■ 2013年4月~2014年3月の研究会実施記録


第206回研究会
(センシング技術応用研究会との合同開催)
「電磁波のセンシング技術応用と生存圈研究所 見学会」

日時:2013年(平成25年)4月26日(金)13:30~17:15
場所:京都大学 宇治キャンパス 生存圈研究所  総合研究実験棟 4階 HW401
(京都府宇治市五ヶ庄)
(1)センシング用電源の電池レス化 -無線電力伝送とエネルギーハーベスティング-
京都大学 生存圈研究所
教授 篠原 真毅 氏
 センサーが電池レスで駆動できれば、その応用は格段に広がる可能性がある。本講ではセンサーの電池レス化を目指す無線電力伝送や電磁波エネルギーハーベスティングの技術や世界現状について解説する。

(2)レーダーで測る大気の流れと乱れ
京都大学 生存圈研究所
助教 山本 真之 氏
 大気の乱れ(乱流)が生じると、僅かな大気屈折率の擾乱が発生します。大気レーダーは、屈折率擾乱に起因する散乱電波を受信することで、大気の流れ(風)や乱流を計測します。講演では、大気レーダーの測定原理と観測結果をご紹介します。

(製品紹介)省エネ支援機器のご紹介 スマート電力量モニタ
オムロン株式会社 環境事業推進本部
村木 志高 氏
 電磁誘導を用いた電力計測技術はエネルギー利用効率を最適化する省エネ支援の基礎技術として注目されております。弊社の電力センシング製品を導入事例を交えて紹介させていただきます。

<見学会>
生存圈研究所 高度マイクロ波エネルギー伝送実験棟



バイオ関連セラミックス分科会 第41回研究会
「次世代型人工股関節の開発の現状と展望」
 人工関節置換術は、機能を喪失した関節を人工関節に置換し、関節機能の再建を図る手術です。社会の超高齢化とともに、その手術件数は年率10%で増加を続けており、今後10年間で約2倍になる見込みです。国内の人工股関節市場では、約87%が欧米製品で占められているため、小柄な日本人の体格や正座等の生活様式にあわせた製品が求められており、国内メーカーが中心となった次世代型人工股関節の開発が期待されています。そこで、今回は、PEEK樹脂炭素繊維強化複合材料を用いた複合材料製人工関節の開発および人工関節の評価方法・審査基準の現状と今後求められる人工関節像に関する最新の研究成果をご講演頂き、日本発の人工股関節の実用化に必要な方向性について言及して頂きます。

日時:2013年(平成25年)5月31日(金)14:00~17:00
場所:(株)島津製作所 関西支社 マルチホール
(大阪市北区芝田1-1-4 阪急ターミナルビル14F)

(1)複合材料製人工関節の開発
株式会社ビー・アイ・テック
板東 舜一 氏
 従来は、チタン合金などの金属で製造されていた人工股関節等の体内医療用具を、PEEK樹脂炭素繊維強化複合材料により開発中である。
 過去10年間にわたる研究の概要、開発経過、従来の人工関節の課題、複合材料製人工股関節の利点等について説明した後、システム構造、ベアリング構造、システム製造法、品質保証法、スクリュー等骨固定具等に関する研究成果を紹介する。この中で、ヒドロキシアパタイトの表面処理についても紹介する。

(2)人工関節の評価方法・審査基準の現状と今後求められる人工関節像
独立行政法人産業技術総合研究所 ヒューマンライフテクノロジー研究部門 岡崎 義光 氏
 高齢化社会の到来による骨折患者等の増加に伴い整形インプラントの使用量は増加しており、薬事審査の迅速化および医療機器産業の活性化が期待されている。また、製造技術の進歩に伴い患者に最適なインプラントが薬事製造承認可能な状況にある。これらの最新動向および今後求められる人工関節のあり方に関して講演する。



第207回研究会
「材料開発の基礎 -材料解析と物性評価-」
 セラミックスをはじめとする材料を開発する上で、材料の解析技術と物性の評価技術は極めて重要です。今回の研究会では、透過型電子顕微鏡の最近の進展と材料開発に果たしている役割について講演して頂きます。また、ダイヤモンドの半導体としての物性評価と今後の展開について解説して頂きます。両講演とも材料開発のポイントに関するものであり、大変参考になると考えます。

日時:2013年(平成25年)6月21日(金)14:10~16:50
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(大阪市北区中之島1-1-27)

