■ 2018年4月~2019年3月の研究会実施記録 

第231回研究会(センシング技術応用研究会と合同開催)
「センシングデバイスの新展開」
今回の研究会は、センシング技術応用研究会(SSTJ)とニューセラミックス懇話会(NCF)との共催で行います。この研究会では、圧電セラミックスの特殊な環境で駆動する圧電アクチュエータへの応用およびバイオセンシング研究の健康、医療あるいは環境モニタリングへの応用に関するご講演をして頂きます。
日時:2018年(平成30年)4月20日(金)13:25~16:35
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(大阪市北区中之島1丁目1番27号)
(1)圧電アクチュエータの特殊環境への展開
岡山大学 大学院自然科学研究科 産業創成工学専攻
教授 神田 岳文 氏
 主として圧電セラミックスによる超音波領域の振動を利用した小型のアクチュエータを特殊環境での駆動に応用する研究を行っている。測定器内でのサンプル操作への応用を目的とした強磁場あるいは極低温環境で使用可能な圧電アクチュエータの試作事例、マイクロリアクタを使用した化学プロセスなどの流体システムへの圧電アクチュエータ技術の適用事例を中心に紹介する。

(2)バイオセンシング研究の展開
大阪大学 大学院工学研究科 精密科学・応用物理学専攻
教授 民谷 栄一 氏
 生体の優れた分子認識機構を活用したバイオセンシングでは、近年のナノ材料、ナノデバイス、フォトニクス、マイクロ流体デバイスなどの技術との融合により、大きな展開がなされている。通常の分析ツールからIoTデバイスへの展開を目指す研究も盛んになっている。こうしたバイオセンシングでは、健康医療、食の安全、環境モニタリングへの応用が進んでおり、これらの動向について紹介する。

交流会(17:00~18:30)



バイオ関連セラミックス分科会第57回研究会
「マテリアルイノベーションによる生体センシングの最前線」
 本格的なIoT時代を迎える中、我々人間に関する様々な情報(データ)についても多角的かつ効率的に収集し、それを最大限に活用しようとする動きが加速しつつあります。これまでも生体情報センシングは多様な医療機器として広く実用化されていますが、今日では予防医療やヘルスケアの観点から簡便かつ高精度に情報を収集・分析して我々の健康や安全に役立てることが期待されています。本研究会では「マテリアルイノベーションによる生体センシングの最前線」を主題とし、お二人の先生から、これからの生体センシング・バイタルセンシングテクノロジーについてご講演をいただきます。

日時:2018年(平成30年)5月18日(金)13:50~16:50
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール
(大阪市北区芝田1-1-4 阪急ターミナルビル14F)
(1)ヘルスケア・医療分野での応用を目指したガスセンサ技術
国立研究開発法人産業技術総合所 無機能材料研究部門 電子セラミックスグループ
研究グループ長 申 ウソク 氏
 最近のガスセンサは、材料の高度化、マイクロメカニカルエレクトロシステム (MEMS) 技術に基づくマイクロ化などにより、その性能が大幅に改善され、用途が拡大している。そのような状況の中で「ヘルスケア・医療分野」で期待されているガスセンサの最新の研究として、我々の研究グループの成果と、ガスセンサの開発動向や応用手法および将来展望を紹介する。

(2)シート型IoTセンサシステムの研究開発と社会実装 ~脳波センサを実例に~
大阪学産業科研究所 先進電子デバイス研究分野
教授 関谷 毅 氏
 本紹介では、急速な研究開発が進むIoT・AI・BIG DATAの社会背景を概観し、これらの最新の融合技術から見えてくる新しいセンサシステムの研究開発と社会実装を実例とともに紹介する。特に“超微小な信号をノイズ環境から取り出す新規材料・デバイスの研究開発”とそれを使いこなす“サイバー空間におけるアルゴリズム”の重要性について紹介する予定である。関谷らのグループでは、フレキシブル薄膜トランジスタを用いたフレキシブル、ストレッチャブルデバイスの開発を行ってきた。最近では、この技術にSi-LSI技術(超低消費電力ワイヤレス通信技術、アナログ・デジタル変換技術)、薄膜電池技術、情報処理技術を融合させることで、デバイス開発からシステム開発へと展開し、これを用いた新しいビジネスモデルを提案している。



第232回研究会
「セラミックスの3次元造形技術」
 現在、様々なタイプの3次元(3D)造形装置が開発され、普及が進んでいます。セラミックスを材料に用いたものでは、セラミックスフィルターが開発され、また、電気炉を用いずにレーザーでセラミックスを焼成し、直接造形できる技術についての研究が進められています。今回の研究会では、国立研究開発法人に所属されている先生方から3次元造形の国家プロジェクトによる進展と産業に果たしている役割等について講演して頂きます。

