■ 2017年4月~2018年3月の研究会実施記録 

第226回研究会(センシング技術応用研究会と合同開催)
「進むバイオ・匂いセンサ開発の最前線」

日時:2017年(平成29年)4月25日(火)13:20~16:40
場所:大阪府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター) 4階 大会議室(1)
(大阪市中央区大手前1丁目3番49号)
(1)カーボン材料を利用した高感度バイオセンサの開発について
大阪大学 産業科学研究所
教授 松本 和彦 氏
 チャネルに「糖鎖で修飾したグラフェン」を用いた電界効果トランジスタで、ウイルスを選択的高感度に電気的に検出する手法について述べる。また同様の手法で、薬剤効果も電気的に評価できる事を示す。

(2)嗅覚IoTセンサの標準化に向けたナノメカニカルセンサシステムの総合的研究開発
特定国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS) 
国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)
グループリーダー 吉川 元起 氏
 独自に開発したナノメカニカルセンサ(MSS)を軸に、ハード・ソフトの最先端技術を産学官連携によって統合することにより、五感の中で最もデバイス化が困難な嗅覚のセンサシステム/サービスの実現とその標準化を目指して取り組んでいる総合的な研究開発について紹介する。

(3)息に含まれるアンモニア成分の測定技術と携帯型呼気センサーの開発
株式会社富士通研究所 デバイス&マテリアル研究所 デバイスイノベーションプロジェクト
主管研究員 壷井 修 氏
 息に含まれるガス成分により体の状態を手軽に調べ、疾病の早期発見をめざした呼気分析が研究されている。今回、生活習慣病、特に肝臓の代謝との関係が強いアンモニアに着目し、他のガスと区別して高感度に測定する技術と携帯型呼気センサーの開発を行った。



バイオ関連セラミックス分科会第54回研究会
「内視鏡下で用いる新しい医療機器 –カプセル内視鏡とスプレー式癒着防止材」
  「昔は、胃の検査で「胃カメラを飲む」というとかなりつらい検査だというイメージがあった。開発されたカプセル内視鏡は、小さなカプセルを飲み込み、検査後に体外に排出するという点では、かなり侵襲は小さくなったものと考えられる。胃の中を見る装置として開発された「胃カメラ」は、現在では消化器ガン治療のデバイスとして治療のイノベーションに大きく貢献しているとのこと。カプセル内視鏡が消化器ガン治療においてもどのような役割を果たすのか、興味深い報告がなされると期待される。
 従来わが国では、生体吸収性材料からなるフイルム、シート状の癒着防止材が広く使われてきた。しかしながら「複雑な部位に貼りづらい」、「腹腔内で運びづらい、広げづらい」等の操作上の課題があった。開発されたスプレー式癒着防止材は、ゲル化する溶液をスプレーで噴霧する方式とのことで臓器の裏側や凹凸のある部位にも容易に適応できるとのこと。薬事申請や量産化の実現等も含め、興味深い報告がなされると期待される。

日時:2017年(平成29年)5月11日(金)14:00~17:00
場所:エルおおさか 5階 研修室2
(大阪市中央区北浜東3-14)
(1)消化器ガン治療のイノベーションに貢献する内視鏡
  -カプセル内視鏡の役割-
オリンパス株式会社 事業開発室
執行役員/事業開発室長 斉藤 吉毅 氏
 今後が期待される医療関係産業の中でオリンパス(株)が展開している内視鏡は、消化器のがんの診断から治療まで、今や、欠くことのできない医療機器となっている。この、胃の中を視る装置として開発をされてきた「胃カメラ」が、今日では、消化器ガン治療のイノベーションに大きく寄与する医療デバイスとなっている。この中、カプセル内視鏡がどういう役割を担うのかを、内視鏡のイノベーションとあわせて解説する。

