地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所

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平成28年度 大阪府立産業技術総合研究所報告(No.30)

 平成28年度大阪府立産業技術総合研究所報告(No.30)を発行いたしました.本号では,比較的長期にわたる研究,試験・指導相談業務での成果をまとめた技術報告5件,新しい知見を報告する技術論文7件をオリジナル論文として掲載しています.

 さらに,専門の研究者や一般読者向けに投稿された学会誌や雑誌等への掲載記事概要57件,研究推進のための学会等での発表,成果普及のための展示会,講演会での口頭発表概要258件,さらに,地方独立行政法人大阪市立工業研究所との合同発表会(平成27年12月1日,大阪産業創造館)での発表概要30件,第3回プロジェクト研究報告会(平成28年3月17日,大阪商工会議所)での発表概要13件,産業財産権概要10件を掲載しました.

 このページでは、技術報告、技術論文の一覧とその概要を掲載しております。
 また技術報告、技術論文は全文をpdfファイルでご覧いただけます。



≪テーマ一覧≫
【技術報告】
高純度鉄中の微量含有成分の分析 塚原秀和

走査電子顕微鏡による結晶方位解析を利用した極微小領域の結晶解析

田中 努・内田壮平・平田智丈
X線分析顕微鏡を用いた非放射性セシウムのダイズへの蓄積に関する検討

陰地威史・喜多幸司・伊藤嘉昭・杉山暁史

市販マイコンによるセンサ情報の収集とインターネット回線による遠隔でのモニタリングに関する一手法

朴 忠植・金子憲一

走査透過電子顕微鏡を用いた電子線回折法による局所構造解析

尾﨑友厚・長谷川泰則

【技術論文】
時分割方式による全周囲から観測可能なホログラフィック3次元ディスプレイ 山東悠介・茨田大輔・谷田貝豊彦
亜鉛-空気二次電池用新規正極触媒の創製 西村 崇・斉藤 誠・中出卓男
金属配線が導入されたITO膜を利用したP3HT:PC61BM型太陽電池の大面積化 田中 剛・米川 穣・森 隆志・佐藤和郎・村上修一・櫻井芳昭
レーザ積層造形法を用いて作製したAC4CHアルミニウム合金の組織と機械的性質 木村貴広・中本貴之
全固体リチウム電池に用いる硫化物系固体電解質粉末の粒子制御 園村浩介・長谷川泰則・中橋明子
選択的レーザ溶融間接法によるセラミックス3D造形に関する基礎的検討 陶山 剛・尾﨑友厚
金属製インプラントの低弾性率化を目指したチタン系粉末のレーザ積層造形法による多孔体の作製 中本貴之・木村貴広・吉川忠作・白川信彦



技術報告及び技術論文概要

【技術報告】

高純度鉄中の微量含有成分の分析
塚原秀和
  
 高純度鉄は,検量線作成のための標準溶液の調整,空試験のための試料など,鉄鋼材料の分析の際に必須となる非常に重要な標準試料である.標準試料を分析で使用するために,予め標準試料の各元素の含有量を正確に把握しておく必要がある.しかし,元素の含有量はppmオーダーと微量なため,JIS規格の分析手法のみで行うことは困難である.昨今,微量成分分析では,ICP質量分析(ICP-MS)が主流となってきたが,ICP-MS分析では高塩濃度の試料が投入できないというデメリットを抱えている.そこで,前処理としてMIBKによる溶媒抽出を用いて鉄を分離除去することで,各成分の定量分析を検討した.なお,MIBK液で鉄と同時に抽出される元素については,秤量値を減らし,直接投入する形で分析を試みた.これらの手法でも分析できない元素に関しては,吸光光度法,燃焼赤外吸収法,ICP発光分析,電気加熱原子吸光法などを検討した.併せて微量成分分析で問題となる環境汚染対策についても検討した.本報では,それらの分析手法と結果について報告する.
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走査電子顕微鏡による結晶方位解析を利用した極微小領域の結晶解析
田中 努・内田壮平・平田智丈
  
