■ 2012年4月~2013年3月の研究会実施記録


第201回研究会
(センシング技術応用研究会との合同開催)
「発光ダイオード(LED)材料」
 今回の研究会は、センシング技術応用研究会(SSTJ)とニューセラミック懇話会(NCF)との共催で行います。今回の研究会では、発光ダイオード(LED)材料を取り上げました。1件目の講演では、紫外線照射で発光する新規な酸化亜鉛ナノ粒子について、2件目の講演では、半導体としてのLEDの発光の仕組みから各種の応用について説明して頂きます。また、LED材料や製品の評価装置についての紹介もございます。

日時:2012年(平成24年)4月27日(金)13:30~16:45
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(大阪市北区中之島1-1-27)
(1)酸化亜鉛ナノ粒子塗布型紫外線発光ダイオードの開発
国立大学法人 島根大学 総合理工学研究科 機械・電気電子工学領域
教授 藤田 恭久 氏
 照明装置として注目される白色発光ダイオード(LED)は蛍光灯に比べコストが高いことが問題である。島根大ではアクセプタである窒素をドープした酸化亜鉛(ZnO)ナノ粒子を開発し、これを用いて紫外線発光するZnO ナノ粒子塗布型発光ダイオードを世界で初めて開発した。ガラス基板上にZnOナノ粒子を塗布する構造のため、単結晶基板やエピタキシャル成長が不要で、低コスト固体照明装置の実現が期待できる。

(2)LEDの基礎と応用
阿南工業高等専門学校 電気電子工学科
准教授 長谷川竜生 氏
 低消費電力、長寿命、省スペース、高速応答性などの特徴を持ったLED は、現在、第4世代の光源として期待され、照明分野、農業分野、環境分野、医療分野などさまざまな分野に利用が拡大しています。本講演では、LED の発光の原理を「半導体とは何か」から始めて説明します。次に、LED素子の構造・種類、電気光学的特性などLED に関しての基本的な説明をした上で、最後に実際の各種応用例を紹介致します。

(製品紹介)LED材料・製品の評価装置のご紹介
大塚電子株式会社 開発生産本部 開発2部
部長 大久保和明 氏



バイオ関連セラミックス分科会 第37回研究会
「骨の損傷と修復」
 一般に、加齢にともなう骨の脆弱化により、骨折、脊椎疾患、関節機能の低下などが多く発生するようになり、その対策は高齢社会における重要な課題の一つである。これらの骨の損傷に対して、通常、生体材料を用いた機能修復が行われるが、同時に骨のりモデリングによる構造・機能の適応/変化も生じる。そこで、今回は、臨床現場において行われている脊椎疾患治療の現状と課題、および骨のリモデリングのメカニズムに関する最新の研究成果をご講演頂き、骨・関節が損傷を受けた場合にその機能を修復させるために必要な生体材料の今後を討論する。

日時:2012年(平成24年)5月25日(金)14:30~17:15
場所:(株)島津製作所 関西支社 マルチホール
(大阪市北区芝田1-1-4 阪急ターミナルビル14F)

(1)高齢者の脊椎再建手術の現状と今後の課題
三重大学大学院 医学研究科
明田 浩司 氏
 加齢に伴う脊椎骨の脆弱化および椎間板変性は、様々な脊椎疾患の発症に関与する。これらの脊椎疾患に対し、様々な生体材料を用いた脊柱再建術が行われてきている。脊椎の固定、矯正には、チタン合金を用いた脊椎インプラントが用いられ、脊椎骨内補填には、セラミックス系材料が使用され、椎間には、スペーサー/ケージ(チタン製、カーボン製)が使用されている。これら生体材料を用いた脊椎外科手術の現状と課題に関して述べる。

(2)骨の構造・機能適応ダイナミクスの階層性:システムバイオメカニクス
京都大学 再生医科学研究所
安達 泰治 氏
 骨のリモデリングによる構造・機能関係の適応変化について、力学的な観点から進めているシステムバイオメカニクス研究を紹介する。特に、骨の「力学的階層性」に着目し、海綿骨の巨視的な骨梁構造が有する機能的な形態が、細胞・分子レベルにおけるメカノセンシングと細胞間コミュニケーションによってどのようにもたらされるかについて、骨細胞を用いた実験と数理モデリング・計算機シミュレーションの最新の結果を交えながら考察する。



