■ 2006年4月から2007年3月までの研究会実施記録 

第171回研究会(センシング技術応用研究会と合同開催)
日時:2006年(平成18年)4月20日(火)14:00〜16:40
場所:大阪市中央公会堂 地階 展示室
〒530-0005 大阪市北区中之島1-1-27

(1)燃料電池に係る水素用ガスセンサの開発動向
新コスモス電機株式会社 R & Dセンター R & D推進室
特別研究員 北口 久雄 氏
 エネルギーとしての水素は(1)CO2を排出しないクリーンなもの(2)有限な化石エネルギーに替わるものとして位置づけられ、世界各国で技術的開発が盛んである。その中で燃料電池はキーテクノロジーである。他方水素は爆発性のガスでその安全性技術の開発も必要であり、そのなかで水素ガスセンサは重要な役割を担い、近年その開発も盛んである。ここでは、水素ガスセンサとしてすでに実用化段階にあるものと開発中のものを可能な限りその基本原理に立ち返って解説したい。

(2)表面プラズモン励起によるナノ構造・機能評価とナノデバイス
新潟大学 自然科学系・工学部
教授 金子 双男 氏
 超薄膜の作製とその機能を利用した電子・光デバイスについて紹介する。特に光で励起され金属表面を伝搬する自由電子の縦波である表面プラズモン励起を用いたナノ構造・機能評価とナノデバイスについて述べ、分子発光に起因したナノ領域の近接場光と2次元光波(表面プラズモン) やエバネセント波を利用したナノ加工やセンシングについて説明する。



バイオ関連セラミックス分科会第13回研究会
「材料工学分野において確立された技術のバイオ関連分野への応用」
 バイオ関連分野は、様々な分野の研究者がそれぞれの知識を持ち寄り、発展を続けてきました。その中には、他の分野で確立された技術を応用して成功した例も多数存在します。第13回研究会では材料工学分野において確立された技術に着目し、その応用である「機能性ナノポーラスガラス基材を用いた遺伝子検出技術」と「アパタイト配向性に注目した再生・疾患硬組織の骨質評価」に関する話題をご紹介いただきます。

日時:2006年(平成18年)5月26日(金)14:00〜17:00
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール 阪急ターミナルビル14F
(大阪市北区芝田1-1-4)
(1)機能性ナノポーラスガラス基材を用いた遺伝子検出技術 −プローブオンキャリア型DNAチップの開発−
株式会社 荏原製作所
長澤 浩 氏
 遺伝子の塩基が一つだけ異なることで、薬の効き方が変わる、一塩基多型(SNPs)を知ることは、「テーラーメイド医療」の基盤になる。ホウケイ酸ガラスの分相現象を利用して作られた、ナノサイズ細孔を持つ多孔質ガラス粉末上でオリゴヌクレオチドを合成し、担体一体型のままガラスプレート上に接着、集積化するプローブオンキャリア法を考案し、高い再現性を持つSNPs検出ツールであるPOC型DNAチップを開発した。

(2)アパタイト配向性に注目した再生・疾患硬組織の骨質評価
大阪大学大学院工学研究科
中野 貴由 氏
 疾患・再生硬組織の機能・組織診断のためには、従来から広く用いられている骨量(アパタイトの密度)や骨形状の評価では不十分である。本講演では、硬組織の骨質評価法の一つとして、アパタイトの配向性に注目した結晶学的アプローチについて紹介する。
硬組織内のアパタイトの配向性は、in vivo応力をはじめとする外的因子の作用に敏感であり、配向度合いを指標とすることで、硬組織の再生過程、機能の変化過程、硬組織疾患の形成過程、判定、創薬支援等、幅広く利用できる。



第172回研究会

「マイクロ・ナノレベルの材料の機械特性試験」
 近年、材料開発技術はナノレベルでの特性を評価することがますます重要となっています。また、超小型の機械部品(MEMS)の取り扱いに関する研究も非常に活発に行われており、その応用も脚光を浴びています。このようなマイクロからナノにいたる微細な材料および部品が現実に製品として実用化されており、今後同じスケールでの材料評価が必須となってきます。特に微小な材料にはサイズ効果が大きく影響しており、同時に表面および界面での材料特性を把握することが重要です。本研究会では、MEMSデバイスの疲労特性評価および材料界面での透過型電子顕微鏡によるin-situな破壊試験についての講演を行います。

