■ 2015年4月~2016年3月の研究会実施記録


第216回研究会
(センシング技術応用研究会との合同開催)
「水の利用を支える最新技術」

日時:2015年(平成27年)4月24日(金)13:20~16:40
場所:エル・おおさか(大阪府立労働センター)南館 10階 南101
(大阪市中央区北浜東3-14)
(1)マルチモーダルセンサ開発と農業・畜産分野センサ応用
豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学系
教授  澤田 和明 氏
  IoTの入り口であるセンサ開発は、アプリドリブンな開発が求められている。勘と経験を頼りに営まれてきた農業畜産分野への応用を目指し、ミリ単位の小型なチップ内に複数種類のセンサを搭載したマルチモーダルセンサについて、応用事例を含めて紹介する。

(2)~大阪市中浜下水処理場で実証したB-DASH実証技術について~
超高効率固液分離技術を用いた下水処理場のエネルギーマネジメント
メタウォーター株式会社 プラントエンジニアリング事業本部 新事業技術部 
担当部長 宮田 篤 氏
 下水処理場は非常に多くの電力を消費している。今回、流入下水を前段で「ろ過」処理することにより、ろ過水が清浄になり、生汚泥が多く回収できる新下水処理システムを導入し、水処理の省エネ化、汚泥処理の創エネ化の可能性についての実証結果を報告する。

(3)流動床光触媒による水処理技術
パナソニック株式会社 先端研究本部 デバイス研究室 
主任研究員 ○丸尾 ゆうこ 氏
猪野 大輔 氏、橋本 康宏 氏、高岡 友康 氏、原 恒平 氏
 流動床光触媒を用いて汚染物質を除去する水浄化技術を開発した。水中の汚染物質の分解において、従来の固定型光触媒に比べて流動床光触媒は1/100の時間で処理することが可能となった。結果、太陽光に含まれる紫外光と同程度の強度の紫外光により、水中の汚染物質を短時間で除去可能となった。



第217回研究会
「半導体材料・ガラス材料の新展開」
 半導体材料やガラス材料はそれぞれの機能を活かして様々な分野で広く用いられています。従来、窒化ガリウムに代表される窒化物系半導体は、LEDやLD等の発光素子に、シリカガラスは、光ファイバー、レンズおよびランプ部材等の光学材料に使用されてきました。近年、このような窒化物系半導体材料やシリカガラスの新規な機能や応用に関する研究が進められています。今回の研究会では、窒化物系半導体材料を光電極に用いた人工光合成および希土類等の発光イオンをドープしたシリカガラスの作製と蛍光特性について講演して頂きます。

日時:2015年(平成27年)6月9日(火)14:10~16:50
場所:大阪産業創造館 6階 会議室E
(〒541-0053 大阪市中央区本町1-4-5)
(1)窒化物半導体を用いた人工光合成技術の開発
パナソニック株式会社 先端研究本部 材料研究室 環境材料研究部
主幹研究員 出口 正洋 氏
  二酸化炭素(CO2)を光で有用なエネルギー資源に変換する人工光合成システムにおいて、光電極に窒化物系半導体材料を適用し、光照射のみでCO2からメタン(CH4)やエチレン(C2H4)などの炭化水素が生成可能であることを実証した。このGaN系光電極からなる人工光合成システムに疑似太陽光を照射した場合のCO2から炭化水素へのエネルギー変換効率(ηene)は約0.2%である。

(2)シリカガラスを母体とする蛍光材料とその応用展開
国立研究開発法人産業技術総合研究所 関西センター
無機機能材料研究部門 高機能ガラスグループ
グループ長 赤井 智子 氏
 ポーラスシリカの細孔中に希土類等の発光イオンを適量ドープし、適切な条件で焼成すると紫外励起で高輝度に発光するシリカガラスを得ることができる。蛍光シリカは樹脂とほぼ同等の屈折率を有するため、樹脂と混合した場合に可視光透過性が高いことから、太陽電池、LED等への応用が期待できる。本講演では蛍光シリカの作製方法と応用展開について概説する。



バイオ関連セラミックス分科会 第48回研究会
「軟骨再生・人工軟骨材料」
 変形性関節症などで損傷を受けた軟骨は、自然に治らない組織のため、自然治癒力のある骨などの他の組織とは全く異なる性質を有しています。そのため、再生能力のある軟骨細胞が増殖可能な材料や軟骨組織を置換できる人工軟骨材料の開発が盛んに行われています。
 今回は、軟骨再生材料としてのシルクの可能性および人工軟骨用材料としてのポリビニルアルコールハイドロゲルの応用例を紹介して頂きます。