 新素材の開発や材料評価において,表面の観察や組成分析は基礎的な情報として非常に重要である.電子プローブ・マイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer: EPMA)は,表面観察だけでなく,試料を構成している元素とその量を知ることができるため,例えば鉄鋼中の不純物の分析など固体材料を扱う分野の研究開発,品質管理,検査など幅広く利用できる分析機器である.近年,材料の組織制御技術の発達により,結晶性材料を構成する結晶構造の同定,さらにその材料の物性に影響を与える結晶方位解析などのミクロ・ナノレベルの解析が求められるようになった.これらの解析は,従来は透過電子顕微鏡を用いる必要があったが,最近ではEPMAを含む走査電子顕微鏡(SEM)に付属した結晶方位解析装置(電子線後方散乱回折装置 Electron Backscatter Diffraction: EBSD)でも解析が可能となり注目されている.本報告では,試料作製装置の一つであるイオンビーム加工機によってサンプルを作製し,SEM/EBSDを用いた極微小領域解析や結晶同定を行った結果について述べる.
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X線分析顕微鏡を用いた非放射性セシウムのダイズへの蓄積に関する検討
陰地威史・喜多幸司・伊藤嘉昭・杉山暁史
  
 2011年に発生した東日本大震災に伴う福島第一原発事故により,広範囲の農地が放射性セシウムに汚染されたため,各種植物内部へのセシウムの蓄積に関し,農業関係者の関心が集まった.東北地方の主要作物であるダイズにおいて,セシウムが蓄積する部位を検討し,蓄積機構を明らかにすることは,安心・安全な作物の提供に貢献する.そこで,ダイズの水耕および土壌栽培が可能な京都大学生存圏研究所と共同研究を行った.本研究では,X線分析顕微鏡の元素マッピング機能を用い,非放射性セシウムを添加して水耕および土壌栽培したダイズの葉や,茎,および種子に対するセシウムの蓄積(分布状況)を検討した.その結果,非放射性セシウムは,カリウムおよびカルシウムと同様に摂取され分布することがわかった.また,マトリックスとして種子粉末に一定量のセシウムを添加した標準試料を作製し,得られた検量線から,種子中のセシウム濃度は,水耕および土壌栽培について,それぞれ約0.9%,0.8%であると推定された.
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市販マイコンによるセンサ情報の収集と
インターネット回線による遠隔でのモニタリングに関する一手法
朴 忠植・金子憲一
  
 世界中の情報をネットワーク的に結ぶ不可欠なインフラとして確立されたインターネット技術に加え,小型,高精度,高機能なセンサ,マイクロコンピュータが低コストで入手できるようになり, IoT(アイオーティInternet of Thingsの略)のキーワードで人と物,物と物に関連する情報をあまねく利活用する製品開発や研究が活発に行われている.一方,当研究所で自動化,計測制御分野を担当する部署では,計測制御対象機器とマイコン,PCを用 いた小規模システムの試作を主としてきたが,数年前より大学との共同研究で垂直軸型風力発電に関するモニタリングシステムの開発を担当した.研究においては,しばしば生じる仕様変更に柔軟に対応し,かつ低コストであることに留意したシステム作りを目指した.本報告では,この研究成果として,低コストで比較的,誰でも入手可能な市販のマイ コンおよびフリーウェアのソフトウェアを 多用したインターネット回線を介したリモートセンシングシステムの構築手法について述べる.
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走査透過電子顕微鏡を用いた電子線回折法による局所構造解析
尾﨑友厚・長谷川泰則
  
 球面収差補正機能付き走査透過電子顕微鏡(Cs-STEM)を用いた電子線回折法による局所構造解析手法について紹介する.産技研が所有するCs-STEM,HD-2700 では試料の結晶方位合わせ用として電子回折モードが装備されているが,電子線回折法を用いて定性,定量的な結晶構造解析を行うためには,事前の入念な校正が必要となる.今回,Cs-STEMの電子線回折法を局所構造解析に利用するための校正を実施したため,その校正手順と電子線回折法を用いた実際の解析方法について報告する.
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【技術論文】