日時:2006年(平成18年)6月16日(木)14:10〜16:50
場所:岩谷産業(株) 大阪本社 9階 会議室
(〒541-0053 大阪市中央区本町3丁目4番8号)

(1)単結晶シリコン薄膜の引張疲労試験 −雰囲気湿度の影響評価−
京都大学大学院 工学研究科 マイクロエンジニアリング専攻
助教授 土屋 智由 氏
 応用が急速に広がるMEMSデバイスの信頼性向上のため、構造材料として広く使用される単結晶シリコンの引張疲労特性に雰囲気湿度が与える影響を評価した。評価にあたり独自の試験片把持法(静電チャック法)を用い、試験空間湿度の制御が可能な薄膜引張疲労試験装置を開発した。結果、湿度による疲労寿命の低下を確認した。また、低湿度から高湿度の環境における繰返し荷重と寿命の関係から疲労特性を評価、寿命予測を行った。

(2)サブミクロン〜ナノ構造体の界面き裂発生および伝播特性
京都大学大学院 工学研究科 機械理工学専攻
助手 平方 寛之 氏
 サブミクロンからナノオーダーの材料を組合せることによって、MEMSやLSIのような多様な機能を発現する微小構造物を創ることができます。しかし、材料の組合せによって生じる異材界面は原子構造の不整合や変形特性のミスマッチのため複雑な破壊が進行する箇所でもあります。
 本講演では、微小な材料の界面破壊を支配する力学法則を解明するための評価実験方法の開発ならびにそれに基づく力学解析例を紹介します。



バイオ関連セラミックス分科会第14回研究会
「生活の中の身近なセラミックス −化粧品、衛生陶器の新技術−」
 わたしたちが、毎日何気なくふれ、利用しているものには多くのセラミックスが使われています。古くは数万年前まで遡ることができるとされる化粧品や給排水に関わる衛生陶器など、長い歴史があります。これらの身近にあるセラミックスも、近年のナノテクノロジーなど、技術の進展に伴い、技術革新を繰り返しています。当日は、化粧品、衛生陶器を題材に、それぞれの開発にかかわる第一人者から、最新の技術動向をご紹介いただきます。

日時:2006年(平成18年)7月14日(金)13:45〜16:45
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(大阪市北区中之島1-1-27)
(1)メイクアップ化粧品における無機粉体
日本ロレアル株式会社
鈴木 高広 氏
 肌を美しく彩る化粧品は、無機粉体が重要な役割を担う。若年層の肌質は、比較的きめが細かく、透明感を感じさせる。加齢とともに、しみやくすみ、メラニン色素の増大による透明度の低下、肌面の反射光の減少、シワやタルミによる平滑性の喪失などの現象が進行する。肌質変化の解析は、美的外観を補うために用いられるメイクアップ用粉体に必要な機能と特性を明確に示す。光学的解析に基づいた、最近の化粧用無機粉体の研究開発の動向を紹介する。

(2)汚れ・カビを防止する衛生陶器の表面改質と新しい表面改質技術(エアロゾルデポジション法)について
東陶機器株式会社
清原 正勝 氏
 幣社の衛生陶器に標準採用している新防汚技術(セフィオンテクト技術)についての紹介と、これまでのセラミックの常識では、考えられない熱プロセスを用いないで、緻密な製膜体を作製する、新しい表面改質技術(エアロゾルデポジション法)について、その概要とその応用について紹介する。



第173回研究会
バイオ関連セラミックス分科会第15回研究会

「かたちを作る・かたちを測る -金属材料の新しい製造法と計測法-」
 セラミックスは、原料の調合、成形、焼成、加工の工程を経て製品が作られています。今回の研究会では、精密に成形し、焼結体を作る技術、ならびに製品が望みの形状になっているかを測定する技術を取り上げます。これらの技術を発展させることは、製品の歩留まりと品質保証を高め、省資源・省エネルギー・製造コストの低減をもたらします。当日は、粉末冶金プロセスに射出成型法を利用して製品のかたちを精密に作る技術の開発、ならびにレーザ光源を用いて製品のかたちを精密に測る技術の開発に関して、これまでの開発の流れと最新の技術動向をご紹介いただきます。