第202回研究会、バイオ関連セラミックス分科会 第38回研究会
「歯科用インプラントの現状と展望」
 生活の質を維持するうえで、食べる楽しみを獲得する医療の技術はきわめて重要です。歯科におけるインプラントの技術は、身近な治療になってきましたが、解決すべき課題も指摘されています。本研究会では、インプラント治療の現状や課題を臨床の立場から解説いただくとともに、材料の現状および今後の展開を求められる機能を論じて頂き、歯科用インプラントの将来を考えます。
 本研究会は、ニューセラミックス懇話会(本体)と同バイオ関連セラミックス分科会の共催の合同研究会で、分科会が企画を担当しました。毎年1年に1度、分科会が企画した共催の合同研究会を開催しています。この機会に懇話会(本体)会員の皆様に分科会の活動を広く知っていただければと思います。


日時:2012年(平成24年)6月29日(金)14:10~16:45
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(大阪市北区中之島1-1-27)

(1)インプラント治療の現状と新しい治療技術開発への期待
大阪歯科大学 口腔インプラント科
教授 馬場 俊輔 氏
 インプラント治療は、歯科の重要な分野に成長した。インプラント治療により高い生活の質(QOL)を獲得できる。一方で、インプラント治療における課題も指摘されている。本講では、インプラント治療の基礎を概説した後に、より臨床成績を上げるための治療技術と材料開発について論じる。さらに、歯科における再生医療を具現化するための手法について触れたい。特に、行政からの要請とともに、メーカーの開発者とアカデミアの研究者が考えるべきであるコスト・ベネフィットについて視野に入れ、審査体制も含めた今後の展望を述べる。

(2)歯科用インプラント材料の現状と展望
東京歯科大学 口腔科学研究センター・口腔インプラント学研究部門
教授 吉成 正雄 氏
 歯科インプラントは、大きな咬合力を恒常的に受けているだけでなく、骨組織、上皮下結合組織、上皮組織と接し、その一部が口腔内に露出している。したがって、歯科インプラントは力学的特性だけでなく、接する生体組織に適合した表面を持っていなければならない。本稿では、インプラント材としてのチタン、インプラント材としてのアパタイト、インプラント表面と生体の反応、そしてインプラントの表面改質について解説する。



第203回研究会
「ニューカーボン:グラフェンとナノチューブ」
 今回は、黒鉛や活性炭などの古くから用いられている炭素材料とは異なり、1990年代以降に発見され、特に注目されているニューカーボンに属する「グラフェン」と「ナノチューブ」を取り上げました。1件目は、2010年度のノーベル物理学賞の対象になったグラフェンの物性、製造法および応用に関する講演です。2件目は、1991年に日本で発見され、現在、技術研究組合TASCで実用化が検討されている単層カーボンナノチューブに関する講演です。両講演ともニューカーボンに関する基礎から応用に至る興味深い内容になっています。

日時:2012年(平成24年)9月4日(火)14:00~16:40
場所:大阪府商工会館 6階601号室
(大阪市中央区南本町4-3-6)

(1)グラフェンの基礎と応用
国立大学法人 福井大学 工学研究科 電気・電子工学専攻
教授 橋本 明弘 氏
 炭素系の新たな材料であるグラフェンが近年大きな注目を集めています。グラフェンは2004年にマンチェスター大学のグループにより報告されて以来、欧米を中心に大変活発に研究されている新しいタイプの炭素系材料です。2010年度のノーベル物理学賞がグラフェンの研究に与えられたことはまだ記憶に新しい出来事です。本講演では、グラフェンに関する基礎的な物性や作製技術の現状及び応用上の課題などを中心にお話しできればと思います。

(2)単層カーボンナノチューブ複合材料の開発と実用化に向けて
技術研究組合 単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC) 技術普及部
技術普及部長 上野 光保 氏
 技術研究組合TASCは平成22年度よりNEDOの委託事業として、「単層カーボンナノチューブ」(以下、「SWCNT」)の実用化を促進する為、SWCNTの形状の制御や既存材料との複合化の研究開発やSWCNTの安全評価技術の開発を進めている。その研究成果のアルミとの複合化した高伝熱材料の量産化や樹脂やゴムとの複合化した導電性材料等を紹介する。



