)新チタン合金を用いた人工股関節の臨床応用とアルカリ加熱・処理による生体活性機能向上技術の実用への挑戦
株式会社神戸製鋼所 医療材料部
松下 富春 氏
 生体用の2種類のバナジウムフリーチタン合金を用いた人工股関節を開発し,臨床応用に至った事例を取上げ、基礎研究から実用に至るまでの諸問題を紹介いただきます。さらに大学で生まれたオリジナル技術(アルカリ加熱・処理技術)を人工股関節に適用した商品開発例を取上げ、シーズとニーズの結びつきや継続的な商品開発の重要性を紹介いただきます。



バイオ関連セラミックス分科会第3回研究会
 生体材料を製品化するためには、生物学的安全性試験や臨床試験など、様々なハードルをクリアしなければなりません。第3回研究会では、つい最近、平成15年6月17日に医療用具製造承認されたばかりの「NEOBONE(R)」について「その特徴と、材料開発および臨床の双方の立場からみた製品化に至るまでの道のり」に関する話題、ならびに現在開発中の骨と同等の強度を有する「アナタース型酸化チタン/ポリエチレン複合体からなる新規人工骨の開発」に関する話題を御紹介頂き、新規開発材の事業化に向けての課題点と、そのために必要な産官学連携の重要性を考えてみたいと思います。(NEOBONEの後の(R)は、登録商標を意味する、Rに丸印の上付きを表記したものです。)
日時:2003年(平成15年)11月13日(木)14:00〜17:00
場所:大阪市立総合生涯学習センター 第2研修室(〒530-0001 大阪市北区梅田1-2-2 大阪駅前第2ビル6階)
(1)多孔質ハイドロキシアパタイト骨補填材 NEOBONE(R)の開発
(注:NEOBONEの後の(R)は、登録商標を意味する、Rに丸印の上付きを表記したものです。以下も同様です。)
東芝セラミックス株式会社 バイオセラミックス事業統括部
井村 浩一 氏
 大阪大学、物質材料研究機構、(株)エム・エム・ティー、東芝セラミックス(株)が共同で開発したNEOBONERは、多孔質ハイドロキシアパタイト骨補填材であり、その多孔体構造に特徴を有している。NEOBONE(R)の多孔体構造は、10μm以上の直径を持つ連通部で互いに連通した無数の気孔と緻密に焼結したハイドロキシアパタイト骨格から成り、優れた骨伝導能と適度な初期強度を兼ね備えている。NEOBONE(R)の開発コンセプトや特徴、製造方法などを紹介する。最近、新しい事業として「セリシン」を利用したスキンケア商品や、自動車内装材(シート表皮材)の製品が開発されています。セリシンは絹の生産工程で生糸から除去されるタンパク質で、従来は廃棄処理されていました。京都府織物・機械金属振興センターでは地場産業である絹織物から新しい事業の展開を サポートしています。廃棄物であったセリシンを新しい事業に結びつけるアイデアとその実際について講演を頂きます。

(2)「NEOBONE」の臨床使用経験と骨再生への応用
大阪大学大学院 医学系研究科 器官制御外科学
名井 陽 氏
 新規の合成多孔体ハイドロキシアパタイトセラミックス(NEOBONE)は高い気孔率、均一な気孔構造、大きな気孔間連通孔による連通気孔構造、臨床使用可能な強度を特徴とし、深部の気孔まで骨を伝導する。臨床的にも骨欠損補填材として優れた骨欠損修復能を示す。また、骨髄由来培養間葉系細胞や骨形成因子を利用した骨再生の動物実験でも足場材として有用であり、今後、骨の再生医療の実用化に向けて有用な材料である。

(3)ナノ酸化チタン/ポリエチレン複合体からなる骨修復材料の開発
(財)ファインセラミックスセンター 材料技術研究所
高玉 博朗 氏
 既存の人工骨の多くは、機械的性質が骨のそれと大きく異なり、骨吸収を招く問題点を有しているため、天然骨に類似した特性を有する人工骨の開発が望まれている。そこで、高密度ポリエチレンと骨結合能を有するナノサイズのアナタース型酸化チタンを用いて複合体の作製を試みた。その結果、ヒトの皮質骨に類似した力学的特性を示し、擬似体液中でアパタイトを形成する人工骨の作製に世界で初めて成功した。本複合体は、荷重部も含めて様々な部位への応用が可能であると期待される。



