■ 2016年4月~2017年3月の研究会実施記録


第221回研究会
(センシング技術応用研究会との合同開催)
「自動運転とセンシング技術」
 今回の研究会は、センシング技術応用研究会(SSTJ)とニューセラミック懇話会(NCF)との共催で行います。今回の研究会では、車の自動運転とセンシング技術について取り上げました。1件目の講演では、自動運転技術の動向及び課題について、2件目の講演では、自動運転支援システムに使用される超音波センサーやMEMSセンサーの動向について紹介していただきます。

日時:2016年(平成28年)4月19日(火)13:25~16:35
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(大阪市北区中之島1-1-27)
(1)自動車の運転支援から自動運転へ、その課題
大阪産業大学 工学部 交通機械工学科
教授 栂井 一英 氏
  昨年秋より公道での車の自動運転に注目が集まり、各国政府も2020年頃の実用化に向けて支援している。車の自動運転は、最近の人工知能技術のみではなく、100余年前から続く運転支援の延長として段階的に実用化されると考えられる。自立運転には道路環境の認識と方針の判断が必要であるが、人工知能によるそれは人間とは明らかに異なる。技術開発の課題、鉄道システムとの比較や法規制など実用化にあたり考慮すべき条件を紹介する。

(2)安全駐車システムと車載用センサー
株式会社村田製作所 センサ事業部 企画・販推部
エキスパート 熱田 善胤 氏
 自動車の安全運転に向けて、センサーはなくてはならない存在になっている。本講演ではADAS(先進運転支援システム)の一部を構成する、自動駐車システムの実現に貢献する超音波センサーや、ESC(横滑り防止)に活躍するMEMSセンサーの動向について紹介する。



バイオ関連セラミックス分科会 第51回研究会
「脊椎固定具および再生人工骨の開発における機械工学分野からのアプローチ」
 バイオマテリアルには主に有機系と金属・セラミックス材料が用いられますが、これらを臨床応用する場面では、機械分野との学際領域であるバイオエンジニアリングの研究が重要となってきます。そこで今回は先端工学技術を用いた評価試験のご講演いただくと共に、生体親和性に優れたマシナブルセラミックス開発の最前線につきご講演をいただきます。
 今回は、軟骨再生材料としてのシルクの可能性および人工軟骨用材料としてのポリビニルアルコールハイドロゲルの応用例を紹介して頂きます。

日時:2016年(平成28年)4月28日(木)14:00~17:00
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール
(大阪市北区芝田1-1-4 阪急ターミナルビル14階)
(1)脊椎疾患治療用体内固定具の力学的特性評価
三重大学大学院工学研究科
教授 稲葉 忠司 氏
  優れた衣料用繊維であるシルクは、医療分野においても外科用縫合糸としての実績があり、生体安全性が高い素材であると考えられる。シルクタンパク質であるフィブロインから多孔質構造体(スポンジ)を作製し、京都大学、東邦大学とともに軟骨再生用材料としての実用化を目指している。本講演では、バイオマテリアルとしてのシルクの特性とシルクを利用する軟骨再生材料開発の現状についてご紹介させて頂く。

(2)チタン・メディカル・アパタイト(TMA(R))真空焼結体による再生人工骨をめざして
日本大学工学部 機械工学科
教授 田村 賢一 氏
 骨欠損部に使われる骨補填剤は生体親和性の良いβ-TCPやHApが主成分であり、Scaffoldsを大きくして骨癒合を促進している。反面、強度は残存骨より低いのでリハビリ開始に長い期間を必要とする部位も有る。本講演では、チタン・メディカル・アパタイト(TMA(R))という新しいアパタイトを紹介し、その真空焼結体の機械的性質、切削加工性、生体親和性などについて述べる。なお、「TMA焼結体」は米国など数カ国で物質特許を取得している。



第222回研究会
「金属資源回収技術の現状」
 レアメタルは、電子機器、電池およびモーター等の高性能化に必要不可欠な金属です。資源に乏しい我が国では、都市鉱山である廃家電機器や電池に含まれるレアメタルあるいはベースメタルの有効利用が重要であり、このような金属資源を安価に回収して精製する技術が求められています。今回の研究会では、レアメタルの基礎と資源の現状、ならびに電子機器や種々の電池からの金属回収技術や課題について講演して頂きます。

日時:2016年(平成28年)6月7日(火)14:10~16:45
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(大阪市北区中之島1-1-27)
(1)希少元素分離回収技術
東北大学 多元物質科学研究所
研究教授 中村 崇 氏
  希少元素(レアメタル)の定義から、資源の状況、ならびにそれらを廃製品から分離回収する技術の全般に渡って概要を説明する。特にこの5年東北大学で実施している東北発素材技術先導プロジェクト希少元素高効率抽出技術領域の内容を紹介する。本プロジェクトは東北地方の復興をレアメタルリサイクルで支えることを目的として、実施されている。今回は主に廃電子機器の破砕と固体選別、その後の化学的分離技術について紹介する。