第204回研究会
「環境に優しいセラミックス合成技術への挑戦」
 従来のセラミックスの合成技術では、優れた電気的あるいは光学的な特性を有するセラミックスを作製するために高温・高圧のプロセスや鉛などの有害な物質を必要としています。このような課題を解決するために、環境に優しいプロセス技術や材料を用いたセラミックスの合成技術が求められています。今回は、水溶液プロセスによる環境と調和した高機能セラミックス粉末の合成と微構造を制御することによりPZTの特性を超える非鉛系圧電セラミックスを実現するという挑戦的な内容の2件の講演を予定しています。

日時:2012年(平成24年)10月12日(金)14:00~16:40
場所:ホテル アウィーナ大阪 3階 二上
(大阪市天王寺区石ヶ辻町19番12号)

(1)水溶液プロセスによるセラミックス粉末合成の新展開
   〜環境調和合成と材料の高機能とは両立するか?〜
東北大学 多元物質科学研究所 新機能無機物質探索研究センター
センター長・教授 垣花 眞人 氏
 従来、環境調和合成と材料の高機能とは両立しないと考えられてきたが、本講演では、環境調和プロセスの一つに分類できる水溶液プロセスを活用したセラミックスの合成とその高度機能化の実例を紹介する。具体的には、チタン、タンタル、ニオブ、ケイ素、ビスマスなどの難水溶性元素の親水錯体化技術を紹介し、それらを用いた水溶液プロセスによる蛍光体および光触媒の合成と新物質探索及び高度機能化の実例を紹介する。

(2)PZTを超える圧電性能を持つ非鉛系圧電セラミックスの開発は可能か?
山梨大学 大学院 医学工学総合研究部 応用化学専攻
教授 和田 智志 氏
 PZTを超える圧電特性を非鉛系セラミックスで実現する、つい最近まで夢物語で絶対に無理だと考えられてきたこの定説が今覆されようとしている。そこで、この講演ではPZTの高い圧電特性の起源である微構造を説明し、その上でPZTの圧電特性を超える理想的な微構造を提案し、それを実現する手法を説明する。



バイオ関連セラミックス分科会 第39回研究会

「医薬品・医療機器の承認取得の現状と課題」
 医薬品・医療機器などの開発に関して、日本には素晴らしい技術やシーズがあるにもかかわらず、すぐに商品化されて患者の治療に生かされているケースはそれほど多くない。この理由の1つは承認取得の複雑さにあると言われている。その結果、これらの分野、特に治療系の医療機器では、多くを外国製に頼らざるを得ない現状となっている。これは、日本の医療機器産業および医療現場にとって重大な問題である。そこで、今回は、医薬品・医療機器の承認取得に関する現状と課題、承認取得を支援する薬事戦略相談、実用化に向けた企業の取り組みについてご講演頂き、医薬品・医療機器の承認取得などについて討論する。

日時:2012年(平成24年)10月31日(水)14:00~17:00
場所:(株)島津製作所 関西支社 マルチホール
(大阪市北区芝田1-1-4 阪急ターミナルビル14F)

(1)承認取得の効率化を目指す薬事戦略相談について
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 審査マネジメント部 薬事戦略相談室
テクニカルエキスパート 竹内 啓泰 氏
 日本発の革新的医薬品・医療機器の創出に向けて、現状では有望なシーズを発見した大学・研究機関、ベンチャー企業等の製品化につなげるための開発戦略に不案内な場合も多い。これら有望性の高いシーズの実用化に向け、シーズ発見後の大学・研究機関、ベンチャー企業を主な対象として、医療機器については候補選定の最終段階から、臨床開発初期段階に至るまでの必要な試験等に関する相談への指導・助言を目的として薬事戦略相談が創設された。今回はこの薬事戦略相談についてその利用の仕方などを含め説明する。

(2)新規医療機器の臨床研究と産業化の課題
大阪大学 医学部附属病院
未来医療開発部 未来医療センター
准教授・副センター長 名井 陽 氏
 医療機器、特に治療系の医療機器は深刻な輸入超過状態にあり、日本の医療機器産業および医療現場においても重大な問題として認識されている。一方、わが国では特定機能病院等の臨床研究体制の整った医療機関においては企業から未承認医療機器の提供を受けて治験外の臨床研究を実施することが可能である。このような方法をうまく利用して医療機器開発を有利に進めることは、国際競争力の向上にも繋がる可能性がある。