日時:2015年(平成27年)6月24日(水)14:00~17:00
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール
(大阪市北区芝田1-1-4 阪急ターミナルビル14階)
(1)シルクを利用する軟骨再生材料開発
信州大学 繊維学部 玉田 靖 氏
  優れた衣料用繊維であるシルクは、医療分野においても外科用縫合糸としての実績があり、生体安全性が高い素材であると考えられる。シルクタンパク質であるフィブロインから多孔質構造体(スポンジ)を作製し、京都大学、東邦大学とともに軟骨再生用材料としての実用化を目指している。本講演では、バイオマテリアルとしてのシルクの特性とシルクを利用する軟骨再生材料開発の現状についてご紹介させて頂く。

(2)人工軟骨用材料としてのPVAハイドロゲル
京都工芸繊維大学 繊維科学センター 玄 丞烋 氏
 ポリビニルアルコール(PVA)をH2O/DMSO混合溶媒に溶解した濃厚溶液を低温結晶化することにより、高強度でしかも透明性に優れたハイドロゲルを得ることが出来た。この高強度透明PVAハイドロゲルの物性と医療材料としての応用を紹介する。



第218回研究会
「セラミックスによる熱エネルギーの高効率利用」
 エネルギーを有効に利用するためには、熱エネルギーを高い効率で電気エネルギーに変換できるデバイスの開発が重要です。このようなデバイスを実現するためには、優れた熱的特性を示すセラミックスが必要不可欠になります。今回の研究会では、600˚C以下の中温領域で作動する可能性のある固体酸化物燃料電池(SOFC)の現状と今後の課題について紹介して頂きます。

日時:2015年(平成27年)9月3日(木)14:00~16:40
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(〒530-0005 大阪市北区中之島1丁目1番27号)
(1)固体酸化物燃料電池(SOFC)の中温作動化を目指した材料創成
兵庫県立大学 工学研究科
准教授 嶺重 温 氏
  固体酸化物燃料電池(SOFC)は高温(700~1000˚C)作動燃料電池であり、変換効率が高く、電極材に貴金属が不要である等の特長を有する。今後の大幅な普及のためにはコスト、耐久性の課題を克服することが必要となるが、我々はアパタイト型セラミックスを用いて600˚C以下の中温領域での作動実現を狙っている。本講演では、そのような中温作動型SOFCの現状と今後の課題について述べる。

(2)排熱利用を可能にする酸化物及びシリサイド熱電発電技術
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 無機機能材料研究部門
上級主任研究員 舟橋 良次 氏
 現在の熱機関は高品位エネルギーを電気や化学製品に変換した後、低品位エネルギーを大量に排出している。人口増加により、低いエネルギー効率はエネルギー問題や環境問題を深刻にしている。エネルギー効率の増加には、希薄に分散した排熱の有効利用が必須であり、熱電発電はそれを可能にする技術として注目されている。本講演では高温、空気中でも安定な酸化物、シリサイド材料を用いた熱電発電システムの開発について紹介する。



第219回研究会・バイオセラミックス分科会第49回研究会

「新しい再生医療用材料と歯科分野における再生医療の現状」
 RGD配列は、アルギニン(R)―グリシン(G)―アスパラギン酸(D)の3種のアミノ酸が連結した配列であり、多くの細胞接着性タンパク質に共通の細胞接着活性配列です。この度、このRGD配列を多数繰り返し有するコラーゲン様リコンビナントペプチドが新規に開発されました。今回は、この材料の再生医療分野での用途等につきご講演いただくと共に、我が国における歯科口腔外科領域での再生医療の最前線につきご講演をいただきます。


日時:2015年(平成27年)10月23日(金)14:00~17:00
場所:(株)島津製作所 関西支社 マルチホール
(大阪市北区芝田1-1-4 阪急ターミナルビル14階)
(1)新しい再生医療用材料 cellnestTM (ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド)
富士フィルム株式会社 再生医療事業推進室
大屋 章二 氏
  弊社は遺伝子組み換え技術を用い、cellnestTM (ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド)を開発し、研究用試薬として販売を開始した。本講演ではcellnestTM の再生医療用途に加え、細胞培養担体、DDS担体の可能性についても言及する。

(2)歯科分野における再生医療
東京大学 医学部附属病院 顎口腔外科・歯科矯正歯科
藤原 夕子 氏
 近年の再生医療研究の発展は目覚しいが、歯科口腔外科領域においても、う蝕、歯周病による歯や歯周組織の喪失、口唇口蓋裂などの先天異常や腫瘍、外傷による骨・軟骨および軟部組織の欠損、ドライマウスなど、ほぼすべての疾患が再生医療の研究対象となっている。本講演では、歯科口腔外科領域の再生医療に関して、本邦での取り組みを中心に概説する。