バイオ関連セラミックス分科会第4回研究会
「医療分野へのハイドロキシアパタイトの応用展開」
 ハイドロキシアパタイトが生体材料として実用化されて20年以上になりますが骨伝導能を有する材料として広く医療分野にて応用されています。第4回研究会では、「ハイドロキシアパタイトをコーティング材料として人工関節に応用した技術」と「有機材料であるコラーゲンと無機材料であるハイドロキシアパタイトを複合化した生体置換型人工骨の製造技術」に関する話題をご紹介頂き、材料の商品への応用展開の実際と製造技術の重要性を考えてみたいと思います。
日時:2004年(平成16年)2月19日(木)14:00〜17:00
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール 阪急ターミナルビル14F
(大阪市北区芝田1-1-4)
(1)セメントレス人工関節への挑戦 −セラミックコーティング技術の開発−
京セラ株式会社 バイオセラム研究部
野田 岩男 氏
 当社では1980年よりセラミックコーティング技術の開発を始め、1985年には溶射法によるハイドロキシアパタイト(HA)コーティング技術を確立し、1995年よりHAコーティングチタン合金製人工股関節を市場投入しました。さらに現在、ジルコニア・セラミックへのHAコーティング技術を開発し、セメントレス人工膝関節への応用を目指しています。今回は、当社のHAコーティング技術の開発の経緯、各種特性及び今後の方向性についてお話したいと思います。

(2)アパタイトコラーゲン 生体置換型有機無機複合人工骨の製造技術
ペンタックス株式会社 ライフケア事業本部 ニューセラミックス事業部
庄司 大助 氏
 「生体置換型有機無機複合人工骨」は、ヒトの歯や骨の無機質の主成分で生体材料に用いられる「ハイドロキシアパタイト結晶」とコラーゲン繊維で構成され、骨に類似した構造・組成となっています。骨の欠損部にこの人工骨を移植すると、骨芽細胞による人工骨周囲・内部での骨形成と破骨細胞による人工骨の吸収が同時に起こり、最終的には人工骨が新たに形成された骨と置き換わる(骨のリモデリング)ことが確認されています。人工骨自体が新生骨を形成しながら最終的には患者自身の骨と完全に置き換わるため、自家骨移植と同様な性能が期待されます。また、この人工骨は多孔体またはスポンジ状で弾力性があり、加工が容易で操作性に優れています。また、合成条件や加工・処理条件を制御することにより、使用目的に応じて強度、柔軟性、気孔の大きさなどの特性を最適化することが出来ます。



バイオ関連セラミックス分科会第5回研究会
「歯科材料に要求される特性の理解と新製品開発へのアプローチ」
 セラミックスは歯科材料としても広く利用されており、セラミックスの優れた特性を活かして新製品を開拓するには、歯科分野の材料に要求される性能を理解することが重要です。第5回研究会では、歯科用インプラントと歯科用コンポジットレジンの開発について、要求性能と実用化へのアプローチについてご紹介いただき、歯科材料としての応用展開と製造技術について考えます。
日時:2004年(平成16年)4月23日(金)14:00〜17:00
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール 阪急ターミナルビル14F
(大阪市北区芝田1-1-4)
(1)歯科用インプラント
株式会社ジーシー
小島 憲男 氏
 失った歯にインプラントを用いて口腔機能を回復する試みは、長い歴史の中で幾たびか重ねられてきたが、ブローネマルク教授による「骨結合」現象の発見とその後の臨床確認により、今日の歯科インプラント治療の基礎が確立され、歯科補綴治療の一選択肢として大きな位置を占めるに至った。今回は、歯科用インプラントに関する全般的な理解、要求される諸特性と製品への反映、現在の傾向等について紹介します。