(1)透過電子顕微鏡を用いた原子レベルの材料解析
東北大学 金属材料研究所
教授 今野 豊彦 氏
 近年、透過電子顕微鏡は収差補正技術や三次元解析手法の進展により長足の進歩を遂げている。それに伴い、我々の材料に対する理解も深まり、研究開発の現場へも影響を与えている。講演では、走査型電顕やFIBなどの周辺技術を紹介しながら、透過電子顕微鏡が果たしつつある役割について述べる。

(2)ダイヤモンド半導体研究の現状と将来の展望
独立行政法人 産業技術総合研究所 エネルギー技術研究部門 電力エネルギー基盤グループ
招聘研究員 大串 秀世 氏
 ダイヤモンドは他の半導体材料と比較し、優れた物性値をもち、将来の電子デバイス用材料として期待されているが、単に従来のデバイスをダイヤモンドで置き換えるだけでは実用化は期待できない。我々はダイヤモンドが従来の半導体にはない特異な性質を持つことに着目し、これを利用した新しい動作原理をもつデバイスの開発を目指してきたが、その成果が出始めている。講演ではこれらの現状を紹介し、今後の展開について言及する。



バイオ関連セラミックス分科会 第42回研究会
「磁場を活用した低侵襲がん温熱療法の最新動向」
 がん治療の高度化は、私たちの健康寿命や生活の質(QOL)の向上を図る上で今後欠かすことのできない技術です。その中で、がん温熱療法は、副作用や手術による切開の少ない低侵襲治療として注目されています。特に、体内に埋め込んだ磁性セラミックス微粒子を交流磁場の下で発熱させることで、がん細胞のみを効率よく加温することが可能となり、治療効果の向上が期待できます。
 本研究会では、がん温熱治療用磁性材料の開発と、それを利用した臨床研究の立場から講師の先生をお招きして、温熱療法の最新動向や医用セラミックスの研究開発に対する要望など幅広い観点からご講演頂きます。本研究会を通じて、がん温熱療法の包括的理解に発展させていきたいと考えています。

日時:2013年(平成25年)8月9日(金)14:00~17:00
場所:大阪産業創造館 6階 会議室A・B
(大阪市中央区本町1-4-5)

(1)磁性ナノ粒子を用いた癌の温熱療法
中部大学 生物機能開発研究所
小林 猛 氏
 悪性腫瘍部位だけを加温する温熱療法を開発しました。マグネタイト微粒子を悪性腫瘍部位に集積させ、交番磁界を照射すると磁性微粒子だけが発熱する性質を利用しています。動物モデルでは悪性腫瘍部位は確実に退縮しました。加温に伴って熱ショックタンパク質が多量に生成し、これを介して、癌細胞特有の免疫活性が強く賦活されます。この素材を利用して名古屋大学医学部附属病院などで進めています臨床研究の結果についてもご紹介します。

(2)転移性骨腫瘍に対する磁性体温熱療法
三重大学 医学部
松峯 昭彦 氏
 悪性腫瘍に対する温熱療法は、現在、進行性直腸癌、前立腺癌、子宮癌、頭頚部癌などで臨床応用されている。その加温方法は、外部からの加温によるものであり、体の深部に存在し熱伝導能の悪い骨の加温には、新しい治療戦略が必要であった。我々は、磁性体を病巣部に挿入後、体外交流磁場発生装置を用いて加温する磁性体温熱療法を開発し、2002年より三重大学倫理委員会の承認のもと臨床応用しているので紹介する。



第208回研究会
「セラミックスのエネルギー関連分野への応用」
 安定化ジルコニアは、創エネ装置のひとつである固体酸化物形燃料電池の電解質として以前から用いられています。セラミックス材料は、創エネ分野以外にも、畜エネあるいは省エネ分野に広く応用されています。今回の研究会では、比表面積の大きな酸化物ナノ粒子やナノシートを用いた蓄電デバイスであるスーパーキャパシタについて紹介して頂きます。また、省エネに繋がるプラスチックにセラミックスフィラーを添加することにより高い熱伝導性を発現する無機/ポリマー複合材料について講演して頂きます。

日時:2013年(平成25年)9月12日(木)14:00~16:40
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(大阪市北区中之島1-1-27)