日時:2006年(平成18年)9月15日(金)14:00〜17:00
岩谷産業株式会社 大阪本社 9階 会議室
(〒541-0053 大阪市中央区本町3丁目4番8号)
(1)MIM(Metal Injection Molding)Processによる金属部品製造およびその現状
大阪冶金興業株式会社
寺内 俊太郎 氏
 MIMの特徴は複雑形状(プラスチックのように射出成形して造形するため自由度の高い環境で開発設計が可能)の金属部品がニアネットシェイプに得られることが大きな特長です。従来技術の圧粉成形法ではできない高密度、高強度の製品が得られ、また封孔処理なしでメッキなどの表面処理が可能など多く特長があり、寸法公差、量産性コストと小物部品に適したプロセスといえます。
本プロセスによる製造工程、部品製造の現状、今後の展開について紹介します。

(2)光を用いて変形・形状を精密に可視化して測る
兵庫県立大学大学院
格内 敏 氏
 1960年にレーザ光源が発明されると、実物体の変形を高精度に計測できるホログラフィ干渉法、スペックル干渉法などの干渉計測技術が開発された。ここでは、物体の三次元情報の記録・再生が可能なホログラフィ干渉法の人工股関節部への応用計測等等について述べる。



ニューセラミックス懇話会 第174回研究会

「マイクロセラミックプロセスを駆使したエネルギー変換デバイスの新展開」
 
燃料電池、二次電池、電気化学キャパシタなどのエネルギー変換デバイスは、家庭用あるいは自動車用の分散型電源として、そ の重要性がますます高まっています。デバイスの飛躍的な高性能化が求められる中、新材料の探索やその複合化、プロセスの最適化などについての研究が活発に なされています。このようなエネルギー変換デバイスにおいては、電解質、電極のいずれかが酸化物(セラミックス)であるケースが多く、セラミックプロセス に着目して新しいデザインのデバイスを創出しようという動きが、最近注目を集めています。本研究会では、マイクロセラミックプロセスを駆使することによっ て、新しいタイプの二次電池や燃料電池を開発した事例を取り上げ、その詳細をわかりやすくご説明いただきます。

日時:2007年(平成19年)12月1日(金)14:00〜16:50
場所:岩谷産業(株) 大阪本社 9階 会議室
(〒541-0053 大阪市中央区本町3丁目4番8号)
(1)高次規則配列複合体を用いたエネルギー変換デバイス
首都大学東京 都市環境科学研究科 環境調和・材料化学専攻
教授 金村 聖志 氏
 オパールやモルホ蝶に代表される規則的に配列した構造は、いろいろな機能を有する材料を生み出す一つの手がかりである。また、オパール構造体を鋳型として作製されるインバースオパール構造体も同様に興味深い。これまでに、インバースオパール構造体を用いたリチウム電池用電極などの作製が報告されている。本研究では、このインバースオパール構造体を利用し、Li+イオン伝導性セラミックス、リチウム電池電極材料用セラミックス、燃料電池用シリカ多孔体などの作製を行ってきた。このような規則構造を有する材料の構造的な特長を生かし、電気化学反応界面を増大させた電極システムあるいは規則的な多孔性を有する電解質システムについて紹介する。

我が社の製品・我が社の技術(製品・技術紹介)
超高温炉と小型真空雰囲気炉 株式会社 倉田技研
倉田 和彦 氏、安東 元樹 氏
東レのセラミックス製品・技術について 東レ株式会社 セラミックス事業部
柳沼 徹 氏

(2)セラミックリアクターの研究開発について
独立行政法人 産業技術総合研究所
先進製造プロセス研究部門 機能モジュール化研究グループ
研究グループ長 淡野 正信 氏
 環境・エネルギー問題の解決に向けた有力なアプローチとして、エネルギー創製や物質の合成・分解浄化が高効率で実現可能な、セラミック系の電気化学リアクターへ寄せられる期待は高い。マイクロSOFCや環境浄化リアクターとしてその実用化を図るために、ナノスケールの構造制御による従来にない分子選択性を実現した例や、ミクロ部材の集積モジュール化による飛躍的な小型高効率化及び適用性向上の検討例について紹介する。