(2)歯科材料とセラミックスとの関わり −コンポジットレジンを中心として−
クラレメディカル株式会社
浅田 雅之 氏
 歯科用コンポジットレジンには、フィラーとして種々の無機物質が使用されている。初期には天然物質が主であったが、現在は化学的に設計され、合成されたガラスやセラミックスが用いられている。天然歯の持つ色調や強度を再現するためには、これらのフィラーの性質と、マトリックスとなる有機物の性質とを調和させることが必要である。過去に開発されてきた各種のフィラー用組成物を振り返ることで要求特性を明らかにしながら、最近の状況までを概説します。



バイオ関連セラミックス分科会第6回研究会
「清潔な生活環境をつくるセラミックス−抗菌防かび等−」
 江戸時代、外国人がその清潔さに驚いたように、今日でも我が国の街々は世界で最も清潔であると言われています。また身の回りでも、きれい好きという国民性を反映して、清潔に関する様々な商品があふれ、大きな市場となりつつあります。身の回りの不潔は菌やかびのためですが、それを抑えることのでき、安全なセラミックスが近年、注目を集めています。当日は、光触媒、抗菌性セラミックス開発の第一人者から、最新の技術動向をご紹介頂きます。
日時:2004年(平成16年)6月30日(水)14:00〜17:00
岩谷産業株式会社 大阪本社 9階 C会議室
(〒541-0053 大阪市中央区本町3丁目4番8号)
(1)高機能酸化チタン光触媒の開発とその応用
独立行政法人産業技術総合研究所 中部センター
垰田 博史 氏
 酸化チタン光触媒は、それ自身安全で、有毒な薬品などを使用せずに光を照射するだけで有害化学物質を分解・無害化することができる。現在、実用化・製品化が急速に進んでおり、光触媒製品の市場規模は2005年に1兆円を超えると予想されている。本講演では、これまで行ってきた高機能酸化チタン光触媒の開発と水処理や脱臭、大気浄化、抗菌防かび、防汚、鮮度保持、ダイオキシン類の分解除去などの応用について技術指導や特許実施などによって開発された製品例を交えながら紹介する。

(2)Ag+およびAgゼオライトの抗菌作用機構に関する考察
株式会社シナネンゼオミック
内田 眞志 氏
 Ag+の抗菌性は古くから多くの研究者により試験され、その有用性が確認されている。しかし、Ag+が細菌に対してどのように働いて抗菌性を発揮するのか明確にされていない。今回、Ag+と各種アミノ酸の反応を通して、Ag+の抗菌作用機構を考察してみる。次に、Ag+をイオン交換した無機抗菌剤では、なぜゼオライトが担体として適しているかをまとめた。



バイオ関連セラミックス分科会第7回研究会(ニューセラミックス懇話会第163回研究会)
「日本の医療産業と医用セラミックスの国際標準化」
 超高齢化社会の到来と共に21世紀の医療産業は、市場の急成長が予想されています。医用セラミックスの基礎研究を臨床使用にまで到達させるには、安全性試験や治験制度がどのような考えと政策によって成り立っているかを理解することが重要です。さらに日本の持つ技術を世界に拡大するには、それらの試験法や制度が国際的に標準化されていることが必要になっています。本研究会では、日本の医療産業を制度や試験法に関する政策面から考え、さらに国際戦略に必要となる標準化に関する最新の動向について取り上げます。それらの課題に最前線で取り組まれている先生方からご講演をいただき、医用セラミックスと日本の産業、国際標準化の展望について考えます。

日時:2004年(平成16年)10月13日(水)14:00〜17:00
岩谷産業株式会社 大阪本社 9階 C会議室
(〒541-0053 大阪市中央区本町3丁目4番8号)
(1)テクノロジーアセスメントによる医療機器開発と産業育成
財団法人医療機器センター
箭内 博行 氏
 テクノロジーアセスメントは医療技術を適切に迅速に開発するための重要な手段である。多品種少量生産といった産業体系から技術の価値を評価して市場化の早期実現を図ることは、産業にとって開発スケジュールの見直しや資金確保の総合的な経営戦略等に役立つものである。評価は、開発の企画段階から治験段階、承認段階、臨床使用段階、発展段階で行い、項目としては競合製品評価、有効性評価、患者QOL評価、市場性評価、リスク管理評価などを定量的に具体的に行う。これにより、企業の開発リスクを減らし、機器開発の効率化及び多様な技術移転の加速化に貢献出来るものと考えている。