(2)非鉄精錬と電池からの金属回収
一般財団法人国際資源開発研修センター(国際資源大学校)
研修企画部長 加藤 秀和 氏
 非鉄製錬工程での電池からの金属回収の実例と実態の報告を主に説明し電池からの金属回収の課題について講演します。電池の種類として乾電池、酸化銀電池、ニッカド、ニッケル水素、鉛蓄電池、リチウムイオン電池事例について説明します。個別の金属として亜鉛、マンガン、銀、鉛、ニッケル、コバルト、リチウムについて回収事例と課題について説明します。



第223回研究会
「セラミックスの加工技術 -切削・研削・研磨-」
 原料粉末を所望の形状に付与して焼結することがセラミックス製造の一番の特徴です。しかしながら、寸法精度あるいは表面の平滑性を求めると、後加工が必須となります。今回の研究会では、このセラミックスの加工技術に着目し、基礎となる研削メカニズム、高効率、超精密研磨の実例、ならびに加工のために使用する工具用材料に関する最近の動向について取り上げます。

日時:2016年(平成28年)8月26日(金)14:00~17:00
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール
(大阪市北区芝田1-1-4 阪急ターミナルビル14階)
(1)セラミックスの高能率高品位研削を目指して
京都工芸繊維大学 機械工学系
教授 太田 稔 氏
  セラミックスの難加工性を克服し高能率高品位加工を実現することは、セラミックス部品の普及にとって極めて重要である。本稿では、まず構造用セラミックスの研削因子と研削表面損傷について概説し、砥粒切れ刃制御と高速研削による高能率研削の可能性を述べる。さらに究極の難削材料であるダイヤモンドについて、熱化学反応を利用した高速定圧研削や固定砥粒研磨による高能率加工の最近の研究例を紹介する。

(2)シリコン、サファイヤ、SiC、GaN等の研磨とそのメカニズム
株式会社フジミインコーポレーテッド 新規事業部
次長 玉井 一誠 氏
 半導体の誕生以来25 年以上、単結晶Siが基板として用いられてきた。 また近年、グリーンエネルギ・デバイスの発達と共にサファイア、SiC、GaN基板の需要が高まっており、低炭素化社会に貢献する半導体照明やレーザーダイオード等光デバイスや、パワーデバイスに利用されている。 本稿ではこれら基板の研磨に対して、砥粒の作用と研磨促進に関する最近の研究結果を交えて、無欠陥化と生産性向上の考え方および研磨材設計を解説する。

(3)高硬度ナノ多結晶ダイヤモンド工具による硬脆材料の切削加工
住友電気工業株式会社 アドバンストマテリアル研究所
技師長/フェロー 角谷 均 氏
 超々高圧高温下での直接変換により、非常に微細なダイヤモンド粒子が直接強固に結合したナノ多結晶ダイヤモンドを開発した。単結晶ダイヤモンドを超える硬度を備え、異相や介在物を一切含まないため強靭で耐熱性も高く、高強度でシャープな刃先を形成できる。このため切削工具として理想的で、従来困難であったセラミックスや超硬合金の硬脆材料の高能率・高精度切削も可能である。



第224回研究会・バイオ関連セラミックス分科会 第52回研究会
「医療・福祉分野に活かされるロボット技術」
 近年、医療・福祉分野において、超高齢化社会といった環境変化および低侵襲治療を始めとする技術進化に対応する為に、身体機能の改善・補助・拡張あるいは手術支援を目的としたロボットの研究開発・技術導入が盛んに進められています。今回は、医療・福祉分野において、すでに利用されているロボットおよびその基盤技術についてご講演いただくとともに、当該分野の今後の展望についてもご講演いただきます。

日時:2016年(平成28年)10月7日(金)13:50~16:50
場所:大阪産業創造館 6階 会議室A・B
(大阪市中央区本町1-4-5)
(1)ロボットスーツHALと大分ロボケアセンターでの運用方法
  -トレーニングウェアは、ロボットです。-
CYBERDYNE株式会社 営業部門
本部長 安永 好宏 氏
  「ロボットスーツHAL(R)」は、装着者の生体電位信号を読み取り、思った通りに動作をアシストする筑波大学大学院の山海嘉之教授が開発した世界初のサイボーグ型ロボットである。ヨーロッパや日本国内ではすでに医療機器として承認を得ている。大分ロボケアセンターは、HAL(R)の開発企業であるCYBERDYNE 株式会社の100%子会社である。大分県の代表的な観光資源である温泉等とトレーニングを組み合わせた、国内外向け長期滞在型「HAL FIT ツーリズム」の構築を目指している。