(1)酸化物ナノシートを用いたスーパーキャパシタ
信州大学 繊維学部
准教授 杉本 渉 氏
 酸化物電極は大きな表面電荷を貯めることができるため、大容量スーパーキャパシタとしての応用が期待されている。表面のみで電荷を蓄積するため、高表面積材料の開発が求められる。講演では酸化物ナノ粒子やナノシートにおける電荷蓄積機構、それらを利用した大容量、高付加価値電極について述べる。また、酸化物電極のポテンシャルを最大限に引き出すことができる4V級水系ハイブリッドキャパシタの取り組みについて紹介する。

(2)高熱伝導率無機/ポリマー複合体の開発 ~無機フィラーの特性について~
独立行政法人 産業技術総合研究所イノベーション推進本部
上席イノベーションコーディネータ 渡利 広司 氏
 プラスチック部材に高熱伝導率付与という観点での材料設計が必要とされている。通常、酸化物をフィラーとして添加し、熱伝導の向上が図られている。一方、窒化ホウ素、窒化アルミニウムのフィラーは酸化物に比べて5~40倍の高い熱伝導率を示すと報告されている。しかし、これらのフィラーは酸化物に比べて、材料表面に存在する官能基量が少ないため、有機溶媒への分散性が悪い。さらにプラスチックとの親和性が低いために、均一に分散させることは困難である。本発表では、窒化物フィラーの物理特性や表面化学特性ついて紹介するとともに、著者らが進めた高熱伝導率無機/ポリマー複合体の研究成果についても報告する。



第209回研究会バイオ関連セラミックス分科会 第43回研究会
「デンタルCAD/CAMテクノロジーの新たな展開」
 現在、車、飛行機からフィギュアのデザインに至るまで産業分野で幅広く利用されているCAD/CAMシステムが、歯科医療分野でも急速に発展し普及しています。今回の研究会では、デンタルCAD/CAMテクノロジーやシステムの概要、最新の技術動向をご紹介いただくとともに、それらを臨床に応用した新しい歯科補綴治療の現状と展望についてお話しいただくことにより、CAD/CAMテクノロジーが歯科医療現場でどのように貢献しているかについて理解を深めます。
 本研究会は、ニューセラミックス懇話会(本体)と同バイオ関連セラミックス分科会の共催の合同研究会で、分科会が企画を担当しました。この機会に懇話会(本体)会員の皆様に分科会の活動を広く知っていただければと思います。


日時:2013年(平成25年)10月18日(金)14:00~17:00
場所:たかつガーデン 3階 カトレア
(大阪市天王寺区東高津町7-11)

(1)技工所の立場からみたデンタルCAD/CAMテクノロジーの進展
和田精密歯研株式会社
樋口 鎮央 氏
 国内においても急速に普及して広まっているCAD/CAMシステムや最新の3D造形装置であるAMシステム等を弊社でも早くより導入し、臨床応用しているが現在では、クラウンやインプラント上部構造等を製作する症例報告も多くなっている。
 最新のAMシステムやCAD/CAM技術を使用することによって再現性の高い、安心安全で安定した補綴物の提供ができるようになるものと思われる。
 今回、弊社におけるデジタル技工の現状を踏まえて報告したい。

(2)CAD/CAMシステムを応用した歯科補綴治療の現状と展望
大阪歯科大学
末瀬 一彦 氏
 1970年代に、工業界で使用されていたCAD/CAMシステムが歯科医療に導入されて以来、これまでに急速な進展がみられる。歯科用CAD/CAMシステムの基本は、歯型や支台歯をスキャニングし、CADによって設計し、そのデータをCAMに送信して切削加工、あるいは造形レイアウトから3Dプリンター方式によって積層造形され、補綴装置が製作される。これまで歯科補綴治療は、金属材料を用いることがゴールドスタンダードであり、社会保険診療においても金銀パラジウム合金が主流であった。しかし、近年金属材料に対する問題点がクローズドアップされ、最近では、セラミックス材料や限りなくセラミックスに近いハイブリッド型コンポジットレジンが注目されている。特に、ジルコニアはこれからの歯科補綴治療のキーマテリアルと考えられる。今回、歯科補綴治療にCAD/CAMシステムが導入されてきた現状と材料の変遷、展望について述べる。