日時:2018年(平成30年)6月5日(火)13:45~16:45
場所:大阪産業創造館 6階 会議室 E
(大阪市中央区本町1-4-5)
(1)セラミックスの局所加熱接合と3D造形
国立研究開発法人産業技術総合研究所 構造材料研究部門
近藤 直樹 氏
 講演者は、経済産業省の「革新的省エネセラミックス製造技術開発」で局所加熱接合技術、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)/革新的設計生産技術の「高付加価値セラミックス造形技術の開発」で3D粉末積層造形技術の開発に携わってきた。本講演では、これら2つの国プロで得た成果について紹介する。

(2)鋳造品の量産適用を目指したバインダジェット式高速砂型積層造形装置の開発
国立研究開発法人産業技術総合研究所 製造技術研究部門
岡根 利光 氏
 3Dプリンタ技術について、従来の試作等のRP用途から、AMとして生産技術への展開が図られている。生産性やコストに優れた手法であることから、バインダジェット式3Dプリンタで鋳造用の鋳型を造形して活用されている。その高速性を生かして、自動車・産業機械等の量産鋳造品にも適用可能な高速造形装置とそれに適用可能な材料開発について、国プロとして技術研究組合TRAFAMにおいて進められた。その成果を報告する。



第233回研究会
「セラミックスと異種素材との接合技術」
 セラミックスと金属等の異種素材を接合する技術は、様々な産業分野で重要であり、古くから研究されてきた。無機ろう付けや金属ろう付け等を用いる中間材法あるいは固相接合や融接等の直接的接合法が広く用いられている。本研究会では、接合技術の歴史や課題および応用時の設計指針、セラミックスと金属の接合製品に使われているメタライズ技術、そして、室温下でサファイアと異種材料を接合できる常温接合技術について講演して頂きます。

日時:2018年(平成30年)8月31日(金)13:50~16:45
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(大阪市中央区本町1-4-5)
(1)セラミックスと金属の接合
大阪大学 産業科学研究所
所長・教授 菅沼 克昭 氏
 付加価値の高いセラミックスの実用に於いて、金属との接合は欠かせない技術の一つである。接合技術の歴史は長く、その中で培われてきた多くの知識が今日ある。一方、接合の難しさも良く理解されており、特に、熱応力の課題は、幾つかのアプローチは開発されているものの、万能な方法は存在しない。実用を考える製品ごとに注意深い設計が必要とされる。また、セラミックスの用途が多岐にわたり、一層の厳しい環境で使われると、接合に対する要求は更に過酷なものになる。

(2)セラミックス・異素材の気密接合技術のご紹介
カワソーテクセル株式会社 CMB事業主幹・部長
鎌田 幸次 氏
 セラミックスと金属を気密接合するメタライズ技術(融解チタンメタライズ法)とろう付技術を用いた高機能透過窓・電流導入端子等の接合製品、ろう付技術を用いた半導体素子やUV-LEDなどの冷却で幅広く使われている水冷ヒートシンクについて説明します。UV-LED用の水冷ヒートシンクについては、照射出力のアップに伴い、求められる冷却の均一性や水路による冷却性能の差異について説明します。

(3)異種素材の貼り合わせが可能な常温接合技術のご紹介
株式会社ムサシノエンジニアリング 営業部 営業課
堀越 洋助 氏
 弊社では室温下で異素材を貼り合わせする「常温接合技術」の開発に取り組んでおります。既に半導体・MEMSなど様々な分野でこの技術を利用した常温接合装置の量産機も販売実績がございます。素材接合時の基板への熱ダメージに悩んでいる方、新しい素材開発に挑戦したい方、異種金属同士の接合・サファイアと異種材料・金属の接合等に御興味をお持ちの方に、常温接合の魅力をより皆様に知ってもらいたく今回講演させて頂きます。



第234回研究会、バイオ関連セラミックス分科会第58回研究会
「セルロースナノファイバ研究の最新動向 と未来展望」
 セルロースナノファイバ(CNF)は鋼鉄の約5分の1の重量、5倍以上の強度、さらに低熱膨張性を併せ持つ植物由来の繊維材料であり、環境負荷の少ない持続・循環型生物資源として、近年多種多様な産業分野で注目を集めています。本研究会では、CNF研究開発の第一線でご活躍されている講師の先生を産・学からお招きし、CNF研究開発の最新動向や事業化の現況、ならびにバイオテクノロジーやバイオマテリアル等、バイオ関連応用への未来展望についてご講演いただきます。

日時:2018年(平成30年)10月19日(金)13:50~16:50
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール
(大阪市北区芝田1-1-4 阪急ターミナルビル14F)
(1)セルロースナノファイバー -木の国ニッポンの資源-
京都大学 生存圏研究所
教授 矢野 浩之 氏
 セルロースナノファイバー(CNF)は、木材等をナノオーダーにまで微細化することで得られる産業資材です。軽量、高強度、高比表面積などの優れた特徴があり、自動車や電子機器、医療、化粧品、食品など幅広い用途に向けた取り組みが世界中で活発化しています。特に、森林資源が豊富な我が国では、産官学の様々な分野から注目が集まっています。本講演では日本の資源を活かした未来素材研究の現状と未来について述べます。