第220回特別研究会
技術・情報の交流と創造展
 ニューセラミックス懇話会では、毎年12月に行われる研究会を「特別研究会」として開催しています。通常の「研究会」とは趣旨が異なり、「特別研究会」は、ニューセラミックス懇話会の会員の皆様から自社製品、技術、研究等の情報を積極的にアピールして頂く情報発信の場、また会員相互の情報交流を密にする場にしたいと考えています。会員の皆様にメリットのある内容で研究会を企画しています。
 今回の「特別研究会」では、長年にわたり医療分野におけるセラミックスの研究開発と応用に携われ、多くの成果を上げて来られました先生方からこれまでの取り組みと今後の展開について講演して頂きます。会員の皆様の多数のご参加を心よりお待ち申し上げます。


日時:2015年(平成27年)12月15日(金)13:45~18:30
場所:大阪府教育会館「たかつガーデン」 2階 コスモス(ポスター発表、交流会)および3階 カトレア(基調講演)
(大阪市天王寺区東高津町7-11)
基調講演(1)どんな理由で研究テーマを選んだか:私のニューセラミックスラミックス
京都大学名誉教授・中部大学名誉教授
小久保 正 氏
  大学を卒業して京大化学研究所に就職した時、先生から与えられた研究テーマは、強誘電性結晶化ガラスでした。その後研究テーマは、赤外透過性ガラスから、融液の一方向凝固、キャッツアイ、人工骨用結晶化ガラス、歯科用結晶化ガラス、癌治療用セラミック微小球、生体活性有機‐無機ハイブリッド、生体活性金属へと変化しました。研究の曲がり角で、どんな理由で次の研究テーマを選んできたかをお話しします。

基調講演(2)セラミック創薬の挑戦と臨床結果
大阪産業大学 教授・株式会社オーエスユー 代表取締役
山田 修 氏
 今まで共有結合性の強いセラミックスは化学的安定性ゆえに、経口摂取しても消化されず、有機物との化学反応も望めないため、単に排泄されるだけで、医薬品候補にはなり得ないと思われてきた。例えばダイヤモンド粉末摂取が薬理効果を示さないだろうと考えるのは科学的合理性があり常識的な判断である。しかし今回、ある種の非酸化物セラミックスが医薬品候補となり得ることが判明したので、その臨床結果も含めて報告する。

(3)産・学・官 会員によるポスター・製品発表
(4)会員交流会



バイオ関連セラミックス分科会 第50回研究会
「新規人工骨の研究、開発、事業化の動向」
 
バイオセラミックスの応用領域といえば人工骨であり、これまでHAPやβ-TCP等の素材においては性状の最適化などがなされ、広く臨床で応用されています。一方、最近はアパタイト・コラーゲンの複合体が実用化され、リン酸カルシウム素材と高分子材料との複合化は製品を想定した研究、開発での動きに見られます。今回はその中からリン酸八カルシウムとそのコラーゲン複合体についての研究・開発状況、また海外展開から事業を手掛けていてSi含有炭酸カルシウム・TCP・ポリ乳酸からなる綿状人工骨について御講演をいただきます。分科会50回の節目として、人工骨の歩みを振り返る機会になればと考え企画致しました。

日時:2016年(平成28年)1月29日(金)14:00~17:00
場所:たかつガーデン 3階 カトレア
(大阪市天王寺区東高津町7-11)
(1リン酸八カルシウムを基材とする骨補填材開発と生体材料としての性質について
東北大学 大学院歯学研究科 教授 鈴木 治 氏
  疾病等で失われた骨の欠損を填材する自家骨の代替材料としてハイドロキシアパタイト(HA)や
βリン酸三カルシウム(β-TCP)など骨伝導に優れるセラミックス材料が広く臨床応用されてきた。私達は多くの医歯工連携研究を通じて、高い骨伝導を示すリン酸八カルシウム(OCP)およびOCPと天然高分子との複合体の開発を行ってきた。講演ではOCP骨補填材の研究・開発や生体材料としての性質について紹介したい。

(2)世界初の綿形状人工骨充填材 ReBOSSIS(R)(レボシス)
ORTHOREBIRTH(オルソリバース)株式会社 代表取締役社長 西川 靖俊 氏
 ReBOSSIS(R)(レボシス)は世界で初めて綿形状の人工骨充填材として、2014年10月に外傷領域で米国FDA510(K)のクリアランスを取得した。米国の人工骨充填材の市場規模は、最終売上ベースで約400億円、DBM(死体骨)や他人骨市場等と合わせると骨充填材市場全体では1000億円規模となり、弊社は本年2月より米国で販売を開始した。
 本講演では、ReBOSSIS(R)(レボシス)の詳細に加え、今後の取り組みについて概説する。
尚、本製品は米国の510(K)承認はされているが、国内では未承認であることを念の為申し添える。

■第50回記念交流会(17:00~18:30 ※講演終了後)
第50回を記念してささやかながら交流会を開催