時分割方式による全周囲から観測可能なホログラフィック3次元ディスプレイ
山東悠介・茨田大輔・谷田貝豊彦
  
 近年,3-Dに関する技術が非常に注目を集めており,中でもホログラフィック3-Dディスプレイは,両眼視差に加え,輻輳,調節にも矛盾のない,次世代の3-D表示技術として期待されている.しかしながら,実用化するにあたり,その視域の狭さが課題の一つとして挙げられている.本論文では,この課題を解決するため,高速応答可能な空間光変調器をホログラムの表示デバイスとして用い,また,それに同期制御された回転ミラーを併用することで,水平方向の視域を360°に拡大する手法を提案する.ミラーの回転数を人の目の応答速度以上にすることで残像効果を生み出し,等価的に視域を360°に拡大させることができる.また,十分な運動視差も実現することができるため,従来の2眼式3-Dディスプレイにはない,高い臨場感を出すことができる.立体像に至近距離(~5 cm程度)にまで近づいても,問題なく立体視できるのも,本手法の大きな特徴である.本提案内容に関し,実際に光学系を構築し,仮想的な地球儀の北半球を立体再生したので報告する.
  詳細はこちらから<PDF917KB>
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亜鉛-空気二次電池用新規正極触媒の創製

西村 崇・斉藤 誠・中出卓男

  
 金属-空気二次電池は,正極活物質として空気中の酸素を,負極活物質としてリチウムや亜鉛などの金属を用いる充電池である.この電池は,内部に正極活物質を導入する必要がないため,エネルギー密度を高くすることができ,次世代の大容量電池として注目されている.しかし,その実用化には,多くの技術的課題があり,特に,高活性かつ高耐久性,低コストな正極触媒の探索が重要課題となっている.我々は,貴金属触媒のナノ粒子化や高分散化に注目し,その低コスト化および触媒の高性能化を検討している.本報告では,当所で開発した電解処理法を正極触媒作製に適用し,高活性かつサイクル特性に優れた触媒の創生を試みたので報告する.
  詳細はこちらから<PDF:873KB>
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金属配線が導入されたITO膜を利用したP3HT:PC61BM型太陽電池の大面積化

田中 剛・米川 穣・森 隆志・佐藤和郎・村上修一・櫻井芳昭

  
 軽量かつフレキシブルな太陽電池として展開できる有機系太陽電池は,実用化に向け,研究開発が盛んに行われている.しかし,電池の大面積化が困難なために,普及されるほどの実用化には至っていない.そこで,本研究では,有機系太陽電池の中でも研究例の多い電池である,ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)とフェニルC61酪酸メチルエステル(PC61BM)を光電変換層に,さらに酸化インジウムスズ(ITO)を陽極に用いた電池をモデルに,大面積化技術の開発を目指した.有効面積が0.04および9 cm2の電池を作製し,性能を評価したところ,有効面積が0.04 cm2の電池の性能(変換効率:3.0%)に比べて,9 cm2の電池の性能(変換効率:0.28%)は,大幅に低下した.この性能低下は,陽極のITOの抵抗が大きいことに起因する.有効面積が9 cm2の電池の性能を向上させるためには,陽極の抵抗を下げることが必要であり,金属配線をITO膜上に導入した.その結果,変換効率1.8%の性能をもつ電池を作製することができ,金属配線がない電池と比べ,大幅に性能を向上させることに成功した.
  詳細はこちらから<PDF:471KB>
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レーザ積層造形法を用いて作製したAC4CHアルミニウム合金の組織と機械的性質

木村貴広・中本貴之

  
 金属粉末レーザ積層造形法は金属系3Dプリンティングの一種であり,金属粉末を原料として一層ずつレーザ照射により溶融・積層しながら三次元の金属構造体を造形する加工法である.中でもアルミニウムを用いた積層造形は,その低比重・高熱伝導性を活かし,軽量化部材や熱交換器のような熱制御部品への応用が期待されている.本研究では,高い強度と延性の両立が期待されるJIS-AC4CHアルミニウム合金(Al-7%Si-0.3%Mg)粉末を用いて,造形体を高密度化するためのレーザ照射条件を探索した.最適条件にて作製した造形体は相対密度99.8%の高密度体であった.得られた造形体は0.5 μm以下の極めて微細なデンドライトセル状組織を呈し,造形体の機械的性質は同組成の鋳造材に比べて大幅に高い値(引張強さ400 MPa,0.2%耐力200 MPa,破断伸び12~17%)を示した.熱処理(焼鈍)による機械的性質の変化は鋳造等の溶製材と異なり,焼焼鈍温度の上昇に伴って強度は低下するものの,その伸びは大幅に向上することを明らかにした.
  詳細はこちらから<PDF:1120KB>
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全固体リチウム電池に用いる硫化物系固体電解質粉末の粒子制御