(2)セルロースナノファイバー(CNF)の用途開発事例について
大王製紙株式会社 生産本部 新素材研究開発室 執行役員
室長 玉城 道彦 氏
 地球温環境等の点からも、植物由来のCNFは、様々な特異的性質を有することから、近年非常に関心が高まっている。大王製紙では、紙パルプ用途だけでなく、各分野でCNFを活用し事業化することを目指して、製造技術ならびに用途開発を進めている。ユーザーや研究機関と共同で開発を進めており、用途開発の事例として、CNF配合トイレクリーナー、CNF複合樹脂,多孔質セラミック用バインダー等の開発について紹介する。



第235回特別研究会
「技術・情報の交流と創造展」
 ニューセラミックス懇話会では、毎年12月に行われる研究会を「特別研究会」として開催しています。「特別研究会」は、通常の「研究会」とは開催趣旨が異なり、ニューセラミックス懇話会の会員の皆様から自社製品、技術、研究等の情報を積極的にアピールして頂く情報発信の場、また、会員相互の情報交換を密にする場にしたいと考えています。会員の皆様に有意義な内容になるように企画しています。様々な分野や価値観をもった人々と交流することにより、新たなビジネスチャンスが生まれることを期待しています。
 今回の「特別研究会」では、大学や企業で長年にわたり新規材料の研究開発や事業化を行ってこられました先生方から、これからの産官学連携活動を基にした材料技術開発、および材料探索からデバイス開発までの過程について講演して頂きます。

日時:2018年(平成30年)12月14日(金)13:45~18:30
場所:たかつガーデン 3階カトレア(基調講演)、2階コスモス(ポスター発表、交流会)
(大阪市天王寺区東高津町7-11)
(1)世界の変化を先取りする研究開発を目指したい!
長岡技術科学大学名誉教授・前学長/大阪大学名誉教授・招聘教授
新原 晧一 氏
 我が国の未来を切り拓く技術者や研究者には、自分が理想とする未来社会を思い描き、それを支える為の先取り型コンセプトの構築とチャレンジングな研究開発が強く望まれます。本講演では、約50年間で経験した多岐にわたる国内外での産学官連携活動を基にして、未来社会が必要とする材料技術開発とその開発への取り組み姿勢に関して意見交換し、未来を創造する役割を担う皆様へのメッセージとしたいと考えています。

(2)相変化光ディスクDVD,Blu-rayの技術
元パナソニック株式会社(本社技術部門グループ・マネージャー)/元京都大学院工学研究科 特定教授
山田 昇 氏
 「DVDやBlu-ray等の相変化光ディスクは、研究開発、規格化作業ともに日本企業が主導し世界に広めた技術です。製品化までには、コア技術である相変化材料をはじめとし、誘電体材料、金属材料、熱的・光学的な層構造の最適化等、数多くの課題が提起され解決されてきました。当日は、材料開発からデバイス設計まで、外からは見えないこれらの技術成果について紹介し、光ディスクへの理解を深めていただこうと思います。

(3)産・学・官 会員によるポスター・製品発表
(4)会員交流会



バイオ関連セラミックス分科会第59回研究会
「創傷治癒材料の最前線」
 超高齢化社会を迎えた我が国において、寝たきりの患者の数は急激に増えています。患者が長期にわたり同じ体勢で寝たきり等になった場合、褥瘡が発生し、患者のQOLを著しく低下させます。また、現在、糖尿病患者の数も急激に増加しています。糖尿病の合併症として皮膚潰瘍があります。このような褥瘡や皮膚潰瘍の治療に人工皮膚(創傷被覆材)が用いられることがあります。当日は、創傷治癒機序を基に設計された皮膚再生医療製品および創傷治療の現状についてご講演をいただきます。

日時:2019年(平成31年)1月31日(木)13:50~16:50
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール
(大阪市北区芝田1-1-4 阪急ターミナルビル14F)
(1)創傷治癒と皮膚再生医療
有限会社テクノサージ 皮膚再生医療研究開発センター 取締役
北里大学 医療衛生学部 名誉教授
黒柳 能光 氏
 再生医療の基盤となる組織工学の主成分は、細胞と細胞成長因子と生体材料である。培養皮膚代替物は米国で1980年代に製品化された。しかし、最先端医療を通常の医療として普及させることは容易ではない。難治性皮膚潰瘍や熱傷の治癒を阻害する原因は感染と細胞成長因子の欠如である。創傷治癒を促進するために各種の細胞成長因子製剤も製品化されている。創傷治癒の機序を製品設計に導入した皮膚再生医療製品について解説する。

(2)創傷治癒と再生医療
関西医科大学 形成外科学講座 准教授 森本 尚樹 氏
 傷ができたときには消毒して乾かすことが常識でしたが、現在は反対に消毒はできるだけしないで湿潤環境を保つことが基本とされます。傷が乾燥すると感染は減りますが、細胞が損傷され治癒が悪くなります。一方、傷が湿潤していると、感染しやすくなりますが創傷治癒機転は早くなります。こうした相反する状況のなかで現在行われている創傷治療の現状を、皮膚の再生医療も交えて紹介します。