(2)スプレー式癒着防止材の開発
テルモ株式会社 研究開発本部
主任研究員 千野 直孝 氏
 術後癒着は腸閉塞、不妊症、慢性骨盤痛といった手術合併症の原因であることが知られている。術後癒着を軽減するために、フィルム状の癒着防止材が広く使用されてきたが、奥まった部位やトロッカーを介しての腹腔内へのアクセスが難しいといった操作上の課題があった。そこで、我々は複雑な形状にも適用でき、処置部位へアクセスが容易であるスプレー式癒着防止材を開発してきた。本発表では、本機器の開発の経緯について紹介する。



第227回研究会
「環境エネルギー分野で活躍するセラミックス」
 セラミックスは、機能性材料や構造材料として様々な分野で広く使用されています。地球温暖化やエネルギーの安定供給等の課題を解決するためにもセラミックス材料が活躍しています。今回の研究会では、環境エネルギー分野で特に顕著な進展の見られたセラミックス材料に注目しました。具体的には、(1)分離プロセス技術に有効なナノオーダーの細孔をもつゼオライト膜の開発、(2)停電時や火災時においても有効な高輝度蓄光材料、そして(3)家庭用をターゲットとした1 kW級固体酸化物形燃料電池システムの開発について講演して頂きます。

日時:2017年(平成29年)6月6日(火)13:50~16:45
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(大阪市北区中之島1丁目1番27号)
(1)環境・エネルギー技術を支える無機膜の開発
山口大学 大学院 創成科学研究科
特命教授 喜多 英敏 氏
 低炭素化社会の構築のために、製造業においてはプロセス全般の効率化や低環境負荷型プロセスへの移行が必要になっている。特に分離プロセスにおいて大量のエネルギーを消費することから、新エネルギー・省エネルギー関連技術として注目されているナノオーダーの細孔をもつ無機膜の研究開発について、実用化が進んでいるゼオライト膜を中心に紹介する。

(2)高輝度蓄光式避難誘導標識 ルナウェアの有効性
コドモエナジー株式会社
代表取締役 岩本 泰典 氏
 災害時に発生する停電等に際し、高輝度蓄光式避難誘導標識「ルナウェア」はとても有効な手段であると考え、屋内・屋外共に広域避難場所や津波避難場所等の表示に蓄光商材を採用する動きが増えてきた。現在、屋内では電気式の避難誘導標識が主流で電力を使用し表示板も樹脂で出来ている為、火災時には破損して光らなくなる可能性がある。また電気式は停電時、一時的に光るがバッテリーがなくなれば光らなくなる。その為、工場の様な危険箇所や緊急時に操作を必要とする場所に行き着くのに、現状の避難誘導標識ではたどり着くのに時間を要する可能性がある。それに比べ、「ルナウェア」は電力を必要とせず停電時にも最優先で人命を安全な場所に避難させることができる。

(3)京セラにおける円筒平板型燃料電池の開発について
京セラ株式会社 総合研究所・SOFC開発部
研究員 兒井 真 氏
 京セラでは家庭用をターゲットとして2001年より1kW級燃料電池システムの開発を開始しました。小型でかつ高効率発電可能なシステムを目指すため、単位体積当りの発電密度が大きく低コスト製造が期待できる円筒平板型セルを採用し、シンプルなスタックデザインを実現しました。現在大阪ガス様、アイシン精機様から販売されておりますエネファームタイプSに至るまでの京セラにおける開発状況を発表させていただきます。



第228回研究会
「セラミックス材料開発の進展 -計算科学と調光ガラス-」
 一般に、研究や製品開発を行うとき、理論、実験あるいはコンピュータ・シミュレーションによる計算科学の手法が用いられます。特に、計算科学は、熱、流体、あるいは電磁場解析の分野で大きな成果を挙げてきました。今回の研究会では、セラミックス材料の特性を計算機実験により解明、制御する手法について紹介して頂きます。また、室内の冷房負荷を大きく低減し、省エネルギー効果の高い新しいタイプの調光ミラーガラスの開発について講演して頂きます。