(2)手術支援ロボットシステムの開発 -実用化への取り組みと研究の新展開-
東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所
准教授 只野 耕太郎 氏
 ロボット手術では、低侵襲性と直感的な操作を両立できることから、近年その導入が急速に進んでいる。一方、現状では操作を視覚情報のみに頼っており、力の感覚が伝わってこないことが一つの問題となっている。我々はこれまで空気圧駆動を利用することで外力の検出、推定を可能とした腹腔鏡手術支援ロボットの研究開発を行ってきた。本講演では、上記システムとその実用化への取り組みとともに研究の新たな展開について紹介する。



第225回特別研究会
技術・情報の交流と創造展
 ニューセラミックス懇話会では、毎年12月に行われる研究会を「特別研究会」として開催しています。通常の「研究会」とは趣旨が異なり、「特別研究会」は、ニューセラミックス懇話会の会員の皆様から自社製品、技術、研究等の情報を積極的にアピールして頂く情報発信の場、また会員相互の情報交流を密にする場にしたいと考えています。会員の皆様にメリットのある内容で研究会を企画しています。様々な分野や価値観をもった人々と交流することにより、新たなビジネスチャンスが生まれることを期待しています。
 今回の「特別研究会」では、長年にわたり企業や大学で研究開発やマネージメントに携わってこられました先生方から、「地球環境問題」および「機能性窒化物・酸窒化物の開発」に関するこれまでの取り組みと今後の展開について講演して頂きます。

日時:2016年(平成28年)12月6日(火)13:40~18:30
場所:大阪府教育会館「たかつガーデン」 2階 コスモス(基調講演、ポスター発表、交流会)
(大阪市天王寺区東高津町7-11)

基調講演(1)地球温暖化への独り言
(地独)大阪府立産業技術総合研究所 理事長 古寺 雅晴 氏
  エネルギー資源の状況と産業革命以降急激な温室効果ガスの大気中濃度上昇による地球温暖化の関係を述べて、環境保全の立場から解決のための提案をする。具体的には、化石燃料資源は、200年くらいは枯渇せず十分あるが、炭酸ガスによる地球温暖化がエネルギー資源としての利用を制限する。
 そのため、COP21、日本エネルギー基本計画が打ち出されているが、これを達成する具体的アクションは何かを提案する。

基調講演(2)機能性窒化物・酸窒化物の創製 -次に繋がる確かな科学を目指して
北海道大学大学院 工学研究院
特任教授 吉川 信一 氏
 窒化鉄磁性体など窒化物の創製に関する研究へ注力するうちに、酸素も共存する酸窒化物の新しい研究領域を拓くことができた。窒化物および酸窒化物の科学は、酸化物に比べてかなり複雑であるために不明な点が多く残されていた。基礎科学的な課題を順次調べてゆくと、金属酸化物では見られなかった新たな世界に辿り着き、応用が期待できる段階に近づいている。

(3)産・学・官 会員によるポスター・製品発表
(4)会員交流会



バイオ関連セラミックス分科会 第53回研究会
「ナノセラミックスの医療分野への応用」
 「材料の大きさがナノスケールになると、マクロスケールとは異なる物理的・化学的な性質を示すようになります。ナノ材料については、これまで主に電子デバイス等の工学分野において研究および応用がなされてきましたが、超高齢社会を迎え、増え続ける医療費の問題を抱えた我が国においては、今後は医療分野における発展およびブレークスルーが期待されます。今回はセラミック材料をナノサイズ化することによって新たな機能を付加し、ナノセラミックスの医療分野における実用化を目指す最新の研究・開発についてご講演をいただきます。

日時:2017年(平成29年)1月27日(金)14:00~17:00
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール
(大阪市北区芝田1-1-4 阪急ターミナルビル14F)
(1)硬組織を模倣した細胞伸展培養シートの開発とその応用
大阪歯科大学・中央歯学研究所
准教授 本田 義知 氏
  分散性を保った焼成ハイドロキシアパタイトナノ粒子は、高い生体親和性を示す事が知られている。本懇話会では、細胞生物学的研究に向け、焼成ハイドロキシアパタイトナノ粒子の新たな利用方法を先生方にご呈示させて頂くと共に、得られた知見に関して、諸処のご意見を頂ければと考えております。

(2)希土類含有セラミックスナノ粒子の近赤外バイオメディカルフォトニクス応用
東京理科大学 基礎工学部 材料工学科 総合研究院・イメージングフロンティアセンター
教授 曽我 公平 氏
 希土類イオンを含有するセラミックスは近赤外励起光により効率の良い近赤外蛍光を示す。近年、1000 nm を超える近赤外(OTN-NIR)波長域は「第二の生体の窓」と呼ばれ、従来用いられてきた1000 nm 以下の波長域よりも高い生体透過性を特徴とし、小動物における蛍光イメージングでは従来の数mm に限られていた観察深度を数cm まで拡張することができる。本公演ではOTN-NIR 波長域における蛍光プローブの設計、温度イメージングへの応用について概説する。