(2)医用セラミックスにおける国際標準化の動向
京都大学 再生医科学研究所
堤 定美 氏
 国際標準化機構/外科用インプラント専門部会(ISO/TC150)への国内対策委員会は、事務局を日本ファインセラミック協会(JFCA)に置くことから分かるように、バイオセラミックスの標準化に大きな関心を持っている。現在、ISO/TC150では「アパタイトの化学分析と結晶性と相純度特性」、「材料表面のアパタイト形成能を評価する試験法」、「イットリア安定化ジルコニア(Y-TZP)」などバイオセラミックスの標準化に向けて活動を行っている。JFCA協会規格の国際標準化にも積極的に提案して行く予定であり、関係諸兄のご支援を得たい。




バイオ関連セラミックス分科会第8回研究会
「臨床から望まれている次世代バイオマテリアル」
 近年、バイオマテリアルの技術革新が進み、それらを用いた治療は良好な臨床成績をおさめております。しかしながら、超高齢化社会到来の中、生活の質(QOL)向上のためには、さらなるバイオマテリアルの長寿命化・高機能化が求められており、未だ課題が多数残されているのも現状です。そこで、今回の研究会では、整形外科領域と歯科領域において活躍されております先生方に、硬組織の治療に用いられているバイオマテリアルの問題点ならびに、次世代に望まれるバイオマテリアルについてご講演頂きます。

日時:2005年(平成17年)1月28日(金)14:00〜17:00
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール 阪急ターミナルビル14F
(大阪市北区芝田1-1-4)
(1)究極のバイオマテリアル
大阪市立大学大学院 医学研究科 臨床医学専攻 間隔運動機能医学大講座
助教授 小池 達也 氏
 これまで実に多くのバイオマテリアルが開発されてきた。しかし、万人に満足を与えるマテリアルはまだ開発されていない。そこで、それらのマテリアルを材質(物理的特性)・適合組織(生物学的特性)・バイオアクティビティの面から分類し、歴史的背景も含めて問題点を抽出したい。その上で、我々臨床医が夢見る「究極のバイオマテリアル」の条件を示したい。

(2)歯科領域から求められているバイオマテリアル
広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 先端歯科補綴学研究室
教授 赤川 安正 氏
 急速に高齢社会が進む中で,生き生きとした健康長寿には「咬んで食べる」ことが極めて重要であると認識されています。
 そのためには,健全な歯と口腔機能が必要ですが,現実には歯周病による歯槽骨の吸収や歯の喪失が進んでおり,60代後半の方々ではわずか16本しか歯は残っておらず,この状態では「咬んで食べる」機能は大きく損われています。
 この解決のため,歯槽骨の再生や義歯やインプラントの治療の重要性はさらに増加しており,これらのニーズに合うバイオマテリアルの進歩が強く望まれています。
 本講演では,このような背景の中で,歯科領域から求められているバイオマテリアルについて述べることにします。



バイオ関連セラミックス分科会第9回研究会
「生体吸収性材料」
 第9回研究会は、生体吸収性材料をテーマとします。バイオマテリアルとして、埋入、移植後にその材料の機能を果たした後、または機能を果たしながら吸収されていくことは、材料を取り出すための再手術が不要であること、異物を体内に残さないという点で理想的です。今回は、その中から骨接合材と骨再生への応用例として、吸収性ポリマーとセラミックスの複合材料、多孔質吸収性セラミックスについてのお話を通して、吸収性に加えて材料に求められる性質、機能、さらなる応用の動向などを講演頂きます。

日時:2005年(平成17年)4月27日(水)14:00〜17:00
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール 阪急ターミナルビル14F
(大阪市北区芝田1-1-4)
(1)バイオセラミックスと吸収性ポリマーから成る複合材料としての骨接合材
タキロン株式会社 メデカル事業部
敷波 保夫 氏
 生体内で分解吸収するPolymerのみから成る骨接合材が開発されてから、早くも約20年以上が経過した。金属製のそれとは異なり、治癒後に抜釘が不必要な事が患者の苦痛を軽減するという利点のために、現在までに多くの有効な部位に使用されて、良好な臨床実績を残している。しかし、機械強度の不足、不完全な骨置換 X線に写らない、などの欠点を改良することが必要である。我々はこれらを満たす該複合材料からなる高強度骨接合材を世界に先駆けて開発して臨床の場に提供し始めたので、概説する。