日時:2017年(平成29年)8月30日(水)13:45~16:45
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(大阪市北区中之島1丁目1番27号)
(1)計算機実験を用いた特性支配機構解明とその制御
大阪大学 大学院工学研究科 知能・機能創成工学専攻
准教授 吉矢 真人 氏
 セラミックス材料特性を高精度で測定することが可能になってきた。このことから、ミクロ構造やプロセスの最適化が可能になっている。一方でセラミックス材料の特性はしばしば物性物理理論に従わない。これがセラミックス特有の応用を可能にしているものの、更なる応用の為にはセラミックスの特性の起源を明らかにすることが必要不可欠である。本講演では計算機実験を使ったセラミックス特性の物理の解明・制御の試みを紹介する。

(2)省エネルギー性能に優れた調光ミラーガラスの創生
国立研究開発法人産業技術総合研究所 構造材料研究部門
審議役 吉村 和記 氏
 増え続ける民生部門のエネルギー消費の中で冷暖房負荷の占める割合は大きく、窓ガラスのエネルギー性能が重要になってきている。構造材料研究部門では、透明状態から鏡状態に変化することで、冷房負荷を大きく低減することのできる調光ミラーガラスの開発を進めている。調光ミラーガラスの概要及び研究開発の現状を紹介する。



第229回研究会、バイオ関連セラミックス分科会第55回研究会
「未来のお薬 -次世代医薬品- の製造技術 バイオテクノロジーと製剤技術の最先端」
  縄文の昔から薬効のある草(植物)が使われた様に、「お薬」は古くからある身近で有用なものです。一方、「天井から目薬」、「プラシーボ効果」という言葉も知られ、効く薬、そうでない薬があるとも言われます。今日の医薬品開発は、低分子型から抗体医薬品へ、劇的に変わりつつあります。個人の特定の病気を治し、副作用なくガンを治療する、など、従来と一線を画す次世代医薬品に関し知識集約型開発が先進諸国で競われ、大きな市場が期待されています。また、実用化に向けては製造技術の更なる発展が求められており、今回、我が国創薬の最前線および最先端の製剤-粉体工学技術について、第一線の専門家からご講演いただきます。

日時:2017年(平成29年)10月6日(金)13:50~16:50
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(大阪市北区中之島1丁目1番27号)
(1)次世代型医薬品製剤創製ツールとしての微粒子コーティングプロセス
神戸学院大学 薬学部 物性薬学部門 製剤学研究室
教授 市川 秀喜 氏
 近年の口腔内崩壊錠などの易服用性経口製剤の開発ニーズに後押しされ、医薬品の錠剤や顆粒剤のコーティングの主流である湿式スプレー法の対象は100μm台の微粒子へと拡張しつつある。バイオ医薬品の放出制御型粉末注射剤などへの応用も期待されるが、易凝集や大比表面積など微粒子特有の性質がその展開を困難にしている。本講演では、微粒子コーティングの諸課題を俯瞰し、その新機能性製剤開発ツールとしての可能性を展望したい。

(2)バイオ医薬品の画期的製造技術開発に向けた次世代バイオ医薬品製造技術研究組合の取り組みと神戸GMP施設の紹介
次世代バイオ医薬品製造技術研究組合
神戸GMP集中研施設長 中島 祥八 氏
 次世代バイオ医薬品製造技術研究組合(MAB)は遺伝子組み換えなどのバイオテクノロジーを利用して製造されるバイオ医薬品に関する画期的な製造技術の開発を目的として2013年に設立された。現在28社、3団体、1国立法人、4大学が組合員として参加し共同・協力して研究開発を進めている。また神戸・ポートアイランドにGMP(医薬品の製造・品質管理に関する管理基準)準拠の製造施設を建設し、技術の実用化に向け活動している。