(3)生体置換型有機無機複合人工骨の実用化 ~開発から承認取得までの実例~
HOYA株式会社 ペンタックスニューセラミックス事業部
庄司 大助 氏
 現在、人工骨は幅広い領域で自家骨に代わる骨修復材料として普及しておりその安全性と有効性は臨床においても確認されている。本講演では弊社で承認を取得した生体置換型有機無機複合人工骨を実例として、新規医療機器の実用化に向けた企業の取り組みを説明する。



ニューセラミックス懇話会 第205回特別研究会
技術・情報の交流と創造展
 ニューセラミックス懇話会では、毎年12月に行われる研究会を「特別研究会」として開催しています。通常の「研究会」とは趣旨が異なり、「特別研究会」は、ニューセラミックス懇話会の会員の皆様から自社製品、技術、研究等の情報を積極的にアピールして頂く情報発信の場、また会員相互の情報交流を密にする場にしたいと考えています。会員の皆様にメリットのある内容で研究会を企画しています。
 景気の先行きは全く不透明です。このような時にこそ、自らの研究や開発成果を積極的に発信し、様々な分野や価値観をもった人々と交流することにより、新たなビジネスチャンスが生まれるのではないかと考えています。会員の皆様の多数のご参加を心よりお待ち申し上げます。

日時:2012年(平成24年)12月14日(金) 13:45~18:30
場所:たかつガーデン 3階 カトレアおよび2階 コスモス
(大阪市天王寺区東高津町7-11)

(1)基調講演 セラミック膜分離技術の展望-NF膜を中心として-
日立造船株式会社 事業・製品開発本部 開発戦略室
開発戦略室長 相澤 正信 氏
 ゼオライトは、ケイ素やアルミニウムなどのカチオンと酸素アニオンから形成され、結晶中にはナノオーダーの細孔チャンネルが存在する。Al/Si 比はゼオライトの親疎水性とイオン交換容量を、カチオン種はカチオン種自身の性質に基づく吸着性とミクロ細孔径を支配する因子となりうる。かかる因子を制御したゼオライト膜は、ナノオーダーの物質の分離に応用可能となる。本講では、現状のセラミックナノ分離膜技術を俯瞰し将来を展望する。

(2)会員企業による口頭発表
  • 人工関節の機能高度化を目指した研究開発について
    ナカシマメディカル株式会社 総合企画部 開発部 植月 啓太 氏
  • ジルコニアボールを用いた粉砕・分散技術
    株式会社ニッカトー 研究開発部 古藤 野枝 氏

(3)産・学・官 会員によるポスター・製品発表(21件)
(4)会員交流会




バイオ関連セラミックス分科会 第40回研究会

「ドラッグデリバリーシステムとセラミックス」
 ドラッグデリバリーシステム(DDS)は、必要な薬物を必要な時間に必要な部位で作用させるためのシステムであり、薬物療法にとってきわめて重要な考え方です。これまでに、生体親和性に優れたセラミックスを薬物担体として用いる試みが進められています。今回は、アパタイト系セラミックスをDDSに用いる試みを精力的に進めておられる講師から、最前線の技術動向をご紹介頂きます。

日時:2013年(平成25年)2月1日(金)14:00~17:00
場所:大阪市中央公会堂 地階 展示室
(〒530-0005 大阪市北区中之島1丁目1番27号)

(1)病態依存性薬物放出制御能を有するインテリジェントセラミックスを用いた人工骨の設計
武蔵野大学 薬学研究所
大塚 誠 氏
 骨細胞機能に基づき設計されたアパタイト系生体親和性無機材料を基盤に薬剤を選択して人工骨を設計することにより、積極的に病態を制御する薬物送達デバイスとしての機能を持たせることができる。これらのインテリジェント薬物放出機能をIn-Vitro薬物放出試験や病態動物モデルを用いて検証した。

(2)ナノハイドロキシアパタイトを用いた難水溶性薬物の溶解度と腸管吸収の改善
株式会社サンギ 新規事業開発本部
宮坂 亮介 氏
 近年、創薬戦略の変化から難水溶性の薬物が増加傾向にあり、その溶解性と体内吸収の低さにより、開発を断念するケースが増えている。我々は、ナノハイドロキシアパタイトを薬物の表面に被覆することにより、多くの難水溶性薬物の溶解度と腸管吸収を改善させることに成功した。本講演では、抗癌剤であるシスプラチン及び高脂血症治療薬であるベザフィブラートにナノハイドロキシアパタイトを適用した事例について紹介する。