(2)骨再生における吸収性セラミックスβ-TCP
オリンパスバイオマテリアル株式会社 開発部
入江 洋之 氏
 β-リン酸三カルシウム(β-TCP)は、優れた骨伝導能と生体吸収性を示し、骨組織の中では経時的に自家骨に置換していく特徴を有している。近年、再生医療の検討が盛んになり、骨組織においても担体、成長因子、細胞の複合による骨再生の試みが行われている。β-TCPの骨再生における役割と担体としての条件、β-TCPと成長因子や細胞との組合せによる骨再生の現在の状況について概説する。



バイオ関連セラミックス分科会第10回研究会
「在宅医療を支える技術」
 近年、医療費の増加や治療スタイルの多様化に伴い、病院における医療だけでなく在宅医療の充実が求められています。在宅医療におけるQOLの向上を実現し、高い治療効果を達成するためには、人と医療機器を結びつけるインタフェースの高機能化が重要な鍵となります。本研究会では、在宅医療の充実に直結する基盤技術に関して最先端の研究を進めておられる先生方にご講演頂き、福祉のさらなる向上に工学がどのように貢献できるかを考えます。

日時:2005年(平成17年)7月20日(水)14:00〜17:00
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール 阪急ターミナルビル14F
(大阪市北区芝田1-1-4)
(1)音声認識技術を起点とした実用化研究とその事業化
名古屋工業大学 産業戦略工学専攻
梅崎 太造 氏
 まず、1990年頃からスタートした産学連携による実用化研究(特殊教育・個人認証セキリュティ)が音声認識技術より派生したことについて述べる。
次に、前記技術に画像処理・人工神経回路網等の技術が加わることにより、研究テーマが「ITS・ロボット・医療・FA」分野に拡大して来たことをベンチャー起業の流れに合わせて紹介する。

(2)在宅酸素療法と新製品開発への取組み
日本特殊陶業株式会社
八木 秀明 氏
 日本特殊陶業(株)では1999年より在宅酸素療法に用いる医療機器である酸素濃縮器及び呼吸同調器を製造・販売しています。本講演では、在宅酸素療法の簡単な説明を行い、医療用酸素濃縮器の新製品開発について当社の取組み状況を報告するとともに、その他の関連製品の紹介を行います。



バイオ関連セラミックス分科会第11回研究会(ニューセラミックス懇話会第169回研究会)
「X線CT等を用いた骨の評価および診断技術の開発」
 「ヒトの体内を少し覗いてみたい」。そんな素朴な好奇心を誰しも一度は持ったことがあるかと思います。ましてや医療現場では、これは診断のために必須の要求です。しかし、ヒトの場合には、検査のためとはいえ、いたずらにメスで身体を切り開くことは許されません。そのため、非侵襲での観察・診断が必要となり、それを可能にするのが「X線CT」です。特に、近年のマイクロX線CTは、技術進展により、非破壊的に3次元的に高分解能でヒトの体内を観察することができるようになってきました。そのため、最近では既に骨の診断等に利用されており、非常に有望な診断装置の一つとなってきております。本研究会では、そのX線CTを用いた骨の評価および診断技術の動向について御紹介頂きます。

日時:2005年(平成17年)11月18日(金)14:00〜17:00
岩谷産業株式会社 大阪本社 9階 会議室
(〒541-0053 大阪市中央区本町3丁目4番8号)
(1)マイクロX線CTを用いた人工骨の評価について
財団法人ファインセラミックスセンター 材料技術研究所
池田 泰 氏
 マイクロX線CT(以下、マイクロCT)は、近年、骨の評価や診断に普及されつつある。これはマイクロCTが高分解能な断層像を得ることができ、医療用に用いられるX線CTでは得られない詳細な骨構造を評価できるためである。そして、3次元の評価解析がパソコン等で解析できるソフトウエアが開発されてきたことによる。これらの結果、整形外科の分野において骨の構造解析が、骨粗鬆診断等を評価する上で重要と位置づけされている。
今回は、マイクロCTの撮影原理と3次元データによる解析法を説明し、3次元解析した例として人工骨の構造解析や、生体での動物実験による経時変化の評価等を紹介する。また、最近のマイクロCT装置の現状や今後の課題等を紹介する。