第230回特別研究会
「-技術・情報の交流と創造展-」
 ニューセラミックス懇話会では、毎年12月に行われる研究会を「特別研究会」として開催しています。通常の「研究会」とは趣旨が異なり、「特別研究会」は、ニューセラミックス懇話会の会員の皆様から自社製品、技術、研究等の情報を積極的にアピールして頂く情報発信の場、また会員相互の情報交流を密にする場にしたいと考えています。会員の皆様にメリットのある内容で研究会を企画しています。様々な分野や価値観をもった人々と交流することにより、新たなビジネスチャンスが生まれることを期待しています。
 今回の「特別研究会」では、企業で長年にわたりセラミックス材料の研究開発と事業化を行ってこられました先生方から、これまでと今後期待されるセラミックス、あるいは産学連携の在り方について講演して頂きます。

日時:2017年(平成29年)12月12日(金)13:45~17:00
場所:大阪府教育会館「たかつガーデン」 3階カトレア(基調講演)、2階 コスモス(ポスター発表、交流会)
(大阪市天王寺区東高津町7-11)
基調講演(1)電子セラミックス-百年の歩みに学ぶ
元株式会社村田製作所 取締役専務執行役員 坂部 行雄 氏
 電子セラミックスの過去100年間での開発・発展を、それら誕生の技術的、社会的背景を振り返り、学ぶことで現状の課題 特に材料機能・性能の飽和、研究開発の停滞感を脱する方策を論じ、さらに近未来に期待される電子セラミックスの分野と現状について述べる。

基調講演(2)企業技術者の視点をURAとして大学の研究支援へ生かす
京都大学 学術研究支援室 リサーチ・アドミニストレータ(URA) 加賀田 博司 氏
 大手電機メーカにて約30年間、セラミックス材料・部品開発を担当した後、昨年URAとして京都大学の研究支援を担当する職についた。企業技術者としては、産学連携や国プロにも多数関わってきた。その経験を大学での研究支援に活かし、成果の出る産学連携につなげ、イノベーション創出に貢献できればと考えている。新材料開発について感じることおよび大学の研究支援についての思いを京都大学のURA業務を紹介しながら述べる。

(3)産・学・官 会員によるポスター・製品発表
(4)会員交流会





バイオ関連セラミックス分科会第56回研究会
「医療を支える金属材料」
  生体用材料として金属材料の使用の歴史は古く、頭蓋形成術に用いられたと思われる金が新石器時代の遺跡から発見されています。使用用途においても、骨片固定のためのワイヤーやプレート・スクリュー、髄内釘や人工関節など多種多様に渡っており多くの実績があります。また、生体適合性の向上をはじめ、使用用途に応じた新規合金材料の開発も進められています。さらに、銀や銅には抗菌作用もあり、生体材料としてだけでなく、医療現場でのニーズも高く、応用用途も広がっています。本研究会では、「医療を支える金属材料」を主題とし、お二人の先生から、金属材料の医療への応用と生体用チタン合金の特徴についてご講演をいただきます。

日時:2018年(平成30年)2月2日(金)13:50~16:50
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(大阪市北区中之島1丁目1番27号)
(1)金属と医療
木藤技術士事務所 代表 木藤 茂 氏
 まず、抗菌材料としての金属材料を説明し、その中で院内感染対策として銅が効果的なことを説明。次に、医療材料として、歯科・人工骨・ステントにそれぞれどのような材料が使われているかを説明。最後に、放射線治療の推移(コバルト60→粒子線治療)と使用される放射線遮蔽材料の説明をします。

(2)生体医療用チタン系材料の特性と特徴
大同特殊鋼株式会社 技術開発研究所 耐食・耐熱材料研究室
主任研究員 小柳 禎彦 氏
 金属材料は生体用材料として多くの実績があるが、初期の生体・医療用材料は工業用途の材料を転用しており、次第に生体適合性などの問題が指摘されてきた。そこで、生体適合性や力学的特性に優れるチタンやチタン合金が注目され、現在では様々な部位で使用されている。近年では、さらなる生体適合性の向上を目指した新しい合金も開発されている。そこで、チタン系生体材料の特徴と新しく開発した生体用チタン合金について紹介する。