バイオ関連セラミックス分科会第16回研究会
「分子イメージング -生体内分子プロセスの可視化-」
 近年、分子イメージングの研究と実用化に大きな期待が寄せられています。分子イメージングとは、目印となる化合物(標識化合物)を遺伝子やたんぱく質などの分子に結合させることにより、生体内での遺伝子やたんぱく質の量や働きを、生物が生きたままの状態で画像化することです。この技術は、がんなどの疾病の超早期発見および治療にきわめて有用であると考えられています。米国では、数年前よりNational Institutes of Health (NIH)を中心に大きな予算が計上され、多くの大学や研究機関で活発な研究活動が開始されており、分子生物学や画像医学に関連する企業も競って参入しています。欧州においても、分子イメージングがEuropean Commissionにより重要課題に選定され、本格的な研究体制が構築されつつあります。このような分子イメージングには、ナノサイズのセラミックス材料が役立つ可能性があります。また、次世代医療技術として注目される分子イメージングの動向を知っておくことは、バイオ関連セラミックスを取り扱う者にとってきわめて有意義であると思われます。当日は、陽電子断層撮影(PET)用分子プローブおよび核磁気共鳴(MR)法を用いた分子イメージングに関して、最新の研究動向をご紹介いただきます。

日時:2008年(平成20年)1月12日(金)14:00〜17:00
場所:株式会社島津製作所 関西支社 マルチホール 阪急ターミナルビル14F
(大阪市北区芝田1-1-4)
(1)分子イメージングのためのPET用分子プローブの設計と開発
京都大学大学院 薬学研究科
久下裕司 氏
 最近、生化学・生物学などの基礎研究および臨床診断・治療への応用を目的として、細胞/分子レベルの生物学的・分子生物学的なプロセスの空間的・時間的分布をインビボで画像化する、分子イメージングが注目されている。この分子イメージングにおいて、分子プローブは対象とする生物学的・分子生物学的なプロセスを体外から測定するために用いる分析用試薬の役割を果たすものである。したがって、分子プローブの開発には、生体内で起こっている生理的または病的な生命現象に特異的に発現/変化する生体内分子に特異的、選択的に結合あるいは相互作用する分子の設計が不可欠である。本講演では、PET、SPECTによる分子イメージング用分子プローブの設計と開発について述べる。

(2)ナノ素材を用いたMRによる細胞・分子イメージング
滋賀医科大学 MR医学総合研究センター
犬伏 俊郎 氏
 磁気共鳴(MR)法は今日、日常的に利用される臨床画像診断法として定着している。その特徴は、高解像度の画像が無侵襲で得られるため、繰り返して計測ができる点にある。この特性を生かして、特定の分子や細胞を画像化する「分子イメージング」へのMRの応用が始まっている。本講演では、我々がこれまでに手がけてきた細胞トラッキングを中心に、種々の新しい素材を用いたMRによる分子イメージングを紹介したい。



第175回研究会

「自動車とセラミックス」
 セラミックスは、言うまでもなく、自動車用機器・部品としても重要な材料で、「環境」「安全」「快適」が求められる今後の自動車開発のキーマテリアルであるといっても過言ではありません。そこで、本研究会では、自動車用途としてのセラミック材料の現状と将来展望についてわかりやすくご説明いただきます。また、近年、特にハイブリッド車の開発・普及に伴い、車載用パワーデバイスにも大きな関心がもたれています。そこで、次世代パワーデバイスとして期待されているSiCについて、その単結晶基板作製技術の最新動向についても解説していただきます。

日時:2007年(平成19年)1月25日(木)14:00〜17:00
場所:岩谷産業(株) 大阪本社 9階 会議室
(〒541-0053 大阪市中央区本町3丁目4番8号)

(1)SiC単結晶基板作成技術
独立行政法人 産業技術総合研究所
パワーエレクトロニクス研究センター 結晶成長・評価チームリーダー
西澤 伸一 氏
 炭化ケイ素(SiC)はシリコンを越える次世代パワーデバイス材料として期待されてきた。しかし、デバイスの根幹をなす単結晶基板には、結晶欠陥が多く存在し、いまだにSiCの特性を十分に発揮したデバイスの実用化にはいたっておらず、より高品質なSiC単結晶基板の作製技術開発が急務となっている。本講演では、特にパワーデバイス用としてのSiC単結晶基板の開発状況についてまとめる。

(2)自動車とセラミックス
日本特殊陶業株式会社 総合研究所
第1研究部長 大林 和重 氏
 セラミックスはその機能的特性はもちろん、機械的強度、耐熱性、耐蝕性を備え、車載材料としての過酷な条件を満たすことから、スパークプラグ、センサ、回路基板をはじめ、最近ではインジェクタ、ミリ波レーダまで幅広く用いられている。これらに用いられるセラミックスはアルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア、PZT、誘電体、LTCCとほぼ全種にわたっている。ここでは各種車載セラミックス材料について実例を挙げて紹介する。