(2)CTデータに基づく骨質と骨力学特性の評価の試み
長崎大学医学部 放射線医学教室
助教授 伊東 昌子 氏
 マイクロCTの出現により、骨梁構造は非破壊的に三次元的に評価できるようになった。その情報は、種々の骨病態の解明や骨粗鬆症治療の薬効評価に用いられている。さらに骨梁構造が骨力学特性に強く関与していることが明らかにされてきたことで、骨脆弱性を評価する手段として用いられ、また骨梁構造の三次元データを用いて有限要素解析を適用することも行われている。CTによる骨解析は、より正確に骨質(構造と材料特性)を評価する方向と、臨床への適用の2つの方向へ研究が進んでいる。



バイオ関連セラミックス分科会第12回研究会
「整形外科・歯科におけるコンピューター援用技術と臨床応用」
 高齢者の増加にしたがって安心できる治療が求められており、バイオマテリアルの機能向上にあわせて手術の正確さと患者の負担軽減(低侵襲)が追求されています。従来の経験を主にした手術に加えてCT画像をベースにした3次元像を画面上に構築し、術前計画の精度を高めたり、手術精度を高めることが実現しています。今回は整形外科、歯科領域におけるコンピューター援用技術について現状をご紹介していただきます。

日時:2006年(平成18年)2月22日(水)14:00〜17:00
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール 阪急ターミナルビル14F
(大阪市北区芝田1-1-4)
(1)人工股関節置換術のロボット支援手術の実際と臨床成績
医療法人偕行会 名古屋共立病院 リウマチ・人工関節センター長
岩田 久 氏
 ROBODOC支援Total Hip Arthroplasty (R-THA)をはじめて4年半経過、その方法をVideoで示すと共に臨床経過について述べる。150例(二次性変形性股関節症)終了。手術前日に、CT撮影し、ORTHODOCにinputし術前設計をする。大腿骨近位の3次元的fittingを重視し、主として 、Zimmer, Stryker 製stemを選択した。術後1週で1/2荷重、2週で片松葉杖歩行、6週で杖を除去した。
手術時間は約120分、出血量は約300mlだった。全例術後経過は良好で、重大な合併症も無かった。ROBODOCはstem porous coating部はundersize、non-porous部はoversizeに正確にmillingする。Raspingによるmicro-fractureは無く、stem近位部での良好な初期固定性が得られるためthigh painがなく、osteo-integrationも促進された。

(2)3Dテンプレートによる人工関節の術前計画とナビゲーションシステム
日本メディカルマテリアル株式会社 研究開発統括部
山梨 渉 氏
 現在、インプラントメーカーは単純X線写真による術前計画のツールとして適当な拡大率のインプラント外形線をクリアシートに印刷したテンプレートを配布している。一方、CTを用いた3次元的な術前計画を行うためのツールとなると高価な専用システムの一部として提供されているものが大部分である。そこで汎用PC上でCTによる術前計画が可能なソフトウェアを開発したので、最近の商用ナビゲーションシステムと共に紹介する。

(3)3次元画像とPR造形を応用した歯科手術シミュレーションと手術支援
大阪大学大学院 歯学研究科
荘村 泰治 氏
 歯科においても日常的に手術が行われているが、狭い口腔内で行われるこれらの手術の技術習得は容易ではなくコンピュータ技術による支援システムの開発が切望されている。そこで我々はバーチャルリアリティの中でも力を感じることのできるハプティックデバイスとCAD/CAM技術を用い,歯を失った顎骨に人口の歯根を埋入するインプラント手術や、重度な顎変形症の患者に対する顎切り手術などの支援システムの開発を行っている。それらにつき、その臨床応用も含め報告する。