園村浩介・長谷川泰則・中橋明子

  
 全固体リチウムイオン電池に用いる75Li2S·25P2S5(mol%) ガラスの,湿式ミリングについて,  ZrO2ボールサイズが得られるガラス粉末の粒子径に及ぼす影響について調査した. その結果,直径0.3, 1, 2 mmのボールを用いた湿式ミリング後の粉末は,それぞれ,粒子径が10 µm程度の球形状粉,粒子径が1~5 µm程度の球形状粉,1~10 µm程度の球形状粉と数十µmから100 µm程度の角状粉であった.直径1 mmのボールを用いた場合,最も微細かつ均一な粒子径の粉末が得られた.次にこれらの粉末を用いてペレットを作製し,イオン伝導率を調査した.その結果,それぞれのイオン伝導率は,4.9×10-4, 5.3×10-4, 2.0×10-4, 5.0×10-4 S·cm-1であった.直径1 mmのボールを用いた場合のみ値が低いことになる.したがって, 電池に使用する粉末は, 直径1 mmでなはく直径2 mmのボールを用いて湿式ミリングをする必要があるとの結論を得た.
  詳細はこちらから<PDF:1530KB>
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選択的レーザ溶融間接法によるセラミックス3D造形に関する基礎的検討

陶山 剛・尾﨑友厚 

  
 選択的レーザ溶融法(SLM法)はCADモデルから複雑な3次元形状を迅速に造形可能なことから,金型や機械部品の試作・開発や医療分野などの小ロット生産分野で注目されている.この方法では,薄く敷き詰めたプラスチックや金属等の粉末にレーザを照射して溶融・焼結し,順次積層することで3次元の造形物を得る.粉末を敷き詰めるプロセスでは均一な粉体層の形成が造形の可否には重要となるため,SLM用新規材料開発の際は,高い流動性を備えた粉体を設計する必要がある.そこで本研究では,SLM用粉体の流動性制御に関する基礎的な知見を得ることを目的として,原料粉体の流動性をCarrの流動性指数に基づく特性を測定することで,総合的に評価した.
  詳細はこちらから<PDF:508KB>
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金属製インプラントの低弾性率化を目指した
チタン系粉末のレーザ積層造形法による多孔体の作製

中本貴之・木村貴広・吉川忠作・白川信彦 

  
 人工股関節等の金属製インプラントは主にチタン合金等の緻密な溶製材から作製されているが,その弾性率が人の骨よりも過大であることは,ストレスシールディング(荷重遮断)による骨吸収につながる大きな問題である.この過大な金属の弾性率を減少させる一つの方法として,金属のポーラス化(多孔質化)が検討されている.本研究では,金属粉末レーザ積層造形法(Selective Laser Melting: SLM)の形状付与能力に着目し,ロータス型ポーラス金属のような一方向に伸長した気孔から成る異方性を有する構造体の作製を試みた.一方向に伸長した気孔形状をもつ構造体を生体材料の一つである純チタンを用いたSLMで作製した結果,相対密度60%(気孔率40%)程度の多孔体は,気孔の伸長方向への応力負荷時には人の皮質骨と比べて同程度の弾性率とやや高い強度を示すことを見出した.また,一方向に伸長した気孔内部に気孔の伸長方向とは異なる方向に様々な梁を付加して補強した構造体をTi-6Al-7Nbを用いたSLMで作製した結果,弾性率の異方性を制御できることがわかった.
  詳細はこちらから<PDF:1020KB>
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