ニューセラミックス懇話会 第210回特別研究会
技術・情報の交流と創造展
 ニューセラミックス懇話会では、毎年12月に行われる研究会を「特別研究会」として開催しています。通常の「研究会」とは趣旨が異なり、「特別研究会」は、ニューセラミックス懇話会の会員の皆様から自社製品、技術、研究等の情報を積極的にアピールして頂く情報発信の場、また会員相互の情報交流を密にする場にしたいと考えています。会員の皆様にメリットのある内容で研究会を企画しています。
 アベノミクスや2020年夏のオリンピックの東京開催が決まり、景気は回復の傾向を示していますが、世界経済の先行きは不透明な面もあります。このような時にこそ、自らの研究や開発成果を積極的に発信し、様々な分野や価値観をもった人々と交流することにより、新たなビジネスチャンスが生まれるのではないかと考えています。会員の皆様の多数のご参加を心よりお待ち申し上げます。

日時:2013年(平成25年)12月20日(金) 13:45~18:30
場所:たかつガーデン 3階 カトレアおよび2階 コスモス
(大阪市天王寺区東高津町7-11)

(1)基調講演(1) 私の研究履歴書~ガラス半導体、超イオン伝導ガラスからゾルーゲルまで~
大阪府立大学
名誉教授 南 努 氏
 「若手研究者に向けて」という要請に沿って、50年にわたる研究経験のなかから、(1)ガラス半導体の開発、ことにn型ガラス半導体の開発、(2)超イオン伝導ガラスと全固体2次電池への応用、(3)超急冷による新種ガラスの開発、(4)ゾルーゲル法による機能性コーティング膜の開発について述べる。(4)については、特に「産学連携」による工業的な開発事例を取り上げる。若手研究者に何らかの示唆を与えることができれば幸いです。

(2)基調講演(2) 環境対応・省エネに向けた自動車用セラミック製品
日本特殊陶業株式会社 技術開発本部 研究開発センター
次長 光岡 健 氏
 近年、燃費、環境規制の高まりを受け、欧州では燃費のよい小排気量の直噴ターボエンジンやディーゼルエンジンが広く普及してきている。日本特殊陶業(株)では、これら燃費、環境性能に優れたディーゼルエンジンやターボエンジンに必要とされる各種セラミックス製品の開発を行っており、ここでは、耐熱性に優れたセラミックグロープラグやサーミスタ温度センサーについて主に紹介する。

(3)産・学・官 会員によるポスター・製品発表(19件)
(4)会員交流会




バイオ関連セラミックス分科会 第44回研究会

「整形外科用医療機器の現状と医療機器事業の育成政策」
 「医療産業を育成しよう」という言葉が方々で行き交うようになりました。治療に係る技術を結集して患者のQOLを確保することに加えて、医療製品のものづくり、健全な病院運営など、総合的な視点で医療をとらえる必要があります。その中で医療機器が重要な働きを果たしていることはいうまでもありませんが、現実にはいろいろな課題を有しながら治療に使用されています。また、経産省と厚労省が一体となって「課題解決型医療機器の開発」などが推進され、中小企業のものづくり力を医療分野に活用し、医療機器の事業化を促進する施策も展開されています。今回は臨床現場における課題を知り、課題解決に取り組む方策を理解したいと思います。

日時:2014年(平成26年)2月7日(金)13:50~16:50
場所:たかつガーデン 2階 ガーベラ
(大阪市天王寺区東高津町7-11)

(1)整形外科用医療機器の現状と課題
~人工股関節における機器の開発・発展に臨床の要求がどのように影響してきたか~
中部大学 生命健康科学部
猪田 邦雄 氏
 機器研究の進歩により治療方法も改善されてきているが、時には臨床の要求が研究の目的や成果に影響する。その要因としては手術手技、医療の機能分担や診療報酬制度などの医療制度、医療の効率化や収益性などが大きい。
 人工股関節の開発・改良の過程では、摩擦や摩耗の軽減は重要な課題であり、ようやく耐用年数も30年となってきたが、臨床の要求がどのように影響しながら発展してきたかについて、臨床の立場から考察してみたい。

(2)経済産業省で実施している医療機器分野進出企業への支援内容について
経済産業省 近畿経済産業局
二目 真次 氏
 我が国医療機器産業は、輸入超過で推移しており、日本が誇る「ものづくり技術」が活かしきれていない状況にある。経済産業省では、様々な施策を展開し、地域発の医療機器を創出し、医療機器産業の国際競争力強化及び地域活性化を図っている。本講演では、施策紹介はもとより、その背景や手続等について説明する。また、平成26年度予算についても、最新情報を紹介する。皆様の目的に合った施策を見だして、是非、応募して下